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ソフトバンクが米国で見た現実、鉄塔所有企業の強大化に警戒
パート2:先行市場の教訓
堀越 功日経クロステック
設備共用(インフラシェアリング)が一般化している海外では、
通信事業者はシェアリング事業者の鉄塔などを借りて通信インフラを広げる。割り勘効果で設備を安く展開できるという期待がある一方、シェアリング事業者が強大になり過ぎると、鉄塔を借りる値段が上がっていくという懸念の声も聞こえる。ソフトバンクはそんな懸念を示す1社だ。
NTTドコモの基地局用鉄塔の売却を契機に、日本でも本格的に設備共用(インフラシェアリング)の時代が訪れている。震源地となっているのは、ドコモから鉄塔約6000本を取得し、屋外の設備共用事業を本格化するJTOWERだ。
JTOWERは、設備の借り手となる通信事業者とも、強固な関係性を築く。2019年にNTTと資本提携したのを皮切りに、2021年にはKDDIと楽天モバイル、NTTドコモと立て続けに資本提携を結んだ。ここで気になるのが、国内携帯4社のうち、ソフトバンクだけ名前が見当たらない点だ。
もちろんコストに敏感なソフトバンクは、設備共用に前向きだ。JTOWER社長の田中敦史氏は「資本提携には至っていないだけだ。(ソフトバンクとは)ビジネスをご一緒している」と説明する。さらにソフトバンクは、KDDIと共同で両社が保有する基地局資産を相互利用する共同出資会社「5G JAPAN」も設立している。それでもソフトバンクが、他の3社と異なり、JTOWERと距離感を取っているように見えるのは、同社が過去の設備共用の経験から学んだ深謀遠慮があるからだ。
ソフトバンクの深謀遠慮
「もちろん我々にとってプラスになる場所があればお借りしたい。(JTOWERと資本提携を結んでいない理由は)どういったパートナーとベースとなるインフラを共用していく形がよいのか、戦略を検討しているからだ」─。
このように語るのは、ソフトバンクで技術全体を統括する、専務執行役員兼CTO(最高技術責任者)の佃英幸氏である(図1)。
図1 「米国のような状況にならない設備共用の仕組みをつくっていく必要がある」と語るソフトバンクの佃氏
(写真:加藤康