何度も、同じことを、あちらこちらで書いておりますが、
コロナ禍の世界が熱望する「日本製」 揺るがぬ信頼を日本は自覚せよ
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<インバウンド消費が見込めない今、国内の製造業を見直してみるのはどうだろう>
埼玉の工場で製造される人工呼吸器 Issei Kato-REUTERS
ヨーロッパとアメリカに新型コロナウイルス感染が広がった2月末から、私の元には、海外在住の友人知人やそのまた友人から頻繁に連絡が来るようになった。皆、同じことを私に訊いてきた。「マスクはない?」「防護服はない?」「体温計はない?」。そして同じことを付け加える。「日本製で、ね」【石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)】 【動画】ギター人気復活を導く「スーパークール」な和製ギター ヨーロッパとアメリカに新型コロナウイルス感染が広がった2月末から、私の元には、海外在住の友人知人やそのまた友人から頻繁に連絡が来るようになった。皆、同じことを私に訊いてきた。「マスクはない?」「防護服はない?」「体温計はない?」。そして同じことを付け加える。「日本製で、ね」 私も最初の頃はツテを頼っていろいろと調べてみたが、今どき日本製なんて売っていない。日本で流通するマスクの7割は中国製だし、防護服も輸入品がほとんど。体温計も皆、日本の有名メーカーの物を欲しがるが、海外の人が欲しがる非接触型は日本ではメジャーでないし、そもそも一般人には手に入らないくらい需要が逼迫している。 そう答えると、皆がっかりして同じことを言う。「日本ならどんどん製造できると思ってたよ。いま必要なものがすぐ作れるのが日本だったでしょ。どうしちゃったの、日本?」 しばらく前から、利益率の低いものや単純な構造のものは人件費が安い中国や東南アジアで製造して当たり前、そうしないと利益が出ない──が日本人の認識だ。しかし、海外ではいまだに日本製への信頼が厚いことを今回の件で目の当たりにした。日本製品だけでなく、日本人に対するイメージも高い。クレバーな日本人だから、マスクも防護服もさっさと増産できるでしょ、という感じだ。だから、私が「日本の状況も欧米と同じ。より製造コストの低い国に工場を移してしまっているから、日本国内の製造業は空洞化している。日本も他の国の状況と変わらない」と言うと一様に驚く。日本どうしちゃったの? と。 そして私が「中国製ならあるよ、調達して送ってあげられるよ」と言うと皆、それは必要ない、と言う。中国製なら彼ら彼女らの国でも手に入るが、欠陥品の割合が高く、使い物にならないと問題になっているそうだ。中国は2カ月以上も都市封鎖していたのだから十分な検品もできなかっただろうし、ある程度の不良品は仕方がないのでは? と私は思うが、彼ら彼女らの国ではそれが大きな問題となっており、とにもかくにも日本製が欲しいのだそうだ。 なぜこんなことになってしまったのだろう。今の日本でマスクや防護服、医薬品、医療器具の製造工場に余力があれば、いくら作っても売れるだろう。でも残念ながら、日本国内で必要な分でさえ、十分に調達できているとは言えない状況だ
<逆回転を始めた世界>
これは、とどのつまりは、世界中の消費者がより安価な商品を望み、世界中の企業がより多くの利潤を上げられる製造場所と製造方法を選び、企業の株主がより高い利益を企業に求めた結果である。新型コロナウイルスの感染が始まるまでは、国境線ってまだ意味あるの? 国の役割ってナニ? と思うくらい、グローバル化が進んでいた。安く製造できるのならばどの国でも構わない、利益を上げるのが正義である──という具合に。 資本主義とグローバル化が極まったタイミングで新型コロナウイルスの感染拡大が起き、状況が一変して世界は逆回転を始めた。各国は国境を封鎖し、必需品を国内で囲い込む。医療器具、医薬品はなおさらだ。聞くところによると、この新型コロナウイルスは広く一般にワクチンが行き渡るまで、数回感染が広がることが予測されているという。となると、今後少なくとも数年の間は、多少高価でも信頼できる製品が世界中で必要とされるだろう。 日本人の想像を超えて、世界ではまだまだ日本製品と日本人への信頼が高い。インバウンド消費もしばらく期待できないなか、国内の製造業の力をいま一度見直して、再び世界の市場を制覇するくらいになってほしい。まだ間に合うはずだ。 <本誌2020年6月2日号掲載>
https://news.yahoo.co.jp/articles/4851052802eefd40cc98fee3addfc0de03312757?page=2