頭の良さより「好感度」で人生が決まる納得理由 できる人の「人たらし力」を、一気に磨く3秘訣
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「好感度のある人」がより愛され、成功をおさめやすい傾向にあります(写真:kikuo/PIXTA)
日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。 たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。 その岡本氏が、全メソッドを初公開した『世界最高の話し方1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた! 「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』は、発売たちまち7万部を突破するベストセラーになっている。コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「結局、『頭のいい人』より『感じのいい人』が成功する理由」について解説する。
■日本人は「できる人アピール」をしたがる人が多い あなたは「愛される人」でしょうか、「できる人」でしょうか。 人の評価軸の1つに「人としての好感度、温かみ(Likability)」と「有能さ(Competence)」というものがあり、リーダーにはこの2つの資質が必要です。 双方持ち合わせている人がベストなわけですが、この2つは相殺されやすく、どちらかに傾きがちなのだそうです。 「どちらが重要か」と言われたときに、日本では、まだまだ「『非情でもできる人型』のリーダーのほうが有能だ」という信仰が強く、強権型のリーダーへの憧憬が強いように感じます。
私も長らくサラリーマン生活をしたわけですが、「できる人アピール」をしたがる「イキった奴」を、星の数ほど目撃してきました。 「イキった」とはもともと関西弁だそうですが、「調子にのっている、自分が一番すごいと思っていて、他人を見下した態度」という意味。 「イキった奴」には、次のような特徴があります。
「イキった」態度の主な特徴は以下の7つです。
① やたら横文字や業界用語を使いたがる
② 笑顔は、カッコ悪いと思っている
③ つねに人と自分を比較し「マウント」したがる
④ 「自分は人から学ぶものなど何もない」という「全能感」を漂わせる
⑤ 上司やクライアントにはすり寄るが、下請けや部下にはつらく当たる
⑥ 「できる人は愛想がないものだ」と思い込んでいる
⑦ 「人の話を聞く」より「自分がいかにかっこよく話す」ことのほうが大事だと思っている
実は新聞記者時代の私は、かなり「嫌な、イキった奴」でした。
周りもろくすっぽ挨拶もしない人ばかり。
勝手に「偉そうにふるまう=できる」なのだと錯覚していました。
■実は「有能さ」より「好感度」が重要だった
今にして思えば、「なんと浅はかな考え方だったか」と穴があったら入りたくなります。しかし、コミュニケーションの修業をし、海外でその王道を学んだ結果、こうした「『できる人』アピールは強烈にダサい」ことに気づいたのです。 実は、「IQ (知能指数)が成功に寄与する割合はたった20%にすぎず、残りの80%は「EQ(こころの知能指数=自己や他者の感情を知覚し、自分の感情をコントロールする知能)」、つまり、「共感力」や「対人関係力」によるものなのだそうです。
IQだけで成功するのは非常に難しいわけで、海外のトップ企業のほとんどがEQを鍛えるトレーニングを導入しているといわれています。 ビジネスの成功には「有能さ」は大切のように思われますが、「実は『好感度』のほうが、よほど人生にとっては重要である」。といわれています。実際、海外にはこのことを裏付ける学術的調査が数多くあります。
2005年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表された行動心理学者らによる研究では、人を次の4つに分類しました。
① 好感度が高く、仕事もできる「愛されるスター」
② 好感度が低く、仕事もできない「無能で嫌な奴」
③ 好感度は高いが、仕事はできない「愛される愚か者」
④ 好感度は低いが、仕事はできる「できるが嫌な奴」
もちろん、両方そろった「スター」は愛され、どちらもない無能の人が嫌われるのは明らかだとして、
③と④のどちらが好まれるでしょうか?
実は「③愛される愚か者」のほうより、
「④仕事はできても嫌な奴」のほうが選ばれるという結果
だったのです
「自分の実績」にばかりこだわる「④仕事はできても嫌な奴」は結果的に、組織としての成功を阻む一方で、人間関係構築力に優れる「③愛される愚か者」タイプは、「組織のコミュニケーションを活性化し、結束を固める役割を果たす」とされているからです。 ■理想のリーダー像が「教官型」から「共感型」へ 「好感度のある人」がより愛され、成功をおさめやすい。これはとみに最近、顕著な傾向のように感じます。 今、とくにリーダーシップ人材に求められているのが「共感力」。どんなに仕事ができようと、強権的であろうと、「パワハラだ、セクハラだ」と訴えられれば一巻の終わりです。
水平的な情報流通と共感をベースとしたSNS時代には、「人々の気持ちを理解し、寄り添う力」が必要になります。 こうした時代背景もあって、求められるリーダー像が、上から一方的に支配・指示する「教官型」から、社員と同じ目線に立ち、その力を引き出す「共感型」へと変わってきているのです。世界のトップエリートを見ても、その流れは明らかです。 例えば、かつて、アメリカの超一流企業において、一世を風靡していたのは、強権的な「トップダウン型」のスティーブ・ジョブズやジャック・ウェルチ(GE)でした。
しかし今は、「アップルのティム・クック」「マイクロソフトのサチャ・ナデラ」「グーグルのサンダー・ピチャイ」などといった「共感型」のリーダーが台頭、成功を収めているのが、その象徴といえます。 彼らは、ことあるごとに、「ビジネスの支柱には共感力がある」といってはばかりません。一方的に決めつけるのではなく、対話を積み重ねながら、コンセンサスを作り上げていくタイプといわれています。 有能であることはもちろん重要ですが、そこを強調することに気を取られ、人間的な「魅力」や「温かみ」をアピールできていない人は多いように感じます。
でも、結局、本当の成功のカギとなるのは、「できる人」アピール力ではなく、何よりその「人たらし力」です。 「何を知っているのか」よりも「誰を知っているのか」が決め手になることは多々あります。「この人と一緒にいたい、働いてみたい、話してみたい」。そう思わせる力こそが「好感度」ということです。 では、この現代の最強の武器「好感度」はどのように手に入れることができるでしょうか。そのポイントは次の3つです
【1】「ムッツリ」より「笑顔」
「できる人は不愛想でいい」という幻想を捨てることです。
不機嫌はそれだけで、「不愉快菌」を相手にばらまく行為と心得ましょう。
【2】「自分主役」より「相手主役」
「俺スゴイ」より「あなたはスゴイ」と言える人が愛されます。
自分アピールはそこそこにして、話すよりもじっくり聞くことが大切です。
【3】「ヒエラルキー」にとらわれない
上にへつらい、下に当たるのではなく、
あくまでも誰に対しても分け隔てなく、フラットに接することです。
相手から話しかけるのを待っているより、自分から挨拶することを心がけましょう。
■今後のリーダー像は
「人の気持ちを理解できる人」
「できる人」を演じ続けて、
無駄にプライドだけを積み重ね、分厚い鎧を着こんでいった結果、
リタイア後に、人間関係を構築できずに、孤独になっていく人たちは少なくありません。
ただの「いい人」「できる人」ではなく、
「いい気分にさせてくれる人」
「できた人」へ。
自分の能力を振りかざし、強さを誇示することではなく、
人の気持ちを理解し、時には自分の弱みを認める強さをもつ。
これこそが、ポストコロナ時代に求められる「話し方」「コミュニケーション」の真髄であり、それができる人が結局、仕事も人生もうまくいくのです。
岡本 純子 :コミュニケーション・ストラテジスト