(アラスカから、ベーリング海峡を、わたってきた?)
グリズリー?じゃないのですか?
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超巨大ヒグマ「OSO18」に騒然…地元住民がもっとも恐れる「ヤバすぎる事態」
体重は推定で約400kg、立ち上がって手を上げれば高さは3mの超巨大ヒグマの被害が北海道で相次いでいる。「OSO18」と呼ばれているその雄グマは、200kgの牛も真っ二つに切り裂くほどの怪力で、その被害により牧場をたたむ経営者が出るほど深刻な問題となっている。
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この巨大ヒグマを捕獲には、冬眠中の今が絶好のチャンスだ。しかし捜索の手がかりは薄く、追跡がほとんどできていない状況に、地元関係者は焦りを滲ませている。 前編:『「超巨大ヒグマ」の衝撃…ヤバすぎる「戦闘能力」に住民は恐怖で震えた』
手掛かりを残さない
オソが他のヒグマと違う点は、その大きさだけではない。自らが仕留めた獲物に対して、まったく執着を見せないのだ。 「本来、ヒグマは自分が手に入れた餌や餌場には強い執着心を持ちます。一度餌を捕まえた場所には、味を占めて何度も戻って来ます。しかし、オソは同じ餌場に戻って来ることはありません。 仕留めた獲物の食べ方にも特徴があります。オソは牛の肉や内臓をほんの少しだけ食べ、あとは残していきます。獲物を食べるためではなく、ただ弄ぶために襲っているのではと感じるほどです」(厚岸町水産農政課職員で町営牧場長を務める櫻井唯博氏) ヒグマ対策の基本は、獲物を仕留めた場所に戻って来る習性を利用し、被害があった場所の付近に箱わなを仕掛けて捕獲することだ。だが、オソの場合はこれがまったく通用しないのである。 ヒグマの特徴である、食べきれなかった獲物を土の中に埋めるなどして保存する「土まんじゅう」をした痕跡も現地では見つかっていない。 オソの対策にあたる北海道猟友会標茶支部の猟師も、オソを「猟奇的」だとし、「我々が知っているヒグマとは違う」と危機感を募らせている。 もう一つの特徴が、牛を真っ二つにするほどの怪力を持っていながら、驚くほど用心深い性格である点だ。 実は、オソは甚大な被害を及ぼしているにもかかわらず、一度も人による目撃例が報告されていない。オソとみられる個体が目撃されたのは、2019年に標茶町が仕掛けたカメラに映り込んだ一例だけである。 そもそもオスのヒグマは、若いうちに駆除されてしまう例がほとんどだ。そのため、成獣まで生き残っているという時点でどの個体でも用心深くなっている。だが、オソの場合は、さらに度を越した慎重さを持ち合わせているのだ。櫻井氏が語る。 「日中はどこかに潜んでいて決して姿を見せず、駆除のための銃器を使えなくなる夜になると人知れず行動を始めるのです。誰にも目撃されずに行動することから我々は『忍者』とも呼んでいます。 昨年の9月にオソと思われる個体の足跡が見つかって以来は何の痕跡も見つかっていません。行動範囲の広さも相まって、捜索しようとしても、どこにいるかの手掛かりすらつかめないのです
冬場に仕留めるしかない
銃器と並ぶクマ対策の要である箱わなに関しても、前述のとおり近くに立ち寄った形跡すらない。この理由について、標茶町でヒグマ対策に従事する猟師はこう推測する。 「現在は厚岸町、標茶町で合計10基の箱わなを仕掛けていますが、かかる気配はありません。これは、オソが箱わなの形状や、わながどのように作動するのかを認識しているからだと思われます。 おそらく、幼少期に母グマか兄弟が、箱わなにかかったのを間近で見ているのでしょう。こうした経験から、箱わなにかからないための知恵を身に付けたのだとしか考えられません」 個体差はあるが、多くの場合、箱わなにかかったヒグマは脱出を試みて激しく暴れる。一緒に生活していた個体が捕えられた光景は、オソにとってトラウマとなっているのだろう。この経験が、あらゆる対策が通用しない「怪物」を生み出してしまった可能性は高い。 自治体もオソによる被害を見過ごしていたわけではない。標茶町は'19年から被害があった場所に猟友会員を派遣し、捜索に乗り出していた。しかし捕獲することはできず、翌'20年にも被害を出してしまった。さらに'21年には隣接する厚岸町でも初めて被害が報告され、被害を及ぼす範囲が広がってしまう。 昨年11月には両町と北海道、クマ専門家が「OSO18捕獲対応推進本部」を立ち上げている。もはや町単位ではオソに太刀打ちできなくなったのだ。両自治体は連携し、対策を打ち出している。標茶町の農林課林政係の担当者が語る。 「昨年8月中旬には、'19年に被害のあった場所にヒグマを音と光で威嚇する装置である『モンスターウルフ』を設置しました。同様の音で威嚇する装置の設置台数も増やしています。 また、移動経路がつかめていないため、来春に向けてカメラを増設するといった対策を進めています」 厚岸町の環境林務課の担当者も「ヒグマが嫌がる電柵を放牧地に増設し、被害の出始める7月に備える」とした上でこう述べる。 「家畜の被害が出るまでどこに潜んでいるかわからない、という事態を避けるため、まだ雪のある時期に足跡の捜索に力を入れています。 猟友会員、役場の人間、国有林や道有林の所有者に道路工事の業者など、山に立ち入る多くの人に協力を仰いでいます」 例年、オソによる家畜の被害は7月から9月に集中している。次の繁殖期をむかえるまでにオソの駆除が出来なければ、さらに被害が広がることは明らかだ。 一方で、ヒグマは冬眠明けの時期である3月ごろに動きが緩慢になる傾向がある。つまり、駆除に向けた準備は、雪の残っている、今この時期に進めるべきなのだ。 しかし、仮に足跡が見つかり、居場所がわかったとしても、駆除は容易ではない。これには地元のハンターも頭を悩ませている。猟友会標茶支部長の後藤勲氏が語る。 「猟銃を使う場合、超大型のオソを一発で仕留めることはほぼ不可能でしょう。頭は硬い頭蓋骨に守られているため、確実に心臓を射抜く必要があります。もし仕留め損ねて手負いの状態にした場合、用心深さと凶暴さを増してさらに厄介な存在になることは間違いありません。 それに、今は餌となるエゾシカの数も多く、わざわざ冬眠する必要もなくなっています。私たちが対策を練っているこの瞬間も冬眠をせず、山の中を移動している可能性も高いのです」
第二、第三の怪物も
被害が長期化しているということは、さらなる危険性を秘めている。酪農学園大学教授でヒグマの生態に詳しい佐藤喜和氏が指摘する。 「繰り返し家畜を襲っているということは、それを目撃したほかのヒグマが真似をしだす可能性があります。第二、第三のオソといった模倣犯が生まれることが十分考えられるのです」 地元の関係者も、「オソ一匹をただ駆除するだけでは意味がない」と考えている。厚岸町水産農政課職員で町営牧場長を務める櫻井唯博氏が語る。 「10歳前後のオソは年ごろから言って、子孫を残している可能性が高い。オソの遺伝子を受け継いだヒグマが次々と成獣になっていることも考えられます。 オソの遺伝子を持つ個体が標茶や厚岸をはじめ道東中に散らばっている可能性を考えると、今後もまったく油断ができないのです」 現在、オソが人へ危害を加えたという事例は確認されていない。しかし厚岸町では昨年4月、山菜採りのため山林に入った60代の男性がヒグマに襲われて命を落としている。男性を襲ったクマはまだ見つかっていない以上、これがオソの仕業ではないと断定はできない。 「ここまで長期間の被害が出ていると、もはや牛だけでなく、人間の命にかかわる問題だと感じています。 オソが出始めてから、住民の間でも日没までには必ず家に帰らないといけないという認識が広がっています。一匹のヒグマのせいで、住民の生活全体が変わってしまったのです」(標茶町の牧場付近に住む住民) ヒグマが活発に動き始める4月まで時間はもう残されていない。オソと人間の追跡戦は、今後さらに激化していくに違いない。 『週刊現代』2022年1月29日・2月5日号より
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