国連改革に強い思い入れ、首相「全力を挙げる」…冷淡な声も「姿勢のアピールだけ」

 

 ロシアによるウクライナ侵攻を巡る国連安全保障理事会の機能不全を受け、岸田首相が国連改革に意欲を示している。首相は外相時代に改革に携わった経験を生かし、日本が主導する取り組みを発信したい考えだ。ただ、安保理の拡大や常任理事国の拒否権制限などは実現に向けたハードルが高い。

 

 

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 3月13日の自民党大会で、首相は「常任理事国であるロシアの暴挙は、新たな国際秩序の枠組みの必要性を示している」と指摘した。そのうえで、「我が国は長年、国連改革を訴えてきた。岸田政権のもと、その実現に全力を挙げる」と訴えた。

 安保理では、対露非難決議案がロシアの拒否権行使で否決された。これを受けて、米国などが全加盟国の参加による緊急特別総会の開催を呼びかけ、賛成多数で非難決議は採択された。

 国連改革を巡って、日本は1994年に常任理事国入りへの意欲を表明し、ともに常任理事国入りを目指すドイツ、ブラジル、インドと2004年に「G4」を結成した。05年には、G4として常任・非常任理事国の拡大などを掲げた決議案を提出し、採決を目指した。首相は外相時代の16年に外務省内に戦略本部を設置して態勢強化を図っており、「改革への思い入れは強い」(首相周辺)という。

 G4案の実現には国連憲章の改正が必要で、道のりは険しい。改正には、加盟国の3分の2(129か国)以上が賛成し、さらに全常任理事国を含む3分の2以上の国が批准することが条件で、常任理事国が1か国でも反対すれば改正はできない。

 このため、政府内では、国連憲章の改正を必要としない改革のあり方についても検討を進めている。念頭にあるのは、常任理事国のフランスが15年に提起した「大量虐殺などが行われている場合は、5常任理事国が自主的に拒否権行使を抑制すべきだ」という案だ。日本を含む105か国・地域が支持を表明した。首相は3月14日の参院予算委員会でこの案に触れ、「フランスをはじめ改革に前向きな国と協力し、改革の努力を続けたい」と強調した。ただ、フランス以外の常任理事国は現在も事実上、反対しており、日本政府が説得できる見通しは立っていない

 

 

 

自民党内からは、国連改革が一筋縄では進まない経緯を踏まえ、「実現できないことは織り込み済みで、改革姿勢をアピールしているだけではないか」(中堅)と冷ややかな声も出ている。

 ◆国連安全保障理事会=国連憲章が定める「国際の平和及び安全の維持」を担う機関。米国、ロシア、英国、フランス、中国の5常任理事国と、任期2年の非常任理事国10か国の計15か国で構成される。安保理の決定は9か国以上の賛成が必要で、5常任理事国のうち1か国でも反対すれば否決される。日本はこれまで非常任理事国を11回務め、ブラジルと並んで最多。今年6月に予定される非常任理事国の選挙にも日本は立候補を表明している。

05年は採決断念

 国連改革の機運が近年で最も高まったのは、国連創設60周年の2005年だった。日本を含む「G4」は、〈1〉常任理事国を5から11に拡大〈2〉非常任理事国を10から14に拡大〈3〉新たな常任理事国は15年間、拒否権を行使しない――とする決議案をまとめ、各国への働きかけを強めた。

 しかし、アフリカ連合(AU)との決議案の一本化が失敗し、採決を断念した。中国や韓国だけでなく、安保理の大幅拡大を嫌う米国もG4案に反対した。

 創設70周年だった15年には、G4は従来案を微修正し、非常任理事国を「14」から「14~15」とした。アフリカ地域に対する配分を「1」から「1~2」に増やし、AUに配慮した。ただ、採決には至っておらず、現在も実質的な交渉は行き詰まっている

 

 

 

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