東急百貨店本店跡地にスノヘッタの165mビル、渋谷道玄坂で新たなホテル競争

川又 英紀

 

日経クロステック

 

高級ホテルが少なかった東京・渋谷が、数年後に激変する様相を呈してきた。注目は道玄坂2丁目エリアだ。

 渋谷が地盤の東急グループや、初進出する三菱地所、先行開業で存在感を高めるドン・キホーテ親会社が、同じ2丁目に相次いで複合施設を建てる。しかもホテルを集客の目玉に据える点が共通している。

 最大の注目はやはり、地元の東急陣営だろう。東急とL Catterton Real Estate(LCRE)、東急百貨店は2022年7月21日、3社共同で「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」を27年度の竣工を目指して推進すると発表した。

 地下4階・地上36階建ての超高層ビルで、高さは約164.8m。渋谷駅前のスクランブル交差点から続く坂道の文化村通りを上った場所に立つ。現在、東急百貨店本店が立っている場所だ。駅前よりも高い土地なので、そこに完成する超高層ビルは飛び抜けて高く見える。

渋谷区道玄坂2丁目に2027年度に誕生する予定の複合施設「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

渋谷区道玄坂2丁目に2027年度に誕生する予定の複合施設「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

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 Shibuya Upper West Projectは、存続する東急グループの文化施設「Bunkamura(ブンカムラ)」を含めた敷地面積が1万3675m2、延べ面積は11万7000m2。商業施設に加え、高級ホテルと賃貸レジデンスを備える。

 

 

デザインアーキテクトには、ノルウェーの建築設計事務所「Snøhetta(スノヘッタ)を起用。

 

 

エグゼクティブアーキテクトは日建設計・東急設計コンサルタントJVが担当する。

 

 

Shibuya Upper West Projectは店舗、ホテル、住宅を備える(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

Shibuya Upper West Projectは店舗、ホテル、住宅を備える(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

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 ホテルは香港を拠点とし、アジアを中心に展開する「Swire Hotels(スワイヤー・ホテルズ)」の高級ブランド「The House Collective(ザ・ハウス・コレクティブ)」が日本に初進出する。

 

 

 建物の特徴は、低層階の中心で天井から光が降り注ぐアトリウム「The Hive(ザ・ハイブ)」を設けることだ。低層部の屋上には、緑を配した空間「The Sanctuary(ザ・サンクチュアリ)」ができる。

低層部の屋上に設ける庭園「The Sanctuary(ザ・サンクチュアリ)」のイメージ(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

低層部の屋上に設ける庭園「The Sanctuary(ザ・サンクチュアリ)」のイメージ(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

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 隣接するBunkamuraは、活動を継続する。

 

ただし、劇場のオーチャードホール以外は、

23年4月初旬から長期休館に入る。

1989年9月に開館したBunkamuraは2027年度まで大規模改修工事を進める計画で、

Shibuya Upper West Projectの開業と同時に営業を再開する。

東急グループの文化施設「Bunkamura(ブンカムラ)」は大規模リニューアルのため、27年度まで長期休館する(写真:日経クロステック)

東急グループの文化施設「Bunkamura(ブンカムラ)」は大規模リニューアルのため、27年度まで長期休館する(写真:日経クロステック)

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Bunkamuraが改修工事中は、コンテンツを東急系の施設などで引き継ぐ(資料:東急)

Bunkamuraが改修工事中は、コンテンツを東急系の施設などで引き継ぐ(資料:東急)

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 Bunkamuraのシアターコクーンで実施していた演劇などは、東京・新宿で23年4月に開業する「東急歌舞伎町タワー」の中にできる「THEATER MILANO-Za」などで当面引き継ぐ。東急グループの施設を有効利用して、コンテンツを絶やさないようにする。

「東急歌舞伎町タワー」が2023年4月開業、ホテルやZepp新宿などエンタメ満載

 

 東急と東急レクリエーションは2022年4月26日、東京・新宿の歌舞伎町で開発している「東急歌舞伎町タワー」を23年4月に開業すると発表した。地下5階・地上48階建てで、高さが約225mの複合施設。

 

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2022/05/12

 計画地は東急百貨店本店が立つ場所だ。東急百貨店本店は23年1月31日に営業を終了し、同年4月にも解体工事が始まる。1967年11月に竣工し、渋谷のシンボルだった東急百貨店本店は姿を消す。

渋谷の文化村通りを上った場所に立つ東急百貨店本店。23年1月末で営業を終了し、解体される(写真:日経クロステック)

渋谷の文化村通りを上った場所に立つ東急百貨店本店。23年1月末で営業を終了し、解体される(写真:日経クロステック)

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計画地は東急百貨店本店の跡地だ(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

計画地は東急百貨店本店の跡地だ(資料:東急、L Catterton Real Estate、東急百貨店)

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東急グループとLVMH関連会社が渋谷区道玄坂2丁目で再開発、東急百貨店本店は解体

 

敷地における開発計画を3社で推進することで合意した。東急百貨店本店は23年春以降に、建物の...

2021/05/19

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 共同事業者のLCREは、コンシューマー業界に特化した投資会社であるL Cattertonの一員で、不動産開発の投資会社だ。

 

ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドを傘下に持つLVMHとAgacheが共同で設立した。日本では東京・銀座の商業施設「GINZASIX(ギンザシックス)」の開発に参画した実績がある

 

 

 

東急百貨店本店跡地にスノヘッタの165mビル、渋谷道玄坂で新たなホテル競争 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

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三菱地所はTRUNK HOTELを誘致

 一方、渋谷駅周辺の大規模再開発に初めて参画する三菱地所は、「道玄坂2丁目南地区第1種市街地再開発事業」におけるオフィス棟とホテル棟の建設のうち、後者にはテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)が運営する「TRUNK(HOTEL)DOGENZAKA(仮称)」を誘致することを2022年5月に明らかにした。

 ホテルの開業は、27年3月ごろを予定している。東急が招へいしたThe House Collectiveより少し早くオープンする見通しである。

「TRUNK(HOTEL)DOGENZAKA(仮称)」のルーフトッププールのイメージ。渋谷では最大級の屋外プールだ(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

「TRUNK(HOTEL)DOGENZAKA(仮称)」のルーフトッププールのイメージ。渋谷では最大級の屋外プールだ(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

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 このプロジェクトでは多様な来街者を呼び込むため、敷地の西側にホテル棟を建てることにした。同じ渋谷区の神宮前でT&Gが展開しているTRUNK(HOTEL)の実績を三菱地所が評価し、出店を呼びかけた格好だ。

三菱地所が再開発組合に参加する「道玄坂2丁目南地区第1種市街地再開発事業」で建設予定のビルのイメージ(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

三菱地所が再開発組合に参加する「道玄坂2丁目南地区第1種市街地再開発事業」で建設予定のビルのイメージ(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

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道玄坂2丁目南地区第1種市街地再開発事業は、オフィス棟とホテル棟で構成する。2棟の間には約850m<sup>2</sup>の広場を設ける(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

道玄坂2丁目南地区第1種市街地再開発事業は、オフィス棟とホテル棟で構成する。2棟の間には約850m2の広場を設ける(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

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 敷地面積は約6720m2、延べ面積は約8万7100m2。地下3階・地上30階建てで高さが約155mのオフィス棟と、地下2階・地上11階建てで約60mのホテル棟で構成する。構造は鉄骨造(地上)、鉄骨鉄筋コンクリート造(地下)。総事業費は約767億円を予定している。

計画地は渋谷駅に直結し、道玄坂に面する(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

計画地は渋谷駅に直結し、道玄坂に面する(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

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 設計は三菱地所設計・山下設計JV、デザイン総合監修は北川原温建築都市研究所が手掛ける。施工は未定だ。パートナーを海外に求めた東急とは対照的に、三菱地所はT&Gを含め日本勢主体で開発を進める。

 22年度中にも計画地に立つ既存の建物の解体工事を始め、23年度に新築工事に着手。竣工は26年度を予定している。

 TRUNK(HOTEL)DOGENZAKAは、ホテル棟を丸ごと使う。延べ面積は約1万3000m2、客室数は120~130室を予定し、客室単価は5万円以上を想定する。

 渋谷では最大級のルーフトッププールを備える他、ルーフトップレストラン&バーやシアタールーム、スパ、レストランなどをそろえる。若者の街である渋谷で、大人の客層を狙う。

スパのイメージ(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ)

スパのイメージ(資料:三菱地所、テイクアンドギヴ・ニーズ

 

 

東急百貨店本店跡地にスノヘッタの165mビル、渋谷道玄坂で新たなホテル競争(2ページ目) | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

 

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文化村通りの再開発で先行するドンキ

 東急や三菱地所より3~4年早い23年9月に「渋谷区道玄坂2丁目開発計画」の複合施設を開業する予定のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、オープンまで約1年と迫っているが公開されていない情報が多い。22年3月に渋谷では初となる外資系ライフスタイルホテルを誘致すると発表したが、ブランドは明らかにしていない。文化村通りで存在感を放つドン・キホーテを傘下に置くPPIHの動向が注目される。

「渋谷区道玄坂2丁目開発計画」の建物イメージ(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)

「渋谷区道玄坂2丁目開発計画」の建物イメージ(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)

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 計画地は文化村通り沿いで、東急百貨店本店は目の前だ。非常に複雑な敷地形状の中に、建築基準法上で地下2階・地上27階建て(建物内での階数表記は地下1階・地上28階建て)で、高さが114.95mの超高層ビルを建てる。地上1~3階が店舗、4~10階がオフィス、11~28階がホテルになる予定である。

建物の断面図。店舗、オフィス、ホテルが入る(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)

建物の断面図。店舗、オフィス、ホテルが入る(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)

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 事業者はPPIHの他、カブトビル(日下部洋子、甲有理)、サン・エトワール(星野浩一)。敷地面積は5897.39m2、延べ面積は4万1855.37m2。構造は鉄骨造、一部鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造。設計は東急設計コンサルタント、施工は熊谷組が手掛ける。

計画地は非常に複雑な形状をしている(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)

計画地は非常に複雑な形状をしている(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)

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東急百貨店本店側から見た建物のイメージ(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)

東急百貨店本店側から見た建物のイメージ(資料:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス