日本電産の新社長は「ツーカーの子分」か、73歳の創業メンバー

近岡 裕
 

日経クロステック

率直に言えば、引責辞任ということだろう。2022年8月25日現在、日本電産社長兼最高執行責任者(COO)の関潤氏の退任報道が流れている。後任は、同社小部博志副会長とみられている。こうした報道について日本電産は、同日夕方時点で公式には「当社が発表したものではなく、また決定した事実もない」としている。

永守会長(左)と関氏(右)

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永守会長(左)と関氏(右)

2023年3月期(2022年度)第1四半期の決算発表(オンライン)で永守会長は、このままでは企業文化が継承できなくなると関氏の前で危機感をあらわにしていた。(出所:日経クロステック)

 小部氏は日本電産の創業メンバーの1人。1973年7月、現在は同社会長兼最高経営責任者(CEO)を務める永守重信氏が、京都の自宅の6畳間で仲間3人と共に4人で日本電産を創業した。当時、事務所兼作業場として使っていたプレハブ小屋の時代から同社を知り尽くす経営者の1人だ。創業時に永守会長が宣言した「中小企業ではなく、兆円企業を目指す」「精密小型モーターの分野で世界のトップになる」という目標の体現者でもある。

新社長兼COOへの就任が報じられた小部博志副会長

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新社長兼COOへの就任が報じられた小部博志副会長

日本電産の創業メンバーの1人で、同社を知り尽くした経営者。(出所:日本電産)

「辞めてしまえ」「困るのはあなただ」

 小部氏との関係について、永守会長は「ツーカーの子分」と自著『人生をひらく』(PHP)で紹介している。永守会長が言う子分とは、「親分(永守会長)からの無理難題であっても、『わかりました』と親分を信じて実行する」(同書)部下のことだ。永守会長と小部氏は極めて強い信頼関係で結ばれており、互いに疑うことはなく、互いの主張を丸のみしてから議論する。そのため、「何を言っても、何をやっても基本的にはオーケーの関係」(同書)になっているという。例えば、永守会長が「辞めてしまえ」と小部氏に暴言を吐いても、「私が辞めたら困るのはあなただ」と小部氏は言い返せるほどだ。実際、こうしたやりとりがこれまでに1万回ほどあると永守会長は語っている。

 永守会長は別の自著『成しとげる力』(サンマーク出版)にはこう記している。「何でも腹を割って話すことができる相手は、創業期から何十年も付き合ってきた部下だ。最大の理解者であり、私も彼らに絶大の信頼を置いている」「彼らはいくら罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びようとも、ずっと私に付いてきてくれた」と。

 永守会長はこうした子分の育成には「最低10年はかかる」(「人生をひらく」から)とも記している。2020年1月に日産自動車から永守会長が一本釣りしてきた関氏と日本電産で接してきた時間は、まだ2年半強。

 

関氏を何でも腹を割って話せる「子分」に永守会長が育てるには、時間が短すぎたようだ

 

 

日本電産の新社長は「ツーカーの子分」か、73歳の創業メンバー | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)