“くちばしフェイスシールド”「これなら歌える!」音大出身者が考案
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新型コロナウイルスは、クラシック音楽業界にも大きな変化をもたらしています。 名古屋市内の音楽教室や声楽の団体は、レッスンを行うにあたり、あの手この手で感染対策をしています。 そこには、演奏活動を再開したいという音楽家の熱い思いがありました。
名古屋市東区にある音楽教室「ニューアムステルダム音楽院」。 ピアノやバイオリン、チェロなど複数のコースがあり、未就学児から高齢者まで幅広い年齢層の人が通っています。 「今チェロのレッスンが行われています。先生と生徒の間には飛沫を防ぐシートがかけられています」(記者)
対面レッスン休止に「どうしたら学びを止めないか考えた」
ニューアムステルダム音楽院は、愛知県の休業要請により、4月中旬から1カ月以上、対面でのレッスンを休止し、オンラインに切り替えるなどしました。 「オンラインレッスンは初めてでした。受けたこともないし、したこともなかったです。試行錯誤でどうしたら学びを止めないかを念頭において実施しました」(ニューアムステルダム音楽院 岩田彩子さん) 6月1日に対面でのレッスンを再開したものの、こまめに消毒や換気をするなど、これまでと同じとはいかないといいます。 「グループレッスンは休みにして、個人レッスンに切り替えています。通常だとレッスンは詰まっていて、前の人が終わったらすぐ次の人という風にしていますが、今は入れ替えの時間を15分くらいとって、換気と清掃に努めています」(岩田さん) 「感染を予防するためには必要なので、ありがたいなと思っています。実際に先生の音が聞けるし、一緒に弾いてくれるので対面の方がいいと思います」(レッスンに通う中学1年生)
損害額は65億円以上 苦境のクラシック音楽業界
ただ、クラシック音楽業界は、演奏会や発表会が軒並み中止されるなど、厳しい現実に直面しています。 「私の生徒も部活やオーケストラに所属しているが、全部コンサートがなくなり、モチベーションが保てない子がたくさんいて、もし今弾くことをやめたら、文化が続いていく力がなくっなてしまうのではないかと心配です」(岩田さん) 日本クラシック音楽事業協会によると、新型コロナウイルスの影響で少なくとも全国で2600件以上の公演が中止や延期に。 損害額は、65億円を超えています。 「演奏する機会がないということは、演奏家にとって苦しいこと。子どもたちは半年、1年かけてその日を目指している。行政含め、金銭的な援助だけではなく、活動や発表の場、未来につながる場を作ってもらえたらうれしいです」(岩田さん)
オペラ歌手育成の現場では
名古屋市瑞穂区にある声楽の団体「名古屋二期会」。 名古屋二期会は、音楽大学の卒業生らを対象としてオペラ歌手を育成する活動を続けています。
マスクつけて歌ってみたが…「苦しい」
ただ、歌って演じるオペラ。 飛沫をどう防ぐか、講師らは連日、頭を悩ませたといいます。 「マスクで歌ってみたが、とてもじゃないけど苦しくて歌えなかった。一般的なフェースシールドでも歌ってみたが、自分の声が跳ね返ってきて、頭にガンガン響いてしまい歌えず、どうしたらいいかなと思っていました」(名古屋二期会 天野久美さん)
音大出身者に相談「気持ちわかった」
そこで、舞台小道具などを製作する「アトリエゆえ」に相談しました。 「私も音楽大学で声楽をやっていたので、歌うのに困っているのはよくわかったので、自分でも何が良いだろうと考えました」(アトリエゆえ 礒田有香さん)
“くちばし型シールド”が誕生!
試行錯誤の末、1週間あまりで完成したのが「歌えるフェイスシールド」です。 くちばしのように前に突き出た部分が、呼吸と表情の確保を可能にし、シールドから首元に垂れ下がるガーゼが飛沫を防ぐことに一役かっています。 「歌は、口の前の空間が大きくないと呼吸や表情にも問題がありますし、口の周りの空間を立てることで空間を確保して、歌になるべく支障がないようにという形を考えました」(礒田さん)
音楽家のためを思いつくられた、フェースシールド。評判も上々です。 「口の動きが見えて、どういう口の形で発語しているかが見えるのと、飛沫がシールドでも、喉元のガーゼでもキャッチしてもらえるので、たくさん拡散はしないと思います」(名古屋二期会 天野久美さん) 受講生からも… 「呼吸を感じ、表情や口の動きを見ることが、オペラの、音楽の“色”を付けることに必要なので、助かります」 「オペラはアンサンブル(重唱)なので、みんなと合わせて歌うことが大事なので練習できて良かったと思います」 音楽家たちは、苦境に立たされながらも、観客の前で演奏できる日を心待ちにし、前に進んでいます。
この「歌えるフェイスシールド」は、全国各地の音楽大学や合唱団の関係者などから注文や問い合わせが殺到しているということです。 アトリエゆえの礒田さんは、当初1人でつくっていたため、1日あたり数個しかつくられなかったということですが、今は他の舞台関係者の方の協力も得て、20個ほどつくれるようになったということです。 問い合わせは、フェイスブックで「アトリエゆえ」もしくは「歌えるフェイスシールド」で検索しメッセージを送ってほしいということです。 (6月23日15:40~放送『アップ!』より)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c303be3ce5d202fef8feebe5534b4500dad227fd?page=2