核保有とシェルター確保を急げ ウクライナ侵攻で地政学リスク顕在 普及率は米国82%、ロシア78%に対し日本はたったの0・02%

夕刊フジ

大原浩(大原総研代表取締役)

 

 

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナ侵攻をめぐり、核兵器の使用を示唆している。「核戦争」のリスクが高まるなか、隣国である日本も決して人ごとではない。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、官民挙げた核への備えが急務だと警鐘を鳴らす。 【表でみる】ロシア・ウクライナが失った兵器の数 ロシアによるウクライナ侵攻は、かつての「泥沼のベトナム戦争」のようになる恐れも出てきた。そこで、われわれが最も真剣に議論すべきなのは、紛争をきっかけに顕在化した地政学リスクの中で、「日本をどのように守るのか」ということではないだろうか。 日本固有の領土で、ロシアが「実効支配」している北方領土の南端である歯舞群島の貝殻島から、根室半島の納沙布岬までの距離はたったの3・7キロである。JR品川~東京間6・8キロの半分程度の距離しかないのだ。最も遠い択捉島でも144・5キロで、八丈島と本土との距離287キロよりもはるかに近い。 ウクライナを北方領土と同じように軍事力で「実効支配」するのを認めるわけにはいかないから、日本がロシアに経済制裁を加えるのは当然だともいえる。だが、日本の国防に与える影響を軽視してはならない。 米ソ間の核軍縮協定などでは射距離500キロ以下のものが戦術核兵器と定義されている。日露の平和条約締結交渉がストップした現在、ロシアが戦術核ミサイル基地を北方領土に建設する可能性を否定できなくなってきた。 ウクライナ紛争では、すでにプーチン大統領が核兵器使用の可能性に言及しているし、戦術核使用の可能性がそれなりにある。ウクライナで戦術核を使用すれば、北方領土からの戦術核利用の可能性もさらに高まる。 1962年のキューバ危機に匹敵するような問題が生じているのに、世界で唯一の被爆国かつ世界第3位の経済大国である、日本の核防衛対策は驚くほど遅れている。 日本には米軍基地が存在しているから一定の抑止力にはなるが、日米安全保障条約という「米国は日本を守るが、日本は米国のために戦わない」という片務契約がいつまで役に立つのだろうか。 ジョー・バイデン大統領は「ウクライナのために第三次世界大戦を戦わない」と明言した。日本は核共有を含む防衛(抑止力)のための核保有を早急に議論すべきだ。現状の憲法第9条でも十分可能だと考える。 核シェルターという「核攻撃への備え」については問題が大きい。参院で提出された「核シェルターの普及状況に関する質問主意書」は、NPO法人、日本核シェルター協会のデータを引用しているが、各国の核シェルター普及率は、スイスとイスラエルが100%、ノルウェー98%、米国82%、ロシア78%、英国67%である。日本はたったの0・02%で、対策をしていないに等しい。 国家機密のベールに包まれてはいるが、政府関係者や国会議員らのための設備は存在すると考えてよいであろう。 だが、民間における核シェルターの普及状況はお寒い限りだから、「核シェルター補助金」「核シェルター減税」などの形で早急に普及を図るべきだと考える。 ロシアは米国を超える6000以上の核を持つ「軍事大国」だが、国内総生産(GDP)では韓国を下回る世界11位だ。核武装をしていないどころか憲法9条という「足かせ」まではめられている世界第3位の経済大国は、軍事大国という「狼」にとって、とてつもなく魅力的な獲物だろう。日本が餌食にならないことを祈る。

 

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中

 

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