不正は当たり前」"不正車検の闇” 現役整備士たちが告白

CBCテレビ

摘発店舗の現役整備士らが告白 「不正は当たり前で感覚が・・・」

現役整備士5人(うち3人は摘発店舗で勤務経験有)

 

 

 

 

去年10月。 名古屋のCBCテレビ本社会議室に 東海地方のトヨタ系列ディーラーの 現役整備士5人が集まった。 このうち3人は2月8日に 道路運送車両法違反(不正車検)の疑いで 書類送検された「ネッツトヨタ愛知」の 「プラザ豊橋店」で勤務経験がある。 「不正車検」の実態についてカメラの前で語った。 Q.「不正を見たり聞いたりしたことある方は    手を挙げてください」(記者) 5人全員が手を挙げた。 5人はそれぞれの店舗で 「長年、不正車検が行われていた」と明かす。 「多分、真実全部暴いていこうと思ったら、  多くの会社だったり、  店舗が摘発されるんじゃないかなと思います」(整備士A) 「入社した頃から“当たり前”だったので  不正の感覚が薄くなっていた」(整備士B)  “当たり前”に行われていたという不正車検。そのワケは…

“スピード車検”「どう考えてもこなせない」

スピード車検の流れ(不正車検と無関係の整備工場)

 

 

 

「45分車検で45分の枠しかとっていない。  どう考えてもこなせるような入れ方じゃない」 (整備士C) 「45分車検」とは、トヨタ系列のディーラーが かつてウリにしていた、 最短45分の「スピード車検」のこと。 今回の不正車検問題とは全く関係のない、 自動車整備工場で「スピード車検」の 正しい流れを見せてもらった。 まず、整備士が ブレーキオイル交換にバッテリー点検など 法律で定められた 56の項目を点検・整備する。 さらに、国の「検査」を代行する形で 「みなし公務員」の検査員が「検査」を行う。 スピードメーターのチェックに 排気ガスの成分を調べる検査など チェック欄は60以上もある。 小型車1台の車検にかかった時間は 1時間ほどだった。 車検は 「ディーラー」や「整備工場」にとって 大きな収入源の1つ。 不正に手を染めた整備士たちは 多くの店舗で毎月厳しいノルマが 課せられていると話す。 特に近年、人気の“スピード車検”が 現場にとっては大きな負担となっていたのだ。 「管理職の立場としては、  ノルマの数字ありきなんで、  そのしわ寄せが僕らのところに来る」(整備士C) 「本当はしちゃいけないこととわかっていても  お客さんがとか言われちゃうとこっちも…」(整備士D

 

 

 

 

 

ヘッドライトやスピードメーター、サイドブレーキも“数値改ざん”

不正をした項目 (ヘッドライトや速度計)

現場では一体どのような不正が 行われていたのか? 「ヘッドライトの光度ですかね。  あと速度計の誤差」 (整備士D) Q速度計に不備があるとどんな危険が? (記者) 「速度が出ているのに表示が少ない場合だと  お客さんが事故とかしちゃったときに  ひどい結果になる可能性がある」(整備士D) 不正はヘッドライトや速度計だけにとどまらず、 サイドブレーキなどでも数値の改ざんが行われていたという。 「数値を計算すると  ちょっと足りなくて車検に通るように  計算して数値書いちゃったりとか」(整備士A) 「もうひどいときは  本当に記録簿の偽装なんですよ」(整備士C)

関東でも関西でも・・日本中に蔓延る“不正車検”

関東地方の現役整備士

不正に手を染める “車検”業者は、全国に。 去年6月。 関西地方に住む30代の 現役整備士が重い口を開いた。 過去に勤めていた大手ディーラーで 不正車検に関わったと証言する。 「ブレーキの制動力が弱いときに、  数値の改ざんが行われていた。  書類でシャッと書けば  書類上は問題なく通る」(関西地方の整備士) 不正車検は関東地方でも。 別の大手ディーラーに務める 30代の現役整備士。 「確実に明るみにでたら  信用はなくなるだろう」(関東地方の整備士) 繁忙期には、 車がまっすぐ走れるかどうかの検査や 排気ガスの成分チェックなどを 改ざんしていたという。   「ちゃんとやるには人数とか作業時間とか  しっかり確保されないとできない。  もともと(車検は)国交省のやること。  環境づくりが必要。  できないなら国交省がやってよと」 (関東地方の整備士)

「プラザ豊橋店」での不正車検は“氷山の一角”か

愛知県警が2月8日、 書類送検した 「ネッツトヨタ愛知」の「プラザ豊橋店」 不正発覚のきっかけは 2020年12月の国土交通省の抜き打ち監査だった。 「プラザ豊橋店」での不正車検は「氷山の一角」ではないのか? 2021年6月、国土交通省の担当者に尋ねると・・・ 「かなりミクロなローカルな問題として  ここの問題がおきていたのではないか」 「この1つの事案で  全体に不備があると評価するには早い」     (当時の国交省中部運輸局の担当者) しかし、このインタビューから3か月後・・・ 「今回の“一連”の不正を  トヨタ自動車およびトヨタ販売店で  重く受け止める」 (トヨタ自動車国内販売事業本部 佐藤康彦本部長) 全国のトヨタ系列の ディーラー16店舗(プラザ豊橋店含む)で 合わせて6600台余りの不正車検が発覚。 決して「ローカルな問題」ではありませんでした。 トヨタ自動車は謝罪したうえで 「スピード車検」にムリがあったことを認め 慢性的に不足している 整備士の処遇を改善する方針を示した

 

 

 

 

“慢性的な整備士不足”と“変わらない車検制度”

自動車整備学校の入学者数推移

2021年9月のトヨタの会見以降、 現場は本当に改善され、 不正車検はなくなったのか? 会見の翌月、 トヨタ系列ディーラーの現役整備士5人に尋ねた。 「改善しようという人たちはいる。  ただ、それが現場に浸透してるかというと  まだ全然そんなことなくて」(整備士C) トヨタも認めている通り、 不正の背景の一つに 慢性的な整備士の不足がある。 全国の自動車整備学校の1年間の入学者数は、 この15年あまりで約12000人から6000人に半減した。 「重労働のわりには給料が安いし、  夏は暑いし冬は寒いし、  危険は危険じゃないですか。  うちの会社も毎年毎年外国人の       子たちが入ってくるんですけど、  結局、全く学生が足りてない状況」(整備士C) もう一つ問題だと訴えるのは 長年変わらない車検制度そのもの。 「どんどん車も進化していくのに、  今まで通りの車検の制度は  ちょっと違うと思う」(整備士C) 車の性能が向上し、 ほとんど異常値が出ない「排気ガス」の検査など 時代に合わない検査項目も多く、 手抜きにつながるという。

“車検制度は時代遅れか”ー国土交通相は?

斉藤国土交通相の会見(2月8日午前)

大規模な不正が簡単にできてしまう 今の車検制度に問題はないのだろうか? 国土交通省に改めて見解をたずねると あくまで 「不正車検の原因は  ディーラーなどの車検業者にある」と回答した。 「不正行為の直接的な責任や原因は  違反事業者にあり、  各事業者において  個別の違反原因があると認識」  「検討会を設置し、  車検時の確認方法等の見直しも  検討を進めている」(国土交通省の回答)      斉藤鉄夫・国土交通相は2月8日、 「車検制度は必ずしも  自動車の技術進歩を  考慮できていない」とした上で  “車検制度の見直し”について  次のように述べた。 「電気自動車などの  新たな自動車に対応した  車検項目の合理化や  セルフチェック機能の活用など  技術進歩に応じた確認方法の見直しについて  検討を進める」 (斉藤国土交通相

 

 

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