居場所を奪われた子どもたち ウクライナ国境に殺到「家に帰りたい」

毎日新聞

ウクライナから国境を越え、歩くヤロスラバちゃん(手前右)とイエゴールさん(同左)=ポーランド・メディカで2022年3月13日午前11時15分、小出洋平撮影

 

 

 

 

 ウクライナ西部に隣接するポーランドの国境の町、メディカ。13日朝、国境検問所を歩いて越えてきたオレナ・ジンチェンコさん(30)の長女ヤロスラバちゃん(4)は、ボランティアからぬいぐるみを受け取ると久しぶりに明るい表情を見せた。

 

 

 

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 「おもちゃも教科書も学用品も何も持ってこられなかったんです」とオレナさん。ウクライナ南部クリビリフで、エンジニアの夫と小学2年生の長男イエゴールさん(8)の4人で暮らしていた。仕事はスーパーのレジ係。「住まいや子供たちの学校、幼稚園にも満足していました」  しかし2月下旬に始まったロシア軍によるウクライナ侵攻で生活は一変した。クリビリフの空港もロシア軍の爆撃を受け、約20キロ離れた自宅までごう音が響いたという。「ここでは安全を確保できない」。そう考えたオレナさんは脱出を決意。ウクライナでは現在、18~60歳の男性の出国が認められていないため、避難者の多くは女性や子供だ。家族が離れ離れになるのは苦しかったが、オレナさんらは母子だけで11日に避難を始めた。  クリビリフから西部リビウに向かう電車は避難客で大混雑し、大型の手荷物は持ち込めなかった。リュックに詰め込んだのは母子3人の1~2日分の着替えだけで精いっぱい。リビウ到着後は、知人に車で国境まで送ってもらった。今後はポーランドで暮らす親族の手助けで仮住まいに移る。  子供が教育を受ける機会を失ったのが残念でならないという。「夫の安全が心配です。子供たちも『早く家に帰りたい』と話しています。ただ元の生活に戻りたいだけなのです」。オレナさんは手で涙を拭った。  検問所前には約150メートルにわたり、援助団体などが設置した無料の屋台が並ぶ。ピザやスープといった食事が振る舞われ、医療品やおむつ、粉ミルク、離乳食、おもちゃも配布される。わずかな手荷物で避難してきた母子が次々と手に取っていた。  

 

 

検問所近くの路上では、

生後3カ月という男児がベビーカーの中で寝ていた。

ウクライナ中部から避難してきたボロニナ・バレンティナさん(32)

の五男ムイコラちゃんだ。

ボロニナさんは

9歳までの6人の子供をバスに乗せて移動し、

13日未明に国境を越えたばかり

「出入国手続きの際、子供たちが散らばらないようにするのが一番大変でした」。

疲れ切った表情だが、子供たちは配布された人形や車のおもちゃを手にしてはしゃいでいる。「通信状態が悪く、家に残る夫とはなかなか連絡が取れません。心配です。戦争は大嫌いです」

 

 

【メディカ(ポーランド南東部)で平野光芳】 

 

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