福岡に誕生した「天神ビジネスセンター」、建物の角を削ったデザインの狙いは何?
三上 美絵
(写真:Tomoyuki Kusunose)
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福岡市の中心街である天神に、頭1つ抜きんでた大規模オフィスビルが2021年9月に誕生しました。高さが約89mの「天神ビジネスセンター」です。
このビルは、市が進める天神交差点から半径500m以内を対象とした再開発促進事業「天神ビッグバン」の規制緩和、第1号案件です。天神ビッグバンとは、国家戦略特区による「航空法高さ制限の特例承認」や福岡市独自の容積率緩和制度などの規制緩和で、老朽化した民間ビルの更新を促す試みです。
天神ビジネスセンターの外観で目を引くのは、削り取られたかのような建物の角部です。このデザインを採用した主な狙いは何でしょうか、三択です
角を削ってできたスペースに広場を設けた
(写真:Tomoyuki Kusunose)
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天神ビジネスセンターの意匠デザインは、OMA(オランダ・ロッテルダム)が担当しました。同社ニューヨーク事務所の代表である重松象平氏が中心になって手掛けました。
建物の角を削ったデザインの狙いは、実は複数あります。1つは容積率緩和のため、地上と地下に各100m2の広場を設置することでした。
天神ビジネスセンターは、天神ビッグバンの目玉として福岡市が独自に定めたインセンティブ制度を最大限に活用しています。その結果、同ビルの敷地は高さ制限が約67mから約86~約90mに、容積率が800%から1400%に緩和されました。
さらに重松氏は、角を削ったデザインの理由をこう説明します。「オフィスビルは公共の活動と切り離された存在であることが多い。天神交差点の明治通りと因幡町通りに面した角を切り崩し、そこにアトリウムを併設することで、公共性の高い低層部をつくろうと考えた」
つまり、公共性を高めることで、都市のにぎわいを内部に引き込む狙いがあったのです。
天神ビジネスセンターは、福岡市地下鉄空港線「天神駅」に直結しています。駅の改札を出て、建物の地下2階にアクセスすると、100m2の広場とテナント区画に出ます。ここには飲食ゾーン「天神イナチカ」が22年春に開業する予定です。エスカレーターを上ると、吹き抜けのエントランスアトリウムに至ります。
一方、天神ビジネスセンターを計画した福岡地所の田代剛建設部長は、「建物全体を遠くから眺めるのが難しい敷地条件だった。そこに、どれだけ象徴的な建物をつくれるかが課題だった」と話します。
角を削り取った場所の1つは、天神1丁目交差点から見える建物の北西側の「低層部」です。もう1つは歓楽街の中洲から見える建物の北東側の「高層部」。街を歩く人の視点で捉えられる象徴性をつくり出す狙いもありました。
(写真:Tomoyuki Kusunose)
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削った部分は眺望が豊かになり、オフィスビルとしての独自性も訴求できます。角を削るデザインで、複数のメリットを生み出しました。
(写真:Tomoyuki Kusunose)
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建物の角2カ所を削り公共性
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「天神ビッグバン」第1号が完成
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写真で見る「天神ビジネスセンター」
(写真:Tomoyuki Kusunose)
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(写真:福岡地所)
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