頻発するキャッシュレス決済の障害、利用者急増で露呈した実装ミス

中島 募

 

日経クロステック/日経コンピュータ

 

 

 

 

キャッシュレス決済に関連したシステム障害が相次いでいる。2020年に発生した障害は主だったものだけで5件。2019年7~12月の9件に比べれば減ったが、依然として高止まりしている。障害が頻発する背景には、サービスの急速な普及や高度化に対して提供側の開発・運用体制が追いついていない実情がありそうだ。

2020年に発生したキャッシュレス決済関連の主なシステム障害

発生日 企業名 概要 原因
2月12日 キャナルペイメントサービス 松屋やローソンなどの一部店舗で「PayPay」や「d払い」などのQRコード決済が使用しにくくなる障害が発生 ゲートウエイシステムにおける通信処理の実装ミス
2月26~29日 リクルートライフスタイル 決済サービス「Airペイ」において一部の加盟店で交通系と「iD」「QUICPay」の電子マネーが決済できない障害が発生 交通系電子マネーなどの処理を委託しているJR東日本メカトロニクスでの認証障害
3月18日 KDDI QRコード決済サービス「au PAY」での支払いやチャージなどができない障害が発生 au PAYの残高管理システムの不具合
6月3日 KDDI ローソンの一部店舗でau PAYでの支払いができない障害が発生 au PAYの店舗情報管理システムで一部の店舗情報が正しく反映されない不具合
6月25日 セブン-イレブン・ジャパン セブンイレブンの店舗でPayPayなどのQRコード決済が使えなくなるなどの障害が発生 外部のシステムベンダーによるネットワーク設定変更の作業ミス

 日本のキャッシュレス決済の比率は2019年時点で約27%にとどまり、政府は2025年までに40%、将来は80%まで高める目標を掲げる。システム障害の頻発が今後も続けば利用者の不信感を招き、キャッシュレス決済への移行に悪影響を及ぼす恐れがある。

au PAYやAirペイなどで障害相次ぐ

 障害の内容や規模はさまざまだ。2020年6月25日にはセブンイレブンの店舗で「PayPay」などのQRコード決済が使えなくなる障害が発生した。外部のシステムベンダーがネットワークの変更作業で誤った通信経路を設定したのが原因だ。

 KDDIが展開する「au PAY」では3月18日と6月3日の2度にわたって障害が起こり、支払いができない状態となった。3月の障害はau PAYの残高を管理するシステムの不具合、6月の障害は店舗情報管理システムでローソンの一部店舗の情報が正しく反映されない不具合が原因だった。

 リクルートライフスタイルが提供する決済サービス「Airペイ」では2月26日から29日にかけて、一部の加盟店で交通系と「iD」「QUICPay」の電子マネーが決済できない状態が続いた。交通系電子マネーなどの処理を委託しているJR東日本メカトロニクスの「シンクライアントセンター」と呼ぶ処理センターで、一部店舗の決済端末を認証する処理に障害が発生した。

 2月12日には日本ユニシス子会社のキャナルペイメントサービスが手掛ける決済ゲートウエイサービスで障害が起こり、松屋やローソン、日高屋、ビックカメラなどの一部店舗で複数のQRコード決済が使いにくい状態に陥った。サーバーの通信処理が大量に滞留したのが原因だ。

 キャッシュレス決済に詳しい大和総研の長内智主任研究員は「テストなどの事前準備を十分にしていれば(システム障害への)対応は可能だったとみている。利用件数の急増や(ポイント連携など)サービス間の連動が進む中で、それらの副作用としてシステム障害が起こってしまっているのだろう」と分析する

 

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00989/083100034/?n_cid=emsl_116005