「負担額1円」で買ったiPhone 13 mini、auからUQに乗り換えられるか確かめた

高槻 芳

 

日経クロステック/日経コンピューター

 

 

 

「負担額1円」で買ったiPhone 13 mini、auからUQに乗り換えられるか確かめた | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

 

 

 

 

「お一人様1台限りです」「他社からの乗り換えまたは○歳以下の方限定です」。

 2022年3月6日の日曜日。東京都内にある家電量販店のスマートフォン売り場で、店員がひときわ声高にアピールしていたのは、NTTドコモやKDDI(au)、ソフトバンクといった大手携帯電話事業者のスマホの販売条件だった。機種は米Apple(アップル)が2021年9月に発売した「iPhone 13 mini」や2020年10月発売の「iPhone 12」だ。

 販売価格をApple Storeで確認すると、どちらの機種も8万6800円(税込み、以下同)からとなっている。だが量販店や携帯ショップでは今、いくつかの条件を満たせばそれぞれ「お客様負担額1円」などで手に入る。加えてiPhone 12では、契約者が30歳以下や22歳以下など年齢制限を設けて「一括1円」で販売する売り場もあった。年度末の商戦期に向け、大手3社の端末値引き競争は激しさを増している。

携帯ショップではiPhone 13 miniだけでなくiPhone 12の値引き販売も活発だ

携帯ショップではiPhone 13 miniだけでなくiPhone 12の値引き販売も活発だ

(撮影は筆者、以下同)

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 筆者もこうした動きに乗って2022年2月、auのiPhone 13 miniを「お客様負担額1円」で購入した。当初は新型スマホが安く手に入って満足していたが、一方で月々の維持費に関する悩ましい問題も出てきた。

 

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2022/02/18

 

 筆者が契約したのはデータ通信量に応じて段階的に料金が変わる料金プランだ。各種割引を受けた上でデータ通信量を月間1GBに抑えれば月額2000円強に収まるからだ。だが筆者の月々のデータ通信量は数GB程度で1GB以内に収めるのは難しい。段階制の料金プランでは1GBを超えると割高感が出てくる。別の料金プランに切り替えようにも、現在は高速データ通信が使い放題になる高価格帯の料金プランが主流だ。

 そこで思い出したのが、筆者が売り場でiPhone 13 miniを買おうか思案していたとき店員に言われたこんな言葉だ。「とりあえずauを契約しておいて、明日以降に(KDDIのサブブランド)UQモバイルに乗り換えるのがお得ですよ」「もしNTTドコモで安売り端末を購入するなら、乗り換え先は(NTTドコモのサブブランド)ahamoがお薦めです」――。

 そのときは「うまい話には裏があるかもしれない」と思って検討しなかった。しかし携帯大手と契約して端末を安く購入し、その後すぐ維持費の安いサブブランドに乗り換えれば確かに得だろう

 

 

 

ここでふと疑問が湧く。「お客様負担額1円」でiPhone 13 miniを購入するにはMNP(番号ポータビリティー)によってauの回線を新規契約する必要があった。加えて、将来の下取りなどを前提に端末を安く購入できる「端末購入サポートプログラム」の利用も求められた。これにより回線契約にひも付く値引きと、店舗独自の値引きの両方が適用された。従ってサブブランドなどに乗り換えると、割引の条件を満たさなくなる。その場合、違約金や割引停止などの問題は起こらないのだろうか。疑問を解消するため、筆者は携帯大手3社に直接確認してみた。

 大手3社の説明を総合するとまず、新たに契約した回線をすぐ他のブランドや他社に乗り換えることは「(利用規約である)約款上は問題ない」とする。「むしろ、違約金など解約ルールを設けるのはご法度だ」という。

 携帯大手3社は長年「2年縛り」と呼ばれる独特の商習慣を続けてきた。2年間の定期契約を途中で解約すると1万円程度の違約金がかかるというもので、違約金なしで解約できるのは2年間のうち数カ月の「契約更新月」に限られていた。しかも2年ごとに契約が自動更新される仕組みだった。こうした顧客の囲い込み策によって、他社から割安な料金プランが登場しても、ユーザーは携帯電話事業者を容易には乗り換えられなかった。

 こういった状況を変えたのが2019年10月施行の改正電気通信事業法だ。契約満了前に解約した際の違約金が上限1100円へと規制された。さらにNTTドコモが2021年10月に、ソフトバンクは2022年2月にそれぞれ違約金を全廃した。auも2022年3月末までに続く予定で、大手3社の対応がそろう。

NTTドコモから乗り換えやすくなったとアピールするソフトバンクショップのポスター

NTTドコモから乗り換えやすくなったとアピールするソフトバンクショップのポスター

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 疑問はもう1つある。回線契約を条件とした端末割引の扱いだ。携帯大手3社によると、こうした割引はそもそも回線契約をした時点で端末代金に対して値引くため、回線契約を継続するか解約するかは問わないのだという。

 端末代金を分割払いにしても同じだ。例えば筆者はiPhone 13 miniを買った際、auが将来の下取り価格を残価として設定し、購入者は本体価格から残価を差し引いた額を2年間の分割払いにする「スマホトクするプログラム」を利用した。この月々の分割支払額に対して値引きが毎月適用される仕組みで、auからサブブランドや別の携帯電話事業者に乗り換えたとしても値引きは続くという。

 かつての携帯電話業界では、MNPの利用やスマホ購入を条件に、回線料金を割り引く方式が主流だった。改正電気通信事業法により「通信料金と端末代金の完全分離」が導入されたことで、そうした方式も姿を消した。

 「本音を言えば、回線契約後にすぐ他社に移転されると(割引分を割高な通信料金で回収できないので)つらい」と、ある携帯大手の関係者は話す。ユーザーがサブブランドに乗り換えてもそれは同様だ。しかしその関係者は「当社のユーザーとしてとどまってもらえれば会員サービス基盤を維持できる」と明かした。こう考えると、スマホ売り場でのサブブランドへの「誘導」も納得がいく。

 疑問が解消した筆者はサブブランドへの乗り換えを試すことにした。auの「1GBまでで月額2178円」のプランからUQモバイルのもっと割安なプランへ乗り換える。オンラインのサポートサービスで、UQモバイルの「月間3GBで月額1628円」の料金プランを選択。後日、自宅に郵送されてきたUQモバイルのSIMカードを端末に差し込んで端末の電源を入れる。さらにauからUQモバイルへの回線切り替え操作も必要になるなど少々手間がかかったが、問題なく乗り換えることができた。乗り換え後の通信速度は十分で、不便を感じていない。在宅勤務が主体の働き方のためスマホの回線を使う機会が減っているが、外出が増えればサブブランドのメリットをより多く感じられそうだ