天皇陛下「2回目のワクチン接種は五輪開会式に間に合わない」の意味

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NEWSポストセブン

東京五輪へのご懸念をお持ちだという天皇陛下(2020年一般参賀にて 写真/時事通信社)

 東京五輪開幕を控え、日本でもようやく進み始めた新型コロナウイルスワクチンの接種。7月6日、宮内庁は天皇陛下が新型コロナのワクチンを接種されたことを公表した。すでに上皇ご夫妻をはじめ65才以上の皇族方のほとんどは、接種を済まされたことが明らかになっている。 【写真5枚】見つめ合う天皇皇后両陛下。他、銀糸の刺繍入りローブ姿の雅子さまなど

 ところが雅子さまに関しては、接種に関する情報が伝えられていない。その背景には、ワクチン不足が指摘される中で、特別扱いを避けたいとのお考えがあると見られている。そしてもう1つ、雅子さまの接種が公表されない理由があるという。それは「東京五輪へのご懸念」である。  6月24日、西村泰彦宮内庁長官は会見で、陛下が新型コロナの感染状況を心配しておられるとし、東京五輪・パラリンピック開催が「感染拡大につながらないか、ご懸念されていると拝察している」と発言。その踏み込んだ発言に、大きな反響が広がった。表向きは長官が陛下のお気持ちを推察した形だが、陛下の了解を得て、陛下の考えを“代弁”したとみて間違いないだろう。 「この発言を理解するためには、陛下の五輪におけるお立場を考えなくてはなりません」と宮内庁関係者はいう。  陛下は東京五輪・パラリンピックの名誉総裁を兼任されている。予定どおりであれば、名誉総裁の陛下が両大会の開会式で開会宣言をされることとなる。 「開会宣言の文言はオリンピック憲章の中で定められており、自由に変更することは原則できません。そして、そこには開催を『祝う』という言葉が含まれています。  新型コロナの感染者数が増える中での開催は、さらなる感染拡大のきっかけ作りでしかないと、国民からの開催反対の声は強まるばかり。一方で、ウイルスの感染拡大を誰よりも強く危惧されてきたのが陛下でもあります。開催を『祝う』宣言がふさわしいのか、強く憂慮されたからこその発言だったのでしょう」(前出・宮内庁関係者)

絶妙なスケジュールで陛下のワクチン接種は行われた

 五輪開催を不安視する世論に陛下が寄り添われ、開催に消極的なお気持ちを持たれるのは自然なことだろう。 「そうしたお考えが、陛下のワクチン接種スケジュールにも影響しているように思います」  そう、皇室ジャーナリストは語る。陛下がワクチンを接種されたのは7月6日。仮に2回目の接種間隔が短いとされるファイザー社製のワクチンを接種されたとしても、間に20日の間隔を置くことが推奨されているため、2回目の接種は最速で26日となる。 「これでは、23日の東京五輪の開会式までに間に合わないのです。さらに、充分な免疫ができるのは2回目接種後の7~10日後ということを考えると、陛下に免疫ができるのはさらにもっと後のこと。  陛下に万全の態勢で五輪開会式にお立ちいただくため、政府は接種を早く受けられるよう、矢のように催促していたようです。しかし、陛下が決断されたのは、“開会式には間に合わないワクチン接種”でした。国民の接種の歩調に合わせられたという意味であると同時に、接種はしたけれども五輪開催を『祝う』ことには事実上、消極的であるという姿勢を示されたのではないでしょうか」(別の皇室ジャーナリスト

 

 

 

 

 

国民の多くが反対する東京五輪・パラリンピックの名誉総裁と、国民とともにある陛下という、非常に難しい両立を、絶妙な舵取りで成し遂げられたのだろう。 「雅子さまも陛下のお考えに同調されているはずです。つまり、雅子さまのワクチン接種を非公表にされることで、五輪にノーを突きつけたといっていいでしょう。もしこのタイミングで公表をすれば、どうしても五輪とひもづいてしまいます。それが政府や五輪組織委員会の狙いでもあります。しかし、感染拡大防止という根源的な意味から離れてワクチン接種が語られることは、雅子さまの本意ではないのでしょう」(前出・別の皇室ジャーナリスト)  陛下はお立場上、無観客という意味でも、民意からかけ離れたという意味でも「国民不在」の五輪において、開会宣言をせざるを得ないかもしれない。しかし、陛下と雅子さまは、さまざまな方法で「気持ちは国民とともにある」ということをお示しになっているのだろう。  14日には、陛下がおひとりで開会式に出席され、雅子さまの出席は見送られる方向で検討されていると報じられた。 「最低限のかかわり合いに留める、ということです。日本の国民感覚と乖離した“五輪貴族”といわれる各国のVIPは、両陛下との面会を要求してくることが考えられます。個別の接遇のみならず、天皇皇后両陛下が主催の歓迎行事も開かれる可能性がある。  常識的に考えれば中止なのですが、直前になっても“検討中”であるのは、ひとえに日本政府が開催したいからでしょう。菅官邸にとってみれば国威発揚、外交力のアピールの場ですからね。そのような状況は両陛下の本意ではない。それを表明するためのワクチン接種の非公表だと思っています」  緊急事態宣言によって、幾多のがまんを国民が強いられているなかで、“五輪貴族”のために絢爛豪華なパーティーをひらくなんて御免だ、という両陛下の意思表示でもあろう。五輪のメダルの色よりも、沈黙こそが、国民と皇室をつなぐ“金”糸なのだ。

 

 

 ※女性セブン2021年7月29日・8月5日