新型コロナ下で波に乗るEV原付 バイクなの? 自転車なの? 普及には法の壁も

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注目されるEV原付 「危ない」の声も

グラフィット「GFR-01」走行イメージ。自転車モードのほか電動走行、またペダルを漕いで電動走行を補う「ハイブリッド走行」も可能(画像:glafit)

 2020年5月現在、インターネット通販サイトなどでは、様々な電動バイクが販売されています。折りたたみ式自転車にモーターが付き、自転車としてもバイクとしても乗れる、いわゆるモペットタイプのものから、電動スクーター、電動キックボードなど様々で、それらのほとんどは、ホンダやヤマハ、スズキといった大手バイクメーカーではなく、新興メーカーによるものです。 【動画】乗ってみた!glafitの電動キックボード&電動バイク  こうした電動バイクがいま、新型コロナウイルスの影響下で注目されているようです。そのひとつ、原付として公道も走れるモペットタイプの「GFR-01」を製造販売する和歌山市のグラフィット(glafit)によると、4月に政府の緊急事態宣言が発出されて以降、インターネット経由での注文は、それまでのおよそ2倍に増えたといいます。 「新型コロナの影響により、公共交通機関に抵抗を覚える人が増え、パーソナルな移動手段として受け入れられているのでしょう。『徒歩と公共交通のあいだ』の乗りものがあってもいいかも、という意識が芽生えているのではないかと思います」(グラフィット 鳴海禎造社長)  とはいえ、これらをめぐっては「危ない」といった声もあり、問題も起こっています。大阪府警はモペットタイプの原付について、2017年から1年間で300件以上の警告を利用者に出しているほか(2018年6月15日付「毎日新聞」大阪夕刊)、2019年11月には大阪市内で、公道を走れないタイプのモペットによるひき逃げ事件も発生しました。  こうした乗りものは多くの国で免許なしに乗ることができ、移動手段として普及している一方で、日本においては灯火などの保安基準を満たしたうえで、利用者がナンバー登録をし、かつ原付免許などがなければ、公道を走ることができません。またモペットタイプの場合、自転車として走る場合もヘルメット着用、車道の走行が必須で、そして原付免許も必要です。  このようなルールを外国人などが知らずに使うケースも多いなか、通販サイトで売られている商品は、ごく小さな文字で「公道は走れません」などと注意書きされているケースも多いといいます。

 

 

 

 

 

現行法は曖昧だし不便 法律を変えるには?

左が「GRF-01」、右が新作の電動キックボード「X-SCOOTER LOM」(2020年5月、中島洋平撮影)

 グラフィットは、対面販売でもインターネット経由でも、購入者がナンバー登録したことを確認して初めて、商品を引き渡しているといいます。これまで追えていなかった、中古品を転売した場合のナンバー登録についても、車両情報をスマートフォンと連携させることで、「ハードとソフト両面から違法走行を防ぐ」とのこと。  しかしながら、自転車なのかバイクなのか、曖昧な存在であるゆえに批判も多く、「『法律を変えるのが先だ』という議論も多い」(鳴海社長)といいます。このため、経済産業省の「新技術等実証制度」(いわゆる「規制のサンドボックス制度」)を活用し、その位置付けについて、国とも対話を重ねているそうです。 「製品を現行法の解釈にあてはめればこうなる、という国の方針もわかりますが、消費者目線では、たとえば『電源オフならば自転車と同じ扱いにしてほしい』といった要望もあります。クルマがメインの人にとっては、クルマ以外は邪魔な存在でしょうが、かといって自転車レーンを走ることも、現状ではできません。ユーザーを集めて声を届け、自分たちで基準をつくり、ベストな解を出していきます」(グラフィット 鳴海社長)  また、電動の場合は、ガソリンエンジンの排気量とは別の尺度も必要だといいます。いまの電動原付は、50ccのエンジンをもとに出力の基準が設定されており、それでは坂道や荷物を運んだ場合にパワー不足とのこと。電動の場合は、出力が高くとも、平地でのスピードを適切にコントロールできるそうです。  ちなみに、50ccの原付は日本独自の規格であり、排気ガス規制も厳しくなるなか、大手バイクメーカーはそのラインアップを徐々に減らし、二輪免許が必要な原付2種(50cc以上125cc以下)を増やしています。 「このまま新車が自然消滅する可能性もある原付は、国にとっては、いまから法改正してもしょうがない分野かもしれません。法律を変えるには『なぜそれを議論するのか』という理由が必要です」(グラフィット 鳴海社長)  そのためにもユーザーを増やす必要があると、鳴海社長は話します。

乗りものニュース編集部

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/37a90d8b5eba8bd14686801c6e075b35e29e69f8?page=2