カリフォルニア大学バークレー校が唾液によるPCR検査を試行
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唾液検査により、医療従事者は訓練も個人防護具着用が不要になる!?
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームは、同校のInnovative Genomics Institute(イノベーティブ・ジェノミクス・インスティチュート、IGI)が開発した新型コロナウイルス(COVID-19)向けの唾液検査の試行を開始した。 米国内で最初にこの疾病が確認されて以来、IGIではCRSPR研究の先駆者であるJennifer Doudna(ジェニファー・ダウドナ)氏の下で、ウイルス検査と治療方法の開発に励んできた。同校が試行している新たな唾液ベースの検査は、被験者の感染を調べる検査を実施するために、訓練を受け個人防護具を着用した医療従事者を必要としない。 この方法が鼻腔拭い液方式と同じように有効であることが証明されれば、バークレー校の学生、教職員を8月末の秋学期開始前に検査するための能力を高められると同大学は声明で語った。
新型コロナウイルスの唾液検査の試行に協力している大学院生のアレックス・エーレンバーグ氏と話すジェニファー・ダウドナ氏(UC Berkeley photo by Irene Yi)
「本校では、学生の少なくとも一部が秋学期に安全にキャンパスに戻れることを望んでおり、そのための方法のひとつが無症状者の検査を行うことだ。そうすることでみんなの健康を観察し、ウイルスの感染を防ぐことができる」と、仮設検査場と唾液検査を陣頭指揮するダウドナ氏が声明で語った。 検査は最短5~6分で実施できると同氏は考えている。同研究は学内にはすでに公開されており、同キャンパスに所属する学生と教職員は施設のウェブサイトで、Free Asymptomatic Saliva Testing(無料無症状唾液検査)研究に参加できる。 「鼻腔拭い液検査と異なり、唾液検査はずっと容易であり、試験管の中に唾を吐くだけでいい」と同氏。「検査場を出るまでに5~6分しかかからないと考えているので、手間がかからず、簡単に検査を受けることができる」。 この検査は、すでに食品医薬品局(FDA)による家庭内検査の緊急使用許可を得ているポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いている。ダウドナ氏らが先駆けて遺伝子工学に応用したCURSPR-Casプロテインを使用することで、同研究所は安価かつ実験室分析が不要で、数分間で結果が出る家庭で使える検査方法の開発を進めている。 IGIは、2014年にダウドナ氏がカリフォルニア大学のバークレー校とサンフランシスコ校と共同でCRISPRベースのゲノム編集を推進するために設立した。大学の声明によると、同研究所は6月初めに新たなロボティックハンドリングシステムを導入し、検査能力を1日当たり1000件に増加させた。 「パンデミックが起きた時、我々は自らに問いかけた、『新型コロナウイルスによる健康危機に対して科学者として何をすべきか』と同氏は声明で言った。「そして目標を検査に絞った。現在我々は、臨床検査室を設置してバークレー校キャンパス内で無症状唾液検査を行おうとしている。成功したらこの戦略を他の場所へも広げていけることを望んでいる」。 (翻訳:Nob Takahashi / facebook )
Jonathan Shieber
https://news.yahoo.co.jp/articles/65a773c72e2e113320f0c2af5c6e9c62aa22ac2f
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https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202006/565900.html
新型コロナウイルスの唾液PCR検査、厚労省が通知発出
唾液PCR検査が可能に、有症状者を対象
2020/06/03
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202006/565900.html
厚生労働省は6月2日、新型コロナウイルスの感染を調べるために、唾液を検体としてPCR検査を行うことを可能とする通知を発出。発熱などの症状発症から9日以内の有症状者を対象とした唾液PCR検査を承認・保険適用した。無症状者は唾液PCR検査の対象とならない。また同日、国立感染症研究所は医療従事者向けの検体採取・輸送マニュアルおよび感染管理マニュアルを改訂し、唾液検体採取の方法や、感染防御としてサージカルマスクと手袋を装着する旨などを記載した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断のために広く行われているPCR検査では、検体として主に鼻咽頭ぬぐい液が用いられている。しかし、鼻咽頭の奥に綿棒を差し込む際にくしゃみやせきを誘発してしまう場合があり、検体採取時に医療従事者が感染リスクにさらされる。このため、鼻咽頭ぬぐい液を採取する医療従事者は、サージカルマスクと手袋に加え、ゴーグルやフェイスシールドといった眼の防護具、長袖ガウンを装着する必要がある。
新型コロナウイルス感染者の唾液からもウイルスが検出されることは以前から指摘されており、5月には日本医師会が唾液PCR検査の実用化を厚労省に対して要請していた。このほど厚労省の研究班が実施した臨床研究では、COVID-19と診断され自衛隊中央病院に入院した患者88症例について、発症後14日以内に採取した鼻咽頭ぬぐい液と唾液によるPCR検査結果を比較。その結果、発症から9日以内の症例では、両者で高い陽性一致率が認められた。ただし、10日以降の症例では一致率が低下した。
発症9日以内の「有症状者」が対象
この結果を受けて厚労省は、発熱などの症状発症から9日以内の患者に対して、医師が必要と判断した場合に唾液によるPCR検査を行うことを可能とし、検査キットの一部変更承認と保険適用を行った。発症後10日以降の患者に対する唾液PCR検査は推奨していない。
通知では唾液PCR検査の主な対象者として、帰国者・接触者外来や地域外来・検査センターでは「市中の有症状者」、病院や診療所においては「有症状者(患者、医療従事者など)」を挙げている。無症状者は唾液PCR検査の対象としていない。なお今後、地域外来・検査センターなどでは、唾液PCR検査のみを取り扱う施設が拡大する可能性があるとしている。
また同日、国立感染症研究所は「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」および「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」を改訂。唾液検体の採取時は、滅菌容器に1~2mL程度の唾液を患者に自己採取させるとしており、唾液1~2mLの採取に要する時間の目安は5~10分としている。検体採取を行う医療従事者は、サージカルマスクと手袋を装着すればよい。鼻咽頭ぬぐい液を採取する場合よりも医療従事者の感染リスクが低くなり、厳重な感染防御を行わなくてもよいことから、感染防護具や人材を確保する負担が軽減できることが期待される。
今後、鼻咽頭ぬぐい液を用いたPCR検査用として既に承認されている検査試薬キットのほか、島津製作所やタカラバイオなどのPCR検査試薬キットで、唾液を検体としたPCR検査も可能となる。また、大手検査会社のSRLは、唾液によるPCR検査の受託を開始した(外部リンク)。