新疆の人権「懸念と疑念を中国に提起」 国連弁務官、訪問終える

毎日新聞

新疆ウイグル自治区などへの訪問を終え、記者会見する国連のバチェレ人権高等弁務官=2022年5月28日、AP(オンライン動画の画面から)

 

 

 

 国連のバチェレ人権高等弁務官は28日夜、中国広東省と新疆ウイグル自治区の訪問(6日間)を終え、オンラインで記者会見を開いた。バチェレ氏は「新疆への訪問では、対テロ政策として行われている手法がウイグルやその他の少数民族の人権に与える影響について懸念と疑念を中国側に提起した」と説明。「特に対テロ政策などに関する見直しを行い、国際的な人権基準に合わせるように促した」と強調した。

 

 

  【写真】「再教育施設」収容の実態 流出した内部資料など 

 

 

 ◇刑務所の視察実施、明らかに

  中国国外に住むウイグル人から「(新疆に残る)家族と連絡が取れない」との訴えが相次いでいる問題についても「中国政府の当局者に対して、こうした家族に関する情報を最優先で提供するように訴えた」とも述べた。  訪問期間中には中国当局による少数民族への取り締まりの実態を示す内部資料「新疆公安ファイル」を毎日新聞など世界の14のメディアが報道。こうした実態をバチェレ氏が透明性ある形で確認できるかにも注目が集まり、米英仏各国などから「制限なしに実態を確認できるのか」との疑問の声も上がっていた。  こうした疑問に関してバチェレ氏は、新型コロナウイルス対策としてバブル方式を採用していたため、希望した面会全てが実現したわけではないが、国連側で調整した面会も行われたことを明かした。また、刑務所の視察も行ったという。  バチェレ氏は近く、自治区の人権状況を巡る報告書を公表する予定だ。今回の新疆訪問は「調査との位置づけではない」としながらも、今回の訪問で受けた印象などが報告書に反映される可能性も示唆した。  記者会見に先立ち、英仏などは中国に対し「制限なしの視察」を求めていた。英国のトラス外相は24日に発表した声明で、報道に触れ「バチェレ氏は制限なしのアクセスを認められるべきだ。そうでなければ中国側が何か隠そうとしているということになる」と指摘。フランスのコロナ外相も25日、電話協議した中国の王毅国務委員兼外相に対して「バチェレ氏が妨げられずに拘束施設など自ら選んだ場所を訪問し、人々と交流できる」よう要求した。  国際社会からこうした懸念の声が上がるのは、中国側が一貫して自治区での人権問題の存在を否定し、国際社会による非難を「政治利用だ」と反発しているためだ。バチェレ氏が25日にオンラインで中国の習近平国家主席と会談した際、習氏は「人権問題で他国に対して教師面をすべきではなく、それを口実に内政干渉すべきでもない」と述べ、改めて自治区を巡る人権問題に対する批判に強く反発した。

 

【北京・米村耕一

 

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