南極観測で初検出 宇宙からの反ニュートリノ現象 国際チーム

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時事通信

千葉大の吉田滋教授(右)と石原安野教授。南極施設「アイスキューブ」の国際観測で宇宙から飛来した高エネルギーの反ニュートリノによる「グラショー共鳴」を初検出したと発表した=9日、文部科学省

 

 

 

 宇宙から極めて高いエネルギーで飛来する素粒子ニュートリノを南極点の施設「アイスキューブ」で観測している千葉大などの国際チームは、1960年ごろに予測された「グラショー共鳴」と呼ばれる現象を初めて検出したと発表した。論文が11日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。  素粒子には質量や寿命が同じで電気的な性質が反対の「反粒子」があり、ニュートリノの反粒子は反ニュートリノと呼ばれる。グラショー共鳴は3種類あるニュートリノのうち、電子型の反ニュートリノが非常に高いエネルギーで電子に衝突して粒子(Wボソン)が生じる現象。ノーベル物理学賞を79年に受賞した米物理学者シェルドン・グラショー博士(88)が予測したが、加速器で生み出せるエネルギーでは衝突を実現できなかった。  アイスキューブは氷の中に約5100個の検出器を埋設した施設。同共鳴の初検出は2016年12月で、詳細な解析で確認した。千葉大の吉田滋教授は「これで高エネルギーのニュートリノと反ニュートリノを初めて区別できた」と説明。「今回の反ニュートリノはブラックホール付近などで陽子と星間ガスから生じ、光速近くに加速された可能性が高い」と話した。  ニュートリノと反ニュートリノの比率が分かれば、発生した仕組みや環境をより正確に推定できる。千葉大の石原安野教授は「1回観測しただけでは、やって来た天体や距離が分からない。アイスキューブは規模を拡大して性能を引き上げる計画が進んでおり、たくさん観測できれば分かるようになる」と語った