草むらに潜むマダニ感染症 ペットのイヌ死亡 致死率はコロナ以上 静岡
配信
致死率が30パーセントといわれているマダニを媒介とする感染症「SFTS」。 去年まで静岡県内では感染者が確認されていませんでしたが、今年に入り3人の感染が相次いで判明しました。 感染を防ぐために、私たちはどのように注意すればいいのでしょうか?
県環境衛生科学研究所 鈴木秀紀さん「こういう(葉っぱの裏など)ところにいます」 県環境衛生科学研究所の研究員鈴木さんと訪れたのは藤枝市の草むら。ここには多くの “マダニ” が潜んでいます。 県環境衛生科学研究所 鈴木秀紀さん「気づかずに咬まれてしまうこともあります。山林だけだと思われがちですが、都市部の公園などにも生息しています」
マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」
なぜ専門家がここまで恐れるのか。 それはマダニに咬まれることで感染する危険な病気があるからです。 「重症熱性血小板減少症候群」 通称SFTSは、SFTSウイルスに感染したマダニに咬まれることで発症する病気です。
静岡県内でも感染を確認
九州や中国・四国地方など、西日本で多く感染が確認されていましたが、今年3月に県内で初めて中部保健所管内に住む60代の男性の感染が判明しました。 その後、5月に浜松市の高齢男性が、6月に静岡市の60代女性の感染が相次いで確認されました。
新型コロナを上回る致死率
浜松医療センター・田島靖久医師「コロナよりも当然死んでしまうような疾患」
感染するとどのような症状が出てくるのでしょうか? 浜松医療センター・田島靖久医師 「最初は熱が出たり節々が痛くなったり、吐き気がでたりおなかがいたくなったり下痢になったりという症状がでてくる。急性の胃腸炎のような症状、または咳とか鼻水がでないようなインフルエンザ、いまだとコロナに近いような症状が最初に起こる。致死率は6から30パーセントくらい。コロナよりも当然死んでしまうような疾患」
マダニは通常、体長は1ミリほど。しかし、血を吸うと1、2センチほどに膨らみ、その後も皮膚にとどまります。 田島医師は、マダニが皮膚にとどまっている時間が危ないといいます。
治療薬も予防薬もない状態
浜松医療センター・田島靖久医師「咬まれたときに無理やり取ろうとすると意外ととれない」
浜松医療センター・田島靖久医師 「(咬まれてから)24時間を超えると感染リスクが高くなるといわれているので、咬みついてできるだけ早いときにとるのがいいと思う。咬まれたときに無理やり取ろうとすると意外ととれない。体の部分だけとれて咬みついた口の部分が残ってしまうこともある。ウイルスを押し込んでしまうこともある」 現在、SFTSに対する治療薬も予防薬もなく、国内で販売されている虫よけスプレーも効果がありません。かまれたことに気づかないケースもあります
SFTSに感染するのは人だけではない
感染が確認されたイヌを診察した本間尚巳獣医(映像は感染したイヌではありません)
さらにSFTSに感染するのは人だけではなく・・・ 動物医療センター・本間尚巳獣医 「全く元気がなくって。なんていうんですかね 呼んでも動かないような感じだけど熱は41度近い高熱、それから血便があるとか」 静岡市葵区の静岡動物医療センター。 本間尚巳さんは今年に入り、県内でただ1人、感染が確認されたイヌを診察した獣医です。
動物医療センター・本間尚巳獣医「「ダニが脱落するんです。それでいたことがわかった」
2匹とも40度を超える高熱や嘔吐、極度の脱力状態で、適切な処置がされましたが、その症状は重く、助かりませんでした。 動物医療センター・本間尚巳獣医 「ダニが脱落するんです。亡くなると、それで 何十匹の(マダニが)いたことがわかった。二匹目はなにか他に変わったことないの?と(飼い主さんへ)言ったら『このこ 鼻にダニがいたからとったんですよ』って。それでまずいのかなって」
県内では これまでにイヌ2匹、ネコ5匹の感染が確認されていて、ネコ1匹は回復しましたが、他はすべて死んでいます。イヌの致死率は40パーセント。最も致死率が高いのはネコで60パーセントといわれています。 動物医療センター・本間尚巳獣医 「まさか2頭重なることは。絶対ないと思っていたけど。静岡にもそこまで早く(感染が)進むのかなって、それが一番心配でしたね」
獣医師会は対応マニュアルを作成
県獣医師会は 県内で感染が拡大しているとして、6月SFTSへの対応マニュアルを作成し、獣医師会の会員に配布しました。 対応マニュアルには獣医師自身が感染しないような対策方法やSFTSを疑う症状の例、マダニが付きやすい場所などがまとめられています。
杉山獣医科・杉山和寿獣医 「SFTSを正しく知っていただくことで、SFTSを疑う動物を診療する際に安全に安心して診断治療を行うと、まず飼い主さんへの感染を防いで、そして社会全体へ感染拡大を抑制するという目的で作成した」
自分たちでできる対策を
農作業やハイキングで人の衣類などにマダニが付着し、家の中にマダニが持ち込まれ、家族やペットへ感染を広げることもあります。 大切なペットを守るためにも私たちができる対策をすることが必要です。 浜松医療センター 田島靖久医師 「なかなか咬まれたことを気づくのは難しいかなと思う。肌の露出が多いとマダニが食いついやすくなるので、ハイキングなどの場合には極力露出が少ないような服装を心がけていただくのが必要かなと。帰ってきたときにシャワーやお風呂に入ると思うんですが、その時にくまなく体を家族のかたにチェックしてもらって咬みついてないか見れば、早期発見しやすくなるのではないかと思う」 SFTSに治療薬はなく、発症すれば人では30パーセント、犬は40パーセント、そして猫は60パーセントが助かりません。 これから草むらなどで遊ぶ機会が増える本格的な夏がやってきます。 感染症を正しく理解し、正しく恐れることが必要です