年収1000万円・大企業50代ヒラ社員がリストラ、月13万円のバイトになる現実――2021年ベスト10
会社から早期退職を迫られ、現在は夜勤の施設警備員として働く林さん。退職金のほとんどは、老後資金として貯金している
2021年(1月~11月)、日刊SPA!で反響の大きかった記事ベスト10を発表。働く人たちの悲鳴が聞こえてくる「仕事」部門の第9位は、こちら!(初公開日 2021年1月21日)。
* * * ⇒50~54歳男性の課長の割合が30年間で激減
国家資格合格者や、大企業への新卒入社組など、一度レールに乗りさえすれば高年収が約束されていたはずの“勝ち組”たち。だが、そんな彼らも長引く不況や、新型コロナが追い打ちとなり、続々と高年収組から転落しているという。なかでも、40~50代のヒラ社員がターゲットとなり、リストラの嵐が起きている。その実態を取材した。
大企業に勤める40~50代の高年収層を襲うリストラの嵐
「まさか自分が月収13万円まで落ち込むとは思いもよりませんでした」
そう呟くのは、昨年11月まで大手メーカーに正社員として勤めていた林洋平さん(仮名・51歳)。
退職時、年収は1000万円を超えていたという。
資本金10億円以上の大企業に勤める人の賃金カーブは50代前半でピークを迎え、
平均年収は700万円超に達する。
林さんが入社した会社も古き年功序列制を採用しており、50代前半で平均年収よりも上の年収を得られることはわかっていた。だからこそ、若い頃から地道に働き、ようやく年収1000万円プレイヤーになったのだが……。
「経営不振は続いていたのですが、どこか他人事として捉えていました。
でも昨年7月、会社はコロナによる業績不振を理由に早期希望退職者を募り、私はそのターゲットになってしまったのです。
社内の管理部門に呼び出され、マネジメント能力が低いと評価を下され、やんわり退職勧奨されました。管理職になることを断り、ヒラ社員でいたのが仇になったのかもしれません」
退職金2000万円で会社を退職
会社からは業務委託としての再契約、斡旋先企業への再就職などの道も提示された。
だが、
林さんは早期希望退職を選び、現在は警備会社でアルバイトとして働く。
「一人娘が一昨年に大学を卒業していて教育費がかからなかったことと、退職金2000万円がもらえたので、辞めることにしました。
不信感しかない会社で働くことはできませんからね」
定年まで正社員の予定だった林さんのマネープランは崩壊。節約の日々を余儀なくされている。 しかし、これは林さんだけに起きた悲劇というわけではない。地道に働けば、高年収が約束されていたはずの大企業サラリーマン全般に起きていることなのだ
高すぎる年収が会社にとっては重荷に
「特にターゲットにされているのは40代以降のヒラ社員です」 そう指摘するのは中央大学大学院戦略研究科客員教授の海老原嗣生氏。不況に苦しむ会社にとって、人件費の削減は喫緊の課題だ。 「とはいえ、法律で守られている正社員の給料を減らすのは簡単ではなく、年功序列制度を崩すのも容易ではありません。大企業なら50代前半のヒラ社員で年収950万円前後はもらえるようになっていて、企業の重荷になっている。ここにリストラの狙いを定めるのは当然の結果です」 さらに、企業は管理職の数も年々減らしている。’89年に、大手企業で管理職に就く50代前半社員の割合は約72%。だが、現在は同年代で40%弱まで減った。 「終身雇用が是とされていた時代には、会社は仕事がなくても管理職の役職をつくり、40~50代になれば昇進できるようになっていました。しかし、今の企業に働かない管理職を雇う余力はありません。実際のポストの数に見合った役職しかつくらなくなった結果、管理職に就く人の割合が減っていったのです」(海老原氏)
大企業に入社すると一生安泰……はもはや幻想
また、多くの企業を見てきた海老原氏によれば、40代以上の早期退職組の4割は別企業で正社員として再雇用、ほかの4割は非正規雇用、残りの2割は再就職先が決まらないまま退職していくという。 「別企業で正社員になれても年収は430万円ほどにダウン。それも、40歳を過ぎてかつての下請けや取引先といった同業に斡旋されるわけです。 肩身の狭い思いをしながらも、住宅ローンや子供の教育費のために我慢して働き続けるほかないのです」 大企業に入社して50代で高年収になって一生安泰……そんな人生はもはや幻想にすぎない。
社員1000人超の大企業も高年収社員の人件費をカット
あらゆる年代の中で、もっとも高級取りなのが50代。だが、大企業に勤めさえすればエスカレーター式に年収アップ……とはいかない世の中になっている。 中でも、人口減少で国内の需要が落ち込む製造業界、少子化により顧客の奪い合いとなっている教育業界は、50~54歳の年収も700万円台から600万円台に転落している。 厚生労働省が公開している賃金構造基本統計調査によると、’89~’18年の間に、従業員1000人超え企業の20~24歳男性の年収は約20%増加。対して、50~54歳男性の年収は約1.3%減。 組織の新陳代謝を促すべく企業は若手を積極的に採用しており、不況のあおりをもろに受けているのは40代以降なのだ。
<50~54歳男性の給与、下がっている業種は?>
▼製造業 728.8万円→690.7万円
▼教育・学習支援業 743.4万円→616.2万円
▼不動産業・物品賃貸 697.7万円→690.8万円
【海老原 嗣生氏】 株式会社ニッチモ代表。キャリア形成に精通し、著書に「いっしょうけんめい『働かない』社会をつくる」(PHP新書)など多数。 <取材・文/週刊SPA!編集部 図版/ミューズグラフィック> ―[2021年ベスト10「仕事」部門]―
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