豊*社長の”脳みそ”と”心からの自己改革”を、
しないと、全日本の自動車とそのインフラは、良くなりません。
”日本一力がある” この社長がEVに積極的でなかったので、
政府も官僚も、すべて、出遅れたわけです。
この”つけ”は、今後の日本に響きます!
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猪瀬直樹が日本の自動車産業に警鐘 「テスラとではガラケーとスマホくらい違う」
ついに、山が動いた――。 12月14日、トヨタ自動車は、電気自動車(EV)の世界販売台数を2030年に350万台とする目標を発表した。これまで、ハイブリッド車や燃料電池車(FCV)などとの組み合わせが求められると主張し続けていたトヨタが、4兆円のEV投資を掲げたのは、EVへの慎重姿勢を一気に払拭(ふっしょく)したい狙いがありそうだ。
550万人の雇用を生み出すサプライチェーンをリードするトヨタが動き出したことで、政府のエネルギー政策や、菅義偉政権が宣言した「2050年カーボンニュートラル」に向けたインフラ投資の意思決定にも今後影響を与える可能性がある。 2050年までのエネルギー革命について「もはや選択の余地はない」と語るのは、作家であり元東京都知事である猪瀬直樹氏だ。8月には脱炭素社会をめぐる日本の現状と課題を論じた『カーボンニュートラル革命』(ビジネス社)を上梓し、11月には気候変動について取り組むべき政策課題の提示・提言を目的とした民間臨調「モデルチェンジ日本」を立ち上げた。 猪瀬氏は「今の日本の自動車と、テスラとではガラケーとスマホくらい違う」と話す。前編では、EV(電気自動車)を巡る日本の自動車産業の構造的課題と、エネルギー政策の展望を聞いた。
自費で「テスラ・モデル3」を購入
取材のために東京・西麻布にある猪瀬直樹事務所に足を運んだ。猪瀬氏は冒頭、世間話をしながら暖炉に薪をくべると、すぐに事務所を飛び出し、1階に停められている自車の「テスラ・モデル3」を記者に見せながら、その先進性を語った。 存在感のある赤い車体の中には、スピードメーターも燃料系もなく、代わりにタブレットと変わらない大きさ15インチのモニターが設置されている。なるほどこれまでの自動車のイメージとは大きく一線を画す。 「カメラが8個ついているんです。後方1個に前方3個、横方向に各2個。道路が新しくできたら、約100万台のテスラからデータがサーバにアップロードされ、ナビは日々アップデートされていきます。ビッグデータとして集まってくる仕組みなんです」 それから「こっちに来て」と猪瀬氏は車体前方にまわり、ボンネットを開けて見せてくれた。そこには、内燃機関がなく、小さなトランクのような空間が空いていた。 「蓄電池を下に敷いているだけなので、ここも物置として使えます。モーターがあるだけですから。乾電池とモーターで動くシンプルなプラモデルと一緒です」 国産の電気自動車のチャージャーでも充電できる別売りのアダプターも備えていて、外出先で高速充電をしたい場合にも特に不便は感じないという。3月に購入して以来、実際に運転する中で、今の日本の自動車産業に強い危機感を覚えた。 「クルマのディーラーは、家賃も払うし、販売員がいて、コーヒーも入れてくれます(笑)。そういった販売にかかわるコストを全部合わせると、クルマの価格の15%くらいかかっています。テスラの場合はAmazonのようにネット上でポチって、自分で取りに行く方式。川崎ラゾーナの駐車場の一角がテスラ用になっていて、そこまで引き取りに行きました」 猪瀬氏は立て板に水で日本の自動車産業の根本的な問題を指摘する。 「日本のハイブリッド車はガラケーで、(NTTドコモでいう)iモードをつけただけ。一方のテスラは、スマホと言っていい。全然違うものができているんだっていう認識が必要なのです」
カーボンニュートラルは「雇用問題」
この10年で欧米の自動車メーカーは一気にEVシフトを果たした。その潮流に、日本の自動車メーカーが乗り遅れてしまった背景には、国内の自動車関連サプライチェーンで生み出している550万人の雇用を維持していく思惑や苦悩もある。 猪瀬氏が「プラモデルと一緒」と表現したように、内燃機関を持たないEVはガソリン車やハイブリッド車に比べて部品の数も少なく、構造もサプライチェーンも別物といってよい。すなわち、日本の自動車産業のEV転換は、産業構造の転換による痛みを伴う改革であるがゆえに、国家戦略としての環境政策がなかった2010年代において進展せず、大きく世界の潮流から取り残される結果となった。 猪瀬氏は、この産業構造を改革した際の雇用の受け皿は、洋上風力発電の装置といった再生可能エネルギーのインフラ整備によって確保できると主張する。 「洋上風力発電では、300メートルほどの高さの機械を大量に設置することになります。いわば、東京タワー級の風車を大量に建設するということ。機械産業はそこを雇用の受け皿としてサプライチェーンを整備できるわけですね」 政府が10月に掲げた「エネルギー基本計画」では、2030年に洋上風力発電で1000万キロワットを確保する目標を盛り込んだ。これは原子力発電所10基分の発電量と等しい。 その一方で、風力や太陽光は火力や原子力と比べて天候などの要因に発電量が左右される「不安定電源」といわれている。猪瀬氏はこの課題について、送電網の整備による地域分散によって解決できると話す。 「これから大事なのは『地域分散型の発電』。不安定電源といわれる太陽光や風力発電も、地域分散していくことで平準化されるのです」 2020年に経済産業省が進めた電力システム改革により、電力大手各社の発送電分離による電力小売の自由化が進んだ。電力小売の自由化は、再生可能エネルギーによる電力小売事業者の参入を促した。環境省も「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業」を開始。再生可能エネルギー100%電力に切り替えた個人や事業者がEVを購入する際に上限80万円の補助金を申請できるようになった。 ところが、地域独占の電力会社が送電線で受け入れず、地域によっては再生可能エネルギーが余っている実態もあるという。 「送電線は公のものだという意識を持つべきです。例えるなら、送電線は高速道路で、サービスエリアが発電所。現状では、東京電力や中部電力などといった広域エリア同士をつなぐ送電線は少なく、供給網が細いのです。そうすると、道路と同じで渋滞が起きてしまいます。例えば、九州電力で太陽光発電量が余った際に、中国電力、中部電力を通って東京まで供給することができなくなってしまいます」 これについては豊田章男氏が会長を務める日本自動車工業会も、10月に公表した提言で送電網の更新などを求めた
トヨタが掲げた「年間350万台販売」の衝撃
猪瀬氏が著書『カーボンニュートラル革命』でまとめている世界のEV販売台数トップ20社においては、テスラが約50万台を売り上げ圧倒的なトップを誇り、10位以内に中国勢3社、ドイツ勢4社がひしめく。一方の日本勢は日産自動車が約6万2000台で14位、トヨタが約5万6000台で17位と大きく遅れている。 この状況に対して今回トヨタが掲げた「年間350万台」の販売目標は、単に「EVに後ろ向き」というイメージ払拭ではなく、日本の高度経済成長を支えてきた自動車産業を、世界の潮流の中で復活させるという強い決意表明が垣間見える。 テスラの時価総額は約110兆円と、トヨタの約30兆円をすでに大きく上回っている。「次のテスラ」といわれる米国のリビアン社も、上場時に11兆円の時価総額をつけた。 「私が『カーボンニュートラル革命』を執筆している間にも、海外ではどんどん新しいベンチャーが生まれてきました。早く日本のベンチャーを育てないと、海外に全て持っていかれてしまいます」と猪瀬氏は危機感を隠さない。 先日、最終回を迎えたTBS『日曜劇場 日本沈没-希望のひと-』では、地球温暖化によって起こるさまざまな災害として海水面の上昇や未知の感染症についても描かれた。香川照之氏が演じる田所博士は最後に「もっと恐れたほうがいい。人間は、この地球があるからこそ生きていられる。みんなそのことを忘れてしまっている」と警鐘を鳴らしている。その番組スポンサーには、自動車大手のSUBARUも含まれていた。 「日本の自動車ジャーナリストたちは、リチウム電池も含んだEVを作るための二酸化炭素排出量のほうが、日本のハイブリッド車を作るよりも多いと報じています。それは単にデータをどのくらいのスパンで見るかによって変わる数字にすぎないことも今や説明されているのです。だから、そういう短絡的な主張をしていると、どんどん世界の潮流から取り残されていくでしょう」 日本の自動車産業においても、ガラケーからスマホのような市場の大転換が起こる未来はそう遠くないのかもしれない。今や国内のスマホの6割以上のシェアがiPhoneで占められているように、テスラが日本市場を席巻するのか。はたまた、国内メーカーが意地を見せるのか。世界の「カーボンニュートラル革命」の潮流を前に正念場を迎えている。 (フリーライター 星裕方)
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