ペルー大統領選、カスティジョ氏が当選 フジモリ氏敗北受け入れ
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6月に実施された南米ペルー大統領選の決選投票で、全国選挙審議会は19日、急進左派の小学校教師、ペドロ・カスティジョ氏(51)が初当選したと発表した。日系2世のアルベルト・フジモリ元大統領(82)の長女で中道右派の野党党首、ケイコ・フジモリ氏(46)を僅差で破った。カスティジョ氏は28日、大統領に就任する。任期は5年。発表を受けカスティジョ氏は支持者を前に勝利演説。「愛国者、国民の皆さん、ありがとう」と述べた。
左派政権の誕生は5年ぶり。カスティジョ氏は就任後、ベネズエラやボリビアなど中南米の左派政権と連携を深めるとみられる。ケイコ氏は2011年と16年の大統領選の決選投票に続き、今回も小差で敗れた。 ケイコ氏はこの日の結果発表に先立ち記者会見を開き、「法律と憲法が義務づけている」として敗北を受け入れる姿勢を示した。一方で、「(デモを)動員する権利はある」と述べ、「不正選挙」を訴える抗議活動を続けるとした。 6月6日に投票された決選投票で、選挙管理委員会は同15日に集計を終了。集計結果では、カスティジョ氏は約4万4000票差(得票率差0・25ポイント)でケイコ氏を上回った。 だが、敗北を受け入れないケイコ氏はカスティジョ氏陣営が「不正選挙を行った」として約20万票分を無効とするよう申し立てた。全国選挙審議会は19日にケイコ氏の訴えを退け、カスティジョ氏の勝利を確定したと発表。投票日から約1カ月半も結果が確定しない異例の展開をたどった。 今回、大統領選に初めて立候補したカスティジョ氏は、20年以上の教員経験がある教員組合の指導者。知名度は低かったが、18人が出馬した4月の第1回投票でトップに立ち、次点のケイコ氏との上位2人による決選投票に進んだ。 ペルーではケイコ氏や歴代5人の大統領の汚職疑惑が相次ぎ、「反汚職」や政界への不信感が高まっている。政治家経験のないカスティジョ氏は、汚職批判を重ね、対策の強化や政治家の特権廃止を掲げ、「アウトサイダー」として既存政治を嫌う人の受け皿となった。 新型コロナウイルス流行で貧富の格差が広がる中、世界有数の資源産業への課税を強化し、「忘れられた存在」と呼ぶ貧しい人々に「富の分配」を手がけると訴えた。貧困層を中心に浸透し、多くの地方で7~8割を得票した。 ケイコ氏は、大統領在任中(1990~00年)に経済成長や治安の安定を成し遂げた父の実績を強調。左翼ゲリラとの結びつきが取り沙汰されるカスティジョ氏を「共産主義者」と非難し、左傾化を恐れる中間層・富裕層を取り込み、リマなど都市部で6割を得票した。だが、自身の汚職疑惑に加え、市民虐殺事件や汚職で禁錮25年の刑で服役中のフジモリ氏の悪印象も足を引っ張り、及ばなかった。
【サンパウロ山本太一