OptiBox同梱で光アイソレートも可能

iFi audio、気鋭の“NEO”シリーズ第二弾はストリーマー!最先端の仕様を貪欲に取り込む「NEO Stream」を徹底レビュー

2022/10/05土方久明

 

英iFi audioから登場する気鋭のストリーマー「NEO Stream」


現在のオーディオシーンは、ストリーミング・サービスやストレージに保存したデータ音源をネットワークを介して高音質に再生するストリーマー(ネットワークプレーヤー/トランスポート)の存在感が高まってきている。それは、スピーカー、ヘッドホン再生を問わず広がる新しいオーディオ再生のあり方である。

その中でも大きな注目製品として登場するのが、イギリスiFi audioの「NEO Stream」である。NEOシリーズはiFi audioの据え置き型製品の中ではミドルレンジにあたり、「NEO iDSD」に続く第二弾製品となる。Wi-Fi/有線LANを用いて、ストリーミングやハイレゾ/CDリッピング音源などを再生可能で、DAコンバーターも内蔵しておりデジタル/アナログ出力の双方に対応する。


NEO Stream(右)とNEO iDSD(左)を縦置きしたところ。サイズ・デザインも統一されており、セットで使用することでスタイリッシュなオーディオシステムも構築可能


NEO Streamは、現代のネットワーク再生の最先端を貪欲に取り込んだ大変魅力的な仕様となっている。iFi audio製品の広報を担当する菅沼さんによると、エントリークラスのストリーマー「ZEN Stream」の単なる上位モデルではなく、ハードウェア、ソフトウェアともゼロから設計し、クラス最高の拡張性と音質を実現したというではないか。

ネットワークオーディオにおける音質向上をゼロベースから再検討したというNEO Stream。価格は198,000円(税込)

 

オリジナルの「メディアコンバーター」で“光アイソレート“も可能!


自宅に届けられたNEO Streamを開封、まずは基本仕様を確認した。シャーシサイズはNEO iDSD同様に、214H×151D×41Wmmと比較的コンパクトに抑えられており、縦置き/横置きに対応している。

NEO Stream(上)とNEO iDSD(下)を横置きにしたところ。高解像度ディスプレイでアルバムジャケットが表示されるのも嬉しい


また目を引くのがフロントパネルに設置された薄膜トランジスタを使用した高精細なTFT液晶(Thin Film Transistor Liquid Crystal)で、メニューや設定の確認、さらに再生中楽曲のアルバムアートも表示できる。

入出力端子はかなり豊富で、ネットワークについてはLAN用RJ-45端子に加え、なんと光SC入力を搭載する。光入力は、LANから伝わるノイズを遮断し音質を一挙に上げる可能性を持つ“光アイソレート”が実現できるものとして、コアなネットワークオーディオユーザーから注目されているトピックである。

NEO Stream(上)とNEO iDSD(下)の背面端子。

 

ネットワークにRJ-45、

 

OPTICAL(SC)、

 

M12端子

 

を搭載することが大きな特徴。またデジタル出力についてもUSB typeAのほか、

 

 

HDMIによるI2S出力も搭載する


今回のNEO Streamには、iFi謹製の光メディアコンバーター「OptiBox」と光ファイバーケーブルが付属する。

 

 

メディアコンバーターに

ルーターからの有線LANケーブルを挿入し、

光変換してNEO Streamに入力。

 

これにより、“光アイソレート”を追加パーツなしで導入できるのだ。

 

なお、昨今、

光入力を搭載する製品は「SFPポート」を搭載しており

トランシーバーが必要になる場合が多いが、

このNEO Streamは光ファイバーを直接挿入することができる。

 

さらには、テレガートナーのハブでおなじみのM12端子も搭載されている。

 

iFi audio謹製のメディアコンバーターOptiBoxが付属する。なおSFPポートではなく光ファイバーケーブルを直接挿入する

 

 

 

 


出力はアナログが4.4mmバランスとRCAアンバランスに対応。

 

またデジタル出力も充実しており、

 

USB-B、

 

S/PDIF同軸、

 

光TOS Link、

 

AES/EBU

 

に加え、

 

HDMI端子を利用したI2S接続も可能だ。

 

 

ピンアサインはPS Audio方式に対応しており、

筆者も高く評価するイレブンオーディオのR-2R DAC「SagraDAC」や「K-DAC」などのマニアックなDACや、他のI2S接続のDAコンバーターに対応できる。

 

これはオーディオマインドが刺激される。

ただし、NEO iDSDには存在したヘッドホン端子はオミットされている。

初期設定や使用後の設定変更は、

スマホ/タブレットにインストールするアプリ「Stream-iFi」、

もしくはインターネットブラウザからIPアドレスを打ち込んで管理画面を表示させることもできる。

 

高機能化が進むストリーマーでは、

設定変更時のユーザビリティ(ハードウェアUI/ソフトフェアGUI)が非常に大切である。

その意味でも優れたUIはNEO Streamの隠れた長所として評価できる。

 

 

 

PCやMacのブラウザから「ifi.local」またはIPアドレスを打ち込むことで設定画面が確認できる


再生可能ソースは、ストリーミングサービスとしてTIDALとSpotify(どちらも純正アプリから操作できるConnect機能に対応)、サーバーを利用したネットワークによるファイル再生は、DLNA/UPnPとOpenHomeにも対応。さらに、先日の大型アップデートで大きく進化を遂げたroonのエンドポイント(Roon Ready)にも対応する充実した内容に仕上がっている。

 

 

 

 

出力先設定、MQA、DSDの設定やボリューム設定(ソフトウェア/ハードウェア)など細かい設定の追い込みも可能


音楽再生については、LINNのKAZOOやfidata Music Appといった操作アプリも利用できる。

 

筆者が試したところ、

再生指示やプレイリストの登録等も含め基本的な機能はほぼ利用できた。

 

Bubble UPnPやmconnectなどの汎用アプリも利用できるそうだ。

 

さらにAirPlayや海外で人気のHQPlayerからの再生を可能とするHQ NAA(Network Audio Adapter)にも対応する。

 

 

もちろん再生可能なレゾリューションはハイスペック、

 

PCMは768kHz/32bit、

 

DSDは22.4MHz(DSD512)に対応。

 

さらにMQAフルデコード機能も備える。

 

また、NEO Streamからデジタル出力してMQA対応の外部DACと組み合わせる場合は、パススルーもしくはコアデコードのみの出力の選択も可能だ(TIDALConnect利用時)。
 

音質重視で厳選した高品位パーツを使用。「排他モード」は音質もグッド!


ここまでは機能的な面を中心に紹介したが、ミドルクラスモデルだけあり、デジタル、アナログ回路周りは同ブランド製品の中でもさらに充実している。

 

 

DACチップはバーブラウン製を搭載し、

同チップの4チャンネル分を利用する「True Native」設計を採用。

 

 

 

 

NEO Streamの内部基板。iFiお得意のバーブラウン製DACチップを搭載、GMTクロックなど同社の基幹技術は存分に搭載されている


フェムト精度クロック回路 GMT(Global Master Timing)の最新バージョンを搭載しジッターを低減、

 

 

さらにmuRata(村田製作所)の低ESRハイQ多層キャパシター、

 

5,410μFの容量を持つパナソニックの導電性高分子アルミ固体電解コンデンサも搭載している。

 

 

また、DSDフォーマットは、PCM変換やマルチビットプロセッシング処理を行わずビットパーフェクトで再生されることもポイントとなる。

 

 

 

 

コンデンサーやパーツ類も音質にこだわって選定されている


最後に特筆したいのは、NEO Streamは、ストリーミングサービスやroon、DLNA/OpenHomeなどの専用モード「Exclusive Mode(排他モード)」も利用できることだ。この排他モードはZEN Streamでも好評だった機能で、再生中ソース以外のサービスを止めることで、ノイズを抑え音質を上げることができる。なおZEN Streamは背面部のスイッチを手動で回していたのだが、NEO Streamは前面ノブから変更できるようになった。

 

 

 

 

ブラウザからの設定で、利用するサービスのアクティブ/非アクティブを個別に設置できる


この仕様から読み解けることは、NEO Streamは現在使用中のシステム構成に合わせたさまざまな使い方ができるということだ。

 

 

内蔵DACを生かしプリメインアンプとつなげたシンプルなシステムも可能だし、

良質なDACを所有しているならばトランスポートとして利用しても良い。

 

スピーカー再生はもちろんのこと、NEO iDSDと組み合わせれば良質なヘッドホンシステムも構築できる。

 

どう使うかは、ユーザーのアイデア次第というわけだ

 

 

 

 

 

 

 

スピーカー再生では、現代的な描写力を持つハイファイな音作りに感心


クオリティチェックは、スピーカー環境とデスクトップでのヘッドホン再生という2つのシチュエーションで実施した。ちなみに、いずれの環境においても「OptiBox」を組み合わせた状態で試聴している。

まずは自宅オーディオルームでのスピーカー再生。取材時の再生システムは、スピーカーにパラダイムの「Persona B」、プリアンプはファンダメンタル「LA10 versionII」にパワーアンプは同「MA10V」という構成。

 

2Fではパラダイムの「Persona B」をリファレンスに使用。ファンダメンタルのパワーアンプと組み合わせ


合計価格は500万円弱のハイスペックなシステムだ。「この中にNEO Streamを投入して大丈夫なのだろうか? もう少し安価なシステムを構築した方が良いか?」と一瞬不安に駆られた。

電源が別筐体のファンダメンタルのプリアンプ「LA10 versionII」を使用。ハイレゾ音源の送り出しにはfidataのHDD搭載モデル「HFAS1-HN80」


だがそんな心配はまったくの杞憂に終わり、音を出した瞬間から現代的な描写力を持つハイファイな音作りに感心した。まずはTIDALを使用、再生モードは一般的なモード(All-In-One)として、エド・シーラン『=』から「Bad Habits」(48kHz/24bit MQA)。一聴してイントロのエレクトリックシンセサイザーの音に透明感がある。聴感上のS/Nが高い証拠だ。続いて始まるエレクトリックバスドラムは音の滲みも最小に抑えられており聴き心地の良さもある。

嬉しいのは、再生中の楽曲のアルバムアートが本体に表示されることだ。ファイル再生は無形の存在で味気ない、と言われることもあるが、こういったさりげないギミックで音楽を聴く楽しみは否応なく高まる。

続いてroonからQobuzを利用して、アデルのアルバム『30』より「Easy on me」(44.1kHz/24bit)を再生した。ハイレゾのメリットであるボーカルのリアリティや音場の奥行きも感じ取れるし、エド・シーランで感じたクリアでヌケのよいサウンドの共通点も認識できる。

また、本モデルはBit-Perfect、GTO(Gibbs Transient Optimized)、Minimum Phase、Standardという4種類のデジタルフィルターも搭載しており、ユーザーの好みや音楽ジャンルなどに合わせて音質を可変できる。実際に試してみると、楽曲全体の音調表現や質感に違いが見られる。これは好みに合わせて選ぶのが良いだろう。
 

DAコンバーターに「NEO iDSD」を投入することで、全方位的な音質向上を確認


次にNEO Streamのトランスポートとしての能力を試すべく「NEO iDSD」を投入。質の高いNEO iDSDのDAC部を利用するのが狙いだ。この場合の接続経路はNEO Stream(USB出力)→NEO iDSD(XLRバランス出力)→プリアンプとなる。デザインが統一されているので、並べて置いてもデザインマッチングが取れているのも嬉しい。

改めてroonからアデルを聴くと、全方位的な音質向上が聴き取れた。同一メーカーなので基本的な音調は一緒だが、分解能や上下のfレンジ、ダイナミックレンジが明らかに向上する。

fidata Music appを選曲に用いてハイレゾからストリーミング音源まで幅広く試聴


さらに真打となるroonのExclusive Mode(排他モード)に変更して、再度再生した。正直に話すが、自分のリファレンスとして使用するさらに高級なストリーマーの音質にかなり近づく素晴らしい音質。S/Nが上がり空間の見通しや、楽器とボーカルのリアリティが向上している。

つまるところ、NEO Streamは単体で聴いても基本的な再生能力が高いのだが、NEO iDSDと組み合わせるとさらに音質を昇華させることができるのだ。
 

ヘッドホン再生のクオリティもチェック!


続いてデスクトップ&ヘッドホン環境にNEO Streamを投入し音質を確認した。

NEO Streamはストリーマーとしての音質/機能向上に特化しており、ヘッドホン端子を持たない。簡易的でもつけてくれればベストだったのに、と思わないではないが、ここで強力な助っ人を用意した。昨今各社がしのぎを削る超小型アイテム、スティック型DACである。

今回はiFi audioの「GO bar」を用意。NEO StreamにはフロントにUSB-C端子があり、USB出力で「GO bar」と接続することで高品位なヘッドホン再生が実現できる。ゼンハイザーの「HD 800 S」を組み合わせて試聴した。

NEO Streamにスティック型「GO bar」を組み合わせヘッドホン再生をテスト!


アデルのアルバム『30』より「Easy on me」を再生すると、GO barの性能の高さもあるだろうが、ダイナミクスの強い音で音楽を楽しめる。シームレスで密度感のある中低域によりベースラインも力強い。

さらにクオリティを追求したい場合には、NEO iDSDとの組み合わせがお薦めだ。NEO iDSDとHD 800 Sの組み合わせは、色付けがないニュートラルなサウンドで、分解能も高く、ダイナミクスの異なる楽器が同時に鳴っているときの描き分けも秀逸。NEO iDSDは以前もレビューしたことがあるが、ヘッドホンアンプとしての性能の高さも改めて確認した次第だ。

NEO iDSDを組み合わせればさらに高音質なヘッドホン再生も実現できる

 



数々のストリーマーを試してきた筆者だが、NEO Streamのサウンドはかなり強力だった。ハイスペックなレゾリューションへ対応や、豊富な入出力、品位の高く縦/横置き対応のシャーシ、さらにメディアコンバーターの付属やアルバムアートの本体表示機能などオーディオマインドをくすぐる仕様も好印象だった。

内蔵DACを使用してのアナログ出力に加え、豊富なデジタル出力を利用してトランスポートとしての能力も高い。つまり自分自身のオーディオ環境に合わせてこの2つの出力を使い分けることで、最大級の音質によるネットワーク再生を可能とするのだ。現時点で対応していないストリーミングサービスについては、後日のアップデートに期待したいところ。

スピーカーと組み合わせた環境では、デジタル/アナログの数々の音質対策によりコストを超えるサウンドクオリティを実現している。Persona Bはソース機器の粗を全て描き出すほどの能力があるなか、ここまでの音が出せれば合格だ。

本格的な試聴システムでも、デスクトップオーディオでも大いに活躍してくれるNEO Stream。組み合わせ次第でさまざまな使いこなしができることも魅力で、どのようなシステムに組み込んでも、新鮮なオーディオの楽しみをもたらしてくれるだろう

 

 

 

iFi audio、気鋭の“NEO”シリーズ第二弾はストリーマー!最先端の仕様を貪欲に取り込む「NEO Stream」を徹底レビュー (2/2) - PHILE WEB