自衛隊との戦闘を想定、
韓国軍いまや
日本を敵国視
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2013年10月、韓国の軍と警察が実施した竹島への「外国人」上陸阻止を目的とした訓練の模様(写真:Yonhap/アフロ)
韓国国防部が昨年末、独島(日本名:竹島)を舞台に、日本の自衛隊との仮想戦闘シナリオを作成し、国会で非公開報告を行った事実が明らかになった。
【写真】韓国軍に入隊して基礎軍事訓練を受けるソン・フンミン。プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーズに所属している
韓国の有力日刊紙「東亜日報」が、「国防部が日本の自衛隊の独島侵攻作戦シナリオと、これを防衛する韓国軍の対応戦略等を記述した内部文書を作成し、昨年12月に国会で報告したことが10日、明らかになった」と報道した(2月11日記事「軍、日の独島侵攻シナリオと対応文書を作成」)。
■ 自衛隊の竹島上陸に、イージス艦や弾道ミサイルで対応? 東亜日報が報じた該当文書の主な内容は次の通り。 「該当文書には1~3段階にわたった日本の自衛隊の段階別独島侵攻作戦シナリオが盛り込まれている。1段階は、独島上陸の環境を整えるため、サイバー戦を使って“独島封鎖”を主張し、主力部隊の上陸前に派遣する先遣部隊を独島の東島に浸透させる。その後、第2段階でイージス艦1隻と潜水艦2~4隻、F-15などのF系列戦闘機や早期警報統制機、電子情報収集機などを動員し、制空・制海権を確保する。最後の3段階は、おおすみ級(8900トン級)輸送艦や輸送ヘリコプターのチヌークヘリコプター(CH-47)、ホバークラフト(LCAC)を投入し、東島に2個小隊を侵入させるというシナリオだ。ボートを利用し、西島の住民宿舎などに1個半小隊を上陸させる案も含まれている」 「一方、韓国軍はこれに対応して、独島を防御するF-15KなどF系列の戦闘機やイージス艦、玄武弾道ミサイルなど、陸海空軍の主力兵器もこの文書に記述した」
東亜日報の報道によると、この文書は最新型戦略資産の導入を推進している韓国国防部が戦略資産を配置の必要性を説明するために作成した資料に含まれた文書で、韓国国防部は文書の中で「自衛隊の軍事的脅威を防御するために新たな戦略資産が必要だ」と強調したという。文書の作成背景について、韓国国防部は、「自衛隊出身の兵器研究家の三鷹聡が2012年12月に日本の雑誌に寄稿した仮想の独島侵攻状況を参考にした」「内部参考用資料にすぎない」と説明したが、東亜日報は「文書の存在だけでも韓日関係に及ぼす影響は少なくないだろう」と論評した。 つまり東亜日報はこう懸念しているのだ。文在寅(ムン・ジェイン)政権の朝鮮半島平和プロセスの発動で、北朝鮮という「主敵」を失った韓国国防部が、今度は日本を「仮想の敵」と想定している、と解釈される恐れもある――。
■ 国防部は日本を完全に「敵対視」 日本を敵対視している韓国国防部の姿勢は、2月2日に公開された「2020国防白書」にも如実に表れている。2年ごとに発刊される国防白書は、外交白書とともに、韓国政権の周辺国観を読み取ることができる資料だ。2020年の国防白書では「周辺国との戦略的国防交流の推進」において、日本との関係について以下のように述べている。 「日本は、両国関係だけでなく、北東アジアおよび世界の平和や繁栄のためにも、ともに協力していかなければならない隣国である」 「しかし、一部の日本の政治家たちの歪曲された歴史認識や独島の領有権主張をはじめ、2018年12月、救助活動中だった韓国艦艇に対する日本の哨戒機の脅威的な近接飛行、そして当時の状況についた事実を糊塗する一方的なマスコミ発表で両国関係は難航しており、2019年7月に日本が安保上の問題を理由に挙げて韓国に対して取った“輸出規制措置”は両国の国防関係の未来志向的発展に障害要因となっている」 「このような日本の措置に対し、韓国政府は2019年8月23日、安保上の敏感な軍事情報交流を目的に締結した“韓日軍事情報秘密協定(GSOMIA)”の終了を決定して通報したが、両国の懸案解決のため、2019年11月22日、いつでも効力が停止できるという前提で終了通報の効力を停止し、日本の態度変化を促し、同協定の終了通報の効力停止状態を維持している」 「これからも日本の歴史歪曲、独島に対する不当な領有権主張、懸案問題における一方的で、自衛的な措置については断固として厳重に対処する一方で、共同の安保懸案については、韓半島および北東アジアの平和と安定に向けて持続的に協力していくつもりだ」
韓国「国防白書」、中国と北朝鮮には友好的記述ばかり 一方で中国については友好的な記述が目立つ。 中国との関係について「2008年から両国関係を戦略的協力パートナー関係に格上げした」と規定した上、2017年の中韓国首脳会談をはじめとする両国間のハイレベル交流が活性化しており、戦略的コミュニケーションが強化されつつあると記述した。 THAADの朝鮮半島配置とそれに伴う中国のすさまじい経済報復に対する記述はもちろん、過去7年間にわたってなんと4000回も中国空軍が韓国の防空識別区域に侵入したことで問題になっている事件に関する記述も省略した。ただ、「中国軍用機の韓国防空識別区域進入に伴う偶発的衝突防止のために両国間の情報共有が行われており、今後疎通がさらに強化されるだろう」と未来志向的な見解を述べている。 北朝鮮については2018年に続いて「主敵」という表現を削除し、「北朝鮮の大量破壊兵器は韓半島の平和と安定に対する脅威」と定義した。 北朝鮮軍によって韓国の西海上で韓国公務員が銃殺され燃やされた事件や、北朝鮮によって板門店南北連絡事務所が爆破された事件によって、昨年1年間、韓国のみならず世界的に北朝鮮に対する懸念が巻き起こったにもかかわらず、「北朝鮮は境界地・海域での偶発的衝突防止措置履行など、全般的に9・19軍事合意を順守している」との見解を述べている。 米日韓同盟を重要視する米国のバイデン新政権は激化した日韓間の対立について積極的に関与すると予想されるだけに、ここにきて文在寅政権も日本との関係回復に向けて融和的なジェスチャーを送っている。しかし、韓国国防部が見せている「対日観」を勘案すると、文在寅大統領がどれだけ日本との関係回復を望んでいるのか、不審に思われてもしょうがない。裏と表が一致しない文政権の対日外交について、米国も同じ疑問を持っているのではなかろうか。
李 正宣