ナワリヌイ氏、 収監へ 執行猶予取り消し ロシア反体制指導者
配信
アレクセイ・ナワリヌイ氏=ロシア・モスクワで2020年2月29日(AP)
モスクワの地方裁判所は2日夜、療養先のドイツから帰国後に逮捕されたロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が過去に受けた有罪判決の執行猶予を取り消し、実刑に切り替える決定を下した。収監期間は過去の自宅軟禁などの期間を差し引いた約2年8カ月の見込み。判決内容を「捏造(ねつぞう)」と訴えるナワリヌイ氏側は上級審に異議を申し立てる方針だ。
モスクワ中心部などでは決定の言い渡し後、ナワリヌイ氏の釈放を求める抗議デモが発生。一部で治安部隊が激しい取り締まりを行い、人権団体によると、裁判所周辺で日中に続いた抗議活動と合わせ、1000人以上が拘束された。ブリンケン米国務長官が「深い遺憾」を表明するなど、欧米諸国からも改めて非難が相次いでいる。 露メディアによると、ナワリヌイ氏は2014年に詐欺罪などで禁錮3年半の有罪判決を受け、執行猶予の条件として月2回程度の出頭を義務づけられていた。執行猶予の期間は20年末で切れているが、露司法当局は、ナワリヌイ氏が神経剤「ノビチョク」で襲撃され、移送先のドイツの病院を退院した後も含めて、過去複数回にわたって出頭義務を果たさなかったと実刑への切り替えを申し立てた。裁判所も「一度ならず義務に違反しており、申し立ては正当だ」と司法当局の訴えを認めた。 一方、弁護側はナワリヌイ氏が退院後も通院治療を続けていたと反論し、襲撃事件前も月2回の出頭は果たしていたと主張。ナワリヌイ氏も審理の中で欧州人権裁判所が有罪判決を「恣意(しい)的で不合理」として露政府に賠償を命じたことに触れ、「私は14年にもこの事件で裁かれているのに、まだ裁判が続いている。全ては一人の人物による嫌悪と恐怖のためだ」とプーチン大統領を批判。「できる限り闘い続ける」と宣言した。 ナワリヌイ氏に対してはほかにも寄付金の私的流用など複数の刑事事件で捜査が進められており、収監期間が10年を超えるという見方も出ている。9月の下院選や24年の大統領選を控え、プーチン政権は反体制派の象徴であるナワリヌイ陣営への圧力を強め、欧米諸国の批判にも「内政干渉」と反発している。だが、1月17日の帰国直後の逮捕は全国規模の抗議活動も引き起こし、国民の間で広まる政権への不満も浮き彫りにしている。
【モスクワ前谷宏