浸水「3年前から毎年…」九州住民に疲労 雨、20日ごろまで
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大雨で冠水した道路を歩いて避難する人たち=福岡県久留米市で2021年8月14日午前11時46分、平川義之撮影
西日本では14日も記録的な大雨が続いた。佐賀県武雄市や福岡県久留米市では、河川の水位上昇によって支流や用水路の水が宅地などにあふれ出る「内水氾濫」が発生。各地で道路が冠水し、住民らが消防隊のボートで救助された。気象庁によると九州・山口の雨は20日ごろまで続く見通しで、厳戒態勢の出口は見えない。住民らの表情に疲労の色が浮かび始めた。
1級河川が流れる佐賀、福岡両県の平野部では近年、内水氾濫が繰り返されている。武雄市などを流れる六角川沿いでは2019年8月、一帯が冠水して順天堂病院(佐賀県大町町)が孤立。同町の鉄工所から大量の油が流出した。久留米市などを流れる筑後川沿いでは18年の西日本豪雨や20年7月の九州豪雨でも被害が相次いだ。 この日、六角川は午前7時に国土交通省武雄河川事務所と佐賀地方気象台が「左岸付近で氾濫した」と発表。周囲で内水氾濫も発生し、広範囲で家屋や車両が浸水した。武雄市北方町地区では早朝、夜勤を終えて帰る途中だった警備員、福田二美さん(63)の軽ワゴン車が水につかって立ち往生。駆けつけた消防団員に誘導されて車外に出ると水は腰の高さまで来ていた。「こんなに深いとは……」。恐怖の瞬間を振り返った。 自宅が六角川上流の山手にある大渡利勝さん(29)はこの日朝、土砂災害を心配して同市武雄町で営む土産物店「武雄温泉物産館」に家族と避難。しかし、内水氾濫した水は店舗前の道路まで迫った。「毎年、雨のたびに大変だ。行政にはもう内水氾濫が起こらないようハード面の整備を期待したい」と話した。 同市朝日町地区では住宅や商業施設が水につかった。近くのカフェ経営、福田修司さん(43)は「みんな無事に避難していればいいが」。消防団の救助活動も続き、孤立したまま取り残された15世帯ほどには日没前、炊き出し弁当をボートに載せて届けた。団員の奥耕輔さん(41)は「友人のケーキ店は胸の高さまで浸水していた。『2年前の大雨被害の後、店を修理したばかりだったのに』と落ち込んでいた」とつらそうに話した。 ◇自宅2階から救助「夜中に水が…」 武雄市朝日町地区で周囲が冠水し、1人暮らしの自宅2階で救助を待ち続けた富田テイ子さん(83)は消防のボートで避難所近くまで運ばれた。「夜中に1階に水が入ってきて80センチくらいの高さになったので、2階に避難していた」と声を震わせた。 一方、18年の西日本豪雨以来、4年連続で浸水被害が起きた久留米市。とりわけ筑後川支流・池町川沿いの鳥飼校区は内水氾濫の常襲地帯になっている。床上浸水した自宅から消防のボートで救助された女性(76)は「朝起きたら水がいっぱいでびっくりした。(梅雨末期の)7月に浸水があるかと思っていたがお盆に来るとは。3年前から毎年こんな感じだ」と疲れ切った様子だった。 県や市は内水氾濫対策として、24年度までに雨水幹線や放水路を整備する予定。しかし自宅アパートが浸水した女性(78)は「何年も待てるかどうか。安くて良いところがあれば引っ越したいがお金もかかる」とため息をついた。【峰下善之、山口響、宝満志郎】
◇長崎・雲仙土砂崩れ 捜索打ち切り 13日の土砂崩れで住宅が押し流され住民1人が死亡、2人が安否不明になった長崎県雲仙市小浜町の現場では、消防や自衛隊など約200人が14日朝から捜索活動を再開。土砂の撤去などを続けたが、2人は発見されないまま午後4時半に打ち切った。【中山敦貴