イーロン・マスク「土曜の夜は息子と彼女とエヴァンゲリオンを見てるよ」
EV（電気自動車）開発企業のテスラ、宇宙スタートアップのスペースXのCEOイーロン・マスク
Photo: Paul Hennessy / SOPA Images / LightRocket / Getty Images
ニューヨーク・タイムズ（米国）
Text by Maureen Dowd
世界の大富豪ランキングで伝説の投資家ウォーレン・バフェットを抜き、ジョニー・デップに元妻の浮気相手と名指しされるなど、最近も話題に事欠かかないイーロン・マスク。手がけるビジネスが絶好調のいま、彼のプライベートはどうなっているのか。ピュリツァー賞作家が歯に衣着せぬ質問を浴びせかけ、マスクの私生活に切り込んだインタビュー記事をお届けする
土曜の夜は『エヴァンゲリオン』
「火星王」と「銀河のプリンセス」、そして彼らの息子「X Æ A-Xii（エックス・アッシュ・エイ－トウェルブ）」は、ロサンゼルスの自宅で土曜の夜をどんなふうに過ごしているのだろう？
日本のアニメ作品（最近では『デスノート』や『エヴァンゲリオン』）を少し鑑賞し、AI（人工知能）の持つ可能性と危険性について夜が更けるまで議論。オーディオブックやポッドキャストのラインナップで目立つのは歴史ものだ。
ちなみにイーロン・マスク（49）が宮崎駿の作品のなかで最高傑作だと思うのは、『もののけ姫』だという。
「いまはチンギス・ハーンにまたはまってるの。これで3回目くらいかな」と、銀河のプリンセス、またの名をグライムス（32）、もしくは“c”（マスクは本名クレアのイニシャルで彼女を呼んでいる）が言った。彼女のイニシャル“c”は光の速度を表す普遍定数でもある。
アーティストのグライムスと、ロケットマンで世界有数のEV（電気自動車）企業テスラのCEOイーロン・マスクのロマンスは奇妙だが、うまくいっている。
2人の赤ん坊も変わった名前をつけられたが、普段はただ「X（エックス）」と呼ばれている。マスクによれば、「最後のA-12はCIA偵察機のアークエンジェル12にちなんでいるんだ」とのこと。
「X」が泣き出すと（聞いた感じでは、すこぶる人間の赤ちゃんらしい泣き声だった）、「あらあらXったら」と“c”が優しくあやす。彼女は自分の子供を「リトルX」と呼んでいる。
デジタルないたずらを仕掛けて自分のファンを混乱させるのが好きなマスクは、息子の顔にタトゥーフィルターを入れた写真を付けてツイート。コメントをしたファンに対して、彼はこう返信した。
「墨を入れるのに若すぎるってことはないよね、ハハ」
ジョニー・デップへのアドバイスは…
私はマスクに1時間ほど電話インタビューをする機会を得た。地球上で最もリッチな10人のリストに名を連ねる彼は、数分ほどグライムスも「カメオ出演」させた。
7月初旬にはマスクが純資産でウォーレン・バフェット（89）を抜いたと報じられた。そこで、マスクがバフェットに映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のユーチューブ動画を送ったという噂の真偽のほどを訊ねた。映画のなかでダニエル・デイ＝ルイスはポール・ダノにこう言っている。
「オレはあんたのミルクシェイクを飲むぞ」（裕福な人が貧しい人を搾取していることを揶揄するセリフ）
だが、マスクは「そんなこと言ってない！」とこの噂を全面的に否定した。
マスクのプライベートも、実業家としてのキャリアと同じくらい目まぐるしい。3度の結婚歴があるが、うち2回はテレビシリーズ『ウエストワールド』に出演していたタルラ・ライリーとだった。
6人の子供がいて、ジョニー・デップの元妻アンバー・ハードとのロマンスで浮き名を流したりもした。泥沼の離婚劇の後に始まった2人のセンセーショナルな名誉毀損裁判では何度もマスクの名前が取り沙汰された。
ハード（左）とデップ。離婚後、デップが自身のDVを報じた英紙「ザ・サン」を名誉棄損で提訴。裁判は両者の醜い暴露合戦に発展した
Photo by Jason Merritt/Getty Images)
デップはアンバーが自分と婚姻関係にあるときから、マスクと不倫していたと主張している。だが、マスクは「ジョニーの妻だったときのアンバーとはまったく何もなかった。完全な間違いだ」と、この主張をはっきりと否定した。
アンバー、そしてモデルのカーラ・デルヴィーニュと3人でベッドを共にしたという噂について訊くと、マスクは笑いながらこう言った。
「そんなことはしてないよ。世間はそういうことを、実際以上にいやらしいことだと考えるみたいだけどね」
デップに何かアドバイスはあるかと問うと、「『早く仲直りして、ケリをつけて』。これだけだね」とマスク。
私はグライムスとの私生活について、さらに彼に質問をした。（続く
実は恋愛体質
グライムス（32）は妊娠中、エーテルのようなサイバー・ゴス空間に浮かんでいる写真で、米誌「ローリング・ストーン」電子版の表紙を飾った。
掲示板サイトの「レディット」上で、あるファンがグライムスを「妖精・魔女・サイボーグ」のハイブリッドだと評したが、それはイーロン・マスク（49）のドリームガールでもあった。
「彼女はすごく特別な存在。それは間違いない。いままで出会ったなかで、最高に変わっているからね。『僕らはいつもどっちのほうがクレイジーかな？』って問いかけ合っているよ」と、マスクは故郷・南アフリカ訛りの英語を陽気に弾ませながら言った。
テック業界の巨人にも、ロマンチックなエピソードのひとつや二つはある。マスクは元妻タルラ・ライリーにバラ500本を贈り、ゴスペル聖歌隊の歌うセレナーデをBGMにプロポーズしたそうだ。意外に恋愛体質なのか、マスクはアンバー・ハードとの破局で憔悴しきっていた2017年、「ローリング・ストーン」誌にこう語っている。
「愛する人、生涯の伴侶がいなければ、幸せになんてなれっこない」
「僕にはソウルメイトが必要だ。がらんとした大きな家でずっとひとりはイヤだ。廊下に足音が響いていたのに誰もいないのもまっぴら。隣に誰かが寝ていないのもね」
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個人的には他人の馴れ初め話は大好きだが、マスクとグライムスほどぶっ飛んだカップルは見たことがない。幼少時からとっぴな考えが頭に次々と湧いて、自分は変わってると思っていた者同士が巡り合ったのだから。
マスクは何年も前から、グーグルのラリー・ペイジといったシリコンバレーの友人たちにこう警告してきた。
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