建設業協会の会長輩出企業で労災隠し、工事の続行が不能に
谷川 博
日経クロステック/日経コンストラクション
高知県建設業協会の会長を輩出した地場大手建設会社の轟(とどろき)組(高知市)が、道路工事の現場で発生した労働災害を隠そうとして、行政から“制裁”を受けている。
安芸労働基準監督署は2022年7月19日、法人としての轟組と同社社員2人を労働安全衛生法(安衛法)違反の疑いで高知地検に書類送検。工事を発注した国土交通省四国地方整備局は、同社を9月7日から4カ月の指名停止とした。
同社の吉村文次社長は問題発覚後、事故発生時に務めていた建設業協会の会長を辞任している。地元の名門企業が受けた「労災隠し」の代償は大きかった。
国土交通省四国地方整備局は2022年9月7日に轟組への指名停止を公表した。写真はその公表資料の一部(出所:国土交通省四国地方整備局の資料を基に日経クロステックが加工)
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問題があったのは、四国地整土佐国道事務所が発注した「令和3年度南国安芸道路西野地区改良第2外工事」。25年春の開通を目指している南国安芸道路の高知龍馬空港インターチェンジ(IC)—香南のいちIC間の建設工事の一部だ。主に、高知県香南市内に架ける下井川橋(仮称)の橋台とボックスカルバートを造る。
土佐国道事務所は21年4月22日、同工事の総合評価落札方式の入札を実施。唯一参加した轟組が予定価格を5万5000円下回る金額で落札した。落札率は99.98%。土佐国道事務所は同年5月13日、轟組と2億7995万円で契約した。当初の工期は同年5月14日から12月20日まで。その後、工事内容の変更などに伴い、工期を22年3月31日まで延長した。
事故が起こったのは、21年12月4日。ボックスカルバートの工事中に、クレーンで吊り下ろしていた木製の型枠が落下し、吊り荷の下で待ち受けていた作業員を直撃した。作業員は脊髄損傷のけがを負った。吊り具に用いていた番線が破断したか、ほどけたことが原因とみられる。作業員は1次下請けの天川(高知市)の社員で、現場で職長を務めていた。
安衛法に基づく労働安全衛生規則(安衛則)では、休業4日以上の労働災害が発生した場合、労基署に遅滞なく報告するよう義務付けている。国交省の契約書に含まれる土木工事共通仕様書でも、発注者に速やかに連絡するよう規定している。
しかし、轟組は事故発生後、香南市を管轄する安芸労基署への報告も、発注者の土佐国道事務所への連絡も行わなかった。同社の幹部が行政に届け出ないよう、現場担当者らに指示したとみられる
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