白人至上主義者にNOを突きつけた老舗紅茶メーカーの連携プレー

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 ロンドンに住むイラストレーター クラーク志織さんの新連載「イギリスのSDGs事情ってどうなのさ?」。イギリスの人たちがSDGsの理念を日々の暮らしにどう取り入れているのかを、パンチの効いた軽妙なタッチのイラストつきでレポート! 笑いと学びのつまったコミックエッセイです。記念すべき第一回のテーマは、イギリスを象徴する飲み物「紅茶」。今年の初夏に起こったあの事件について綴ります。 【マンガでお届け!】イギリスで話題騒然となった「BLM」大手紅茶会社の連係プレー

発端は、今年の初夏にアメリカで起こったあの事件

 これまで、より多くの支持を集めるために、物議を醸したり、対立を生みやすい政治的な発言を避ける傾向にあった大企業や大手ブランドたち。昨今、そのスタンスが変わりつつあります。  例えば、2018年に議論を引き起こしたNIKE事件。スポーツ用品メーカーのNIKEが、人種差別への抗議のため国歌斉唱で起立しなかったアメリカのアメフト選手コリン・キャパニックさんを、30周年記念の広告キャンペーンに大々的に起用。彼のメッセージを支持していることを表明しました。  この広告を巡り、多くの称賛が寄せられた一方で、国家への屈辱だと捉えた人々がNIKEの商品を燃やしたり、切りつけたりする動画を次々とSNSに投稿。瞬く間に抗議運動が広がり、大きな波紋を呼びました。  そして今年の6月。アメリカのミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさんが、白人警官によって殺害された事件を機に、抗議デモ「BLM(BLACK LIVES MATTER)」が、大きなムーブメントとして世界中に広がりはじめると、さまざまな企業がBLM支持を表明するステイトメントを発表。もはや、BLMへの賛同を表明しない選択は、企業として人種差別をサポートしていることに繋がるのではないか、という風潮まで生まれました。  イギリスの2大国民的紅茶ブランド「ヨークシャティー」と「PG」を巡って、ツイッターでちょっとした騒動が巻き起こったのは、6月上旬のこと。  さまざまな企業がBLMへの賛同を次々と表明する中、イギリスの極右活動家がツイッターで「ヨークシャティーがBLM運動を支持していなくて嬉しい!」といった内容のツイートを投稿。すると、その投稿に対し「ヨークシャティー」の公式アカウントが、「もう二度とうちのお茶を買わないでください。私たちはBLMについての投稿をするために、私たち自身を教育し適切なアクションを起こせるように時間をかけているところなのです。私たちは人種差別に反対です」と、直接リプライ。  すると、今度はそのやりとりを見た別のユーザーが「じゃあ今度から『PG』を買わないといけないってこと? 最悪! もう『ヨークシャティー』はいらない」といった内容のメンションを飛ばしました。  すると今度は、そのツイートに『PG』の公式アカウントが、「もしあなたが人種差別に反対する紅茶ブランドをボイコットしたいなら、『PG』も買わないでください。どうか他の紅茶ブランドを探してください」と反論。  2つの紅茶ブランドがタッグを組んで、BLM運動の支持を表明したこの一連のやり取りは、イギリスのツイッターユーザーたちから多くの賛同を集め、Solidarity(連帯)をもじって「#Solidaritea」というハッシュタグまで誕生しました。紅茶だけにTeaをかけているのですが、日本語に訳すと「れんチャい」みたいな感じでしょうか。無理矢理過ぎるか

 

 

 

 

 

実際にどんな取り組みをしているのかを表明して!

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 一方で、SNSで「人種差別反対」のメッセージを発したのはいいけれど、この2ブランドが企業としてどのように問題に取り組むつもりかは未だに不明瞭。「ただムーブメントにのっかっただけのPRなのでは?」という疑問の声も上がっています。  これは「ヨークシャティー」と「PG」だけに限った話ではなく、多くの企業に同じような疑問が投げられています。もちろん、多くの企業が「人種差別反対!」と声をあげる社会になったのは非常に喜ばしい事だと思いますが、ステートメントだけが立派でも実情がともなっていないとあまり意味がありません。  実際に、SNSでBLMへの賛同を表明したすぐ後に、元従業員をはじめ内部の人から「私はこの会社でこんな人種差別を受けた」などと告発され、炎上した企業がいくつもありました。  人種差別、性差別、環境への配慮などに世の中の関心が高まり続ける今、口先だけのイメージ戦略ではなく、実際にどのような取り組みをしているのか、企業のあり方がますます問われてきているように思います。と同時に、私だって「口先だけで行動が伴っていな事きっとたくさんあるよね?」と、改めて自問自答を繰り返す日々です! 

クラーク 志織(イラストレーター)

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/fa8458f974d34a9460fc9f746cd7f639f1d12ed5?page=2