避難指示」出なかった熱海市、弱まる雨で判断困難に
奥山 晃平
日経クロステック/日経コンストラクション
静岡県熱海市で2021年7月3日に起こった土石流は、弱い雨が降り続いた場合における避難情報の発表の難しさを浮き彫りにする災害となった。静岡地方気象台は土砂災害の発生するリスクを前日から熱海市に伝えていたが、「雨は弱まる」との予報が出ており、市は避難指示の発令を見送った。
市区町村は、災害の危険性を示す5段階の「警戒レベル」を用いて住民に避難情報を発表する。発表基準は、21年5月に見直したばかりだ。
警戒レベル4に位置づけていた「避難勧告」と「避難指示」のうち、避難勧告を廃止して避難指示に一本化した。効果的な避難のタイミングを住民に伝えるには、勧告と指示の違いが分かりにくいという指摘が多かったためだ。ただ、今回の土石流では避難指示が発令されないまま災害発生に至った。
避難勧告廃止の運用を2021年5月に始めた(資料:内閣府)
[画像のクリックで拡大表示]
熱海市の斉藤栄市長は7月4日の会見で、避難指示を見送った判断に勧告の廃止が影響したかと問われ、「全くなかったとは言えない。避難勧告と比べて、避難指示は特に重い」と述べた。
今回の災害で避難指示を発令する目安だったのが、気象庁と県が発表する「土砂災害警戒情報」だ。避難指示と同じ警戒レベル4に相当する。
土砂災害警戒情報は、2時間以内に土砂災害の恐れの高まる境界線「クリティカルライン(CL)」を越える見込みがある場合、今後の気象情報も踏まえて発表する。CLは、1時間雨量と地中の水分量を表す「土壌雨量指数」で設定する。
土砂災害の警戒を呼びかける段階的な情報発表のイメージ。紫の線がクリティカルライン(資料:気象庁