今回の、一番の大問題は、
”核で脅しが効く!”
を、証明したことです。
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第3次世界大戦」避けたいバイデン政権、ウクライナが払う「残忍な代償」
米国のバイデン大統領は、ウクライナへの追加軍事支援策を発表した21日、圧倒的な軍事力を背景に外交的な妥結を迫るというセオドア・ルーズベルト元大統領による外交の名言「大きなこん棒を携え、静かに話す」になぞらえ、こう述べた。
「我々は『ジャベリンを携え、静かに話す』。それらを大量に送り込んでいる」
ジャベリンは対戦車ミサイルで、ウクライナ軍が首都キーウ(キエフ)周辺に迫るロシア軍の戦車や補給車両への反撃に活用し、首都制圧を阻止するのに大きな効果を発揮した。
だが、米国の軍事支援は、いざという時には相手をたたきのめすことができる「大きなこん棒」とはほど遠い。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は「戦車と飛行機をください。はっきりした返事を聞けていないのは最悪のことだ」と述べ、米国が戦闘機などの攻撃的な兵器の支援を避けていることに、不満を隠さない。
バイデン氏は、ロシアがウクライナとの国境に部隊を集結させ、侵略の懸念が高まった昨年12月以降、同盟国ではないウクライナに米軍を派遣する考えは「ない」と明言。「米国とロシアが撃ち合いを始めれば世界大戦になる」とも語り、米露直接の軍事衝突を避けたい意向を強調していた。開戦後も、「第3次世界大戦は何としても避けなければならない」と繰り返す。
国際社会と連携して強力な経済制裁を科す方針を表明していたが、こん棒(軍事力)を手放した外交の結果、ロシアの非道な侵略の抑止に失敗したとの印象はぬぐえない。
米ジョンズ・ホプキンス大のエリオット・コーエン教授は米誌への寄稿で「ウクライナは米国の臆病さのために残忍な代償を払わされている」と批判した。
プーチン露大統領は侵攻直後、露軍の核戦力部隊に戦闘態勢入りを命じ、「我が国への直接攻撃は恐ろしい結果をもたらす」と威嚇した。ロシアは、通常兵器による攻撃への報復でも核使用をいとわない戦略を明らかにしており、核使用に踏み切るハードルは米国より低いとみられている
バイデン氏はロシアの核使用の可能性を最も気にかけているという。ウクライナの「防衛」を訴えても、戦争の「勝利」とは口にせず、「戦争に勝つことよりロシアを挑発しないことに関心がある」(米メディア)と指摘されている。軍事支援も、核による報復のリスクを生じさせない程度にとどめているのが実態だ。
米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は「プーチン氏の核の脅しによって、米国の方が抑止されている」とほぞをかむ。ロバート・オブライエン前国家安全保障担当大統領補佐官も「ウクライナで核兵器が使われた場合に取り得る措置を今すぐ宣言すべきだ。核の悲劇を回避するため、強力な抑止力を回復させなければならない」と訴える。
米国の抑止力は揺らいでいないか――。
日本や欧州各国はこうした疑念を抱き、安全保障の強化に関する議論を活発化させている。
米欧を威嚇
モスクワのクレムリンで、会議に出席するロシアのプーチン大統領(20日、ロイター)
「この兵器は軍の潜在力を強化し、ロシアの安全を確実に守るだろう」
ウクライナ侵攻を巡って国際社会の非難を浴びるロシアのプーチン大統領は20日、大型大陸間弾道ミサイル「サルマート」の発射実験の成功を発表し、米欧を威嚇した。
武力を信奉するプーチン氏は、ロシア軍の侵攻開始から2か月が過ぎても強気を保つ。12日の記者会見では「軍事作戦は計画通りに進んでいる」と強弁した。
だが実際には「誤算の連鎖」が起こり、プーチン氏が描いた「虚構」にはほころびが目立つ。
圧倒的な戦力を背景に数日での達成を目指した首都キーウ(キエフ)掌握は、予想を上回るウクライナ軍の抗戦に阻まれ断念した。ロシア語を母語とする住民が多く、ロシアへの親近感が根付いていると疑わなかったウクライナ東部ドンバス地方では、住民の激しい抵抗に遭っている。
歴史観
プーチン氏はロシア人とウクライナ人をスラブ民族の「兄弟」と呼び、歴史や文化の一体性を強調してきた。「ロシアの南西部(ウクライナの一部)の住民は昔から自分たちを『ロシア人』と呼んできた」などと、帝政ロシアの版図回復への野心さえあからさまに示した。そしてドンバスの「同胞」を「ジェノサイド(集団殺害)」から救うという物語を描いて侵攻を始めた
プーチン氏の歴史観に基づく独善的な理屈は、21世紀の国際秩序の中で通用するものではない。それでも国内では侵攻後、戦時の一体感が強まりプーチン氏の支持率が上がった。
独立系世論調査機関レバダ・センターが3月末に公表した調査で、プーチン氏の支持率は83%と侵攻前の2月より12ポイント高かった。
背景には徹底した情報統制がある。
国営テレビは連日、戦果を報じ、キーウ近郊ブチャなどで民間人を虐殺した戦争犯罪の疑惑はウクライナ軍の仕業と決めつけた。
モスクワの自営業オリガさん(59)は「ドンバス住民を攻撃してきた『ナチス』は根絶しなければならない」と、政権の主張に共鳴する。
政権の意に沿わない報道や論調は排除され、そうした情報を発信すれば「虚偽の拡散」として最長15年の禁錮刑を受ける。
「平和が重要」
締め付けを強めても、独善的なプーチン氏への反発の広がりは隠せない。
「全ロシア将校会議」のレオニード・イワショフ会長は侵攻前の1月、軍事行動に反対を表明しプーチン氏に辞任を求める書簡を発表した。新興財閥(オリガルヒ)のオレグ・デリパスカ氏は2月下旬、「平和が重要」とSNSで表明し、政権の方針に異議を唱えた。
鎮圧されたものの各地で反戦デモが起き、人権団体の集計では累計で1万5000人以上が拘束された。
プーチン政権は、侵攻を正当化するプロパガンダと強権を組み合わせ国内の異論を封殺する。閉塞(へいそく)感の中で、食料品や生活用品などは値上がりし、米欧などの経済制裁のボディーブローのような痛みを人々は感じ始めている。
制裁はロシアで、テレビ(プロパガンダ)と冷蔵庫(暮らし)の戦いを引き起こしたといわれる。侵攻に反対するモスクワの大学教員は「今はテレビが強い。でも戦争が長引けば冷蔵庫が勝つ」と話し、人々の不満が政権の暴走に歯止めをかけると期待する。
ウクライナ「欧州人」57%…世論調査 昨年8月から倍増
ウクライナの世論調査会社「レイティング」の4月上旬の調査で、「ロシア人とウクライナ人は一体」と考える人の割合は8%にとどまり、昨年8月の41%と比べると激減した。自身を「欧州人」と考える割合は57%で、昨年8月の27%から2倍以上に増えた
軍事侵攻するロシアについて異質との見方が強まる一方、ポーランドをはじめとする欧州への親近感を抱く人々が急速に増えていることがうかがえる。
もともとウクライナでは、ロシアとの関係を重視する東部と、欧州との関係強化を望む西部で住民意識は分かれるといわれてきた。
だがロシアが2014年に南部クリミアを併合した後、力で支配しようとするロシアへの反発が東部でも強まり地域差は薄れた。
さらに今回の侵攻を通じて、強権体制のロシアへの拒否感が決定的になった
「第3次世界大戦」避けたいバイデン政権、ウクライナが払う「残忍な代償」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース