円安で日本の「ビッグマック指数」が
タイや中韓よりも下に
外国為替市場で円の「独歩安」が止まらない。日本経済の先行きを曇らせる歴史的な超円安。その恩恵を今は受けている輸出業界にも不安感が広がっている。 5月9日の東京外国為替市場。円相場は一時1ドル=131円台を記録し、約20年ぶりの安値水準を更新した。3月初旬の1ドル=114円台から、たった2カ月で約17円下落したことになる。 歴史的な円安は、欧米主要国が金融の引き締めを急ぐ一方、日銀が緩和的な金融政策を継続し、資源価格の高騰で貿易赤字が拡大している状況も影響している。こうした状況に経団連の十倉雅和会長は5月9日の会見で「日本の経済が弱いということから来ている面が非常に多い」と懸念を示した。 鈴木俊一財務相も10日、閣議後の記者会見で「最近のような急速な円安の進行は望ましくない」と発言するなど、たびたび為替市場をけん制している。 ◇米国より4割安 ビッグマック指数」と呼ばれる経済指標を英国の経済誌『エコノミスト』が1986年に考案し、毎年2回公表している。ビッグマックとは、ハンバーガー大手マクドナルドの主力商品の一つだ。世界100カ国以上に展開する店舗で原則、同サイズ、同品質で販売され、肉や野菜といった原材料費はほぼ共通している。 そのため、自由な市場経済では国が異なったとしても同じモノは同じ値段で買えるとする「一物一価の法則」を前提に、「米国のビッグマック価格」と「その他の国のビッグマック価格」を比較することで、その国の「通貨の購買力格差」を把握することができる。 この指数が、基準となる米国のビッグマック指数に比べて大きければ、その国の通貨は、ドルに対して指数分だけ「過大評価」されていることになり、逆に小さければ、ドルに対して指数分だけ「過小評価」されていることになる。 ビッグマック指数の「2022年1月版」の指数を見ていくと、例えば、スイスの同指数は「プラス20.2%」と、基準の米国を大幅に上回る。つまり、通貨スイス・フランはドルより大幅に過大評価されている
円安で日本の「ビッグマック指数」がタイや中韓よりも下に
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実際、スイスのビッグマック価格は「1月版」の時点で、6.98ドル(804円)と、基準となる米国の同価格5.81ドル(669円)に比べてかなり高額だ。 一方、日本はどうか。ビッグマック指数は「マイナス41.7%」と大きく下振れていた。確かに、日本のビッグマック価格は390円(3.39ドル)に過ぎす、米国の同価格よりかなり安かった。円はドルより約4割も過小評価されていたことになる。 ◇取り残される日本 これは、カナダ、欧州連合(EU)、英国、豪州といった先進国に後れを取った。それどころか、ブラジル、タイ、中国といった新興国よりも低水準に沈んだ。比較対象の57カ国中、日本は33位と下位に位置し、先進国中では「最下位クラス」に甘んじた。 さて、足元の5月時点ではどうか。米国のビッグマック価格は5.34ドル。22年5月16日の為替レートは1ドル=129円なので日本円に換算すれば689円だ。日本は1月の3.39ドルから比べて、さらに3.02ドルまで安くなっている。 日米のビッグマック価格の年次推移をドル換算で比較すると、11年に米国が4.07ドルに対して日本は4.08ドルだった。しかし、翌12年には米国が4.33ドルに急上昇した一方、日本は4.09ドルと微増だった。13年には3.2ドルに下がり、それ以降は横ばいが続く様子が分かる。 ちょうど第2次安倍晋三政権のアベノミクスが始まった時期と重なるが、ビッグマック一つをとっても20年間、国際的に取り残されつつある状況が浮かび上がる。 *************** 5月23日発売の『週刊エコノミスト5月31日号』の特集は「超円安サバイバル」です。急速な歴史的円安の到来で、日本経済の先行きは五里霧中です。これをどう乗り切るべきか、“超円安”の影響を検証するとともに、マーケットの行方を占います
円安で日本の「ビッグマック指数」がタイや中韓よりも下に(サンデー毎日×週刊エコノミストOnline) - Yahoo!ニュース