コロナ明けのカフェ業界、「スターバックスの一人勝ち」と言えるワケ

5/21(木) 8:01配信

現代ビジネス

 

 

待ち望まれた再開

 コーヒーチェーン大手の「スターバックス」が、今月19日から臨時休業していた約1200店舗のうち、約850店舗の営業を約1ヵ月ぶりに再開。待ち望んでいた“スタバファン”たちからは喜びの声があがっている。

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 同社では、緊急事態宣言の続く特定警戒都道府県の店舗については、19時までの短縮営業、持ち帰り(ドライブスルー含む)のみの対応とし、それ以外のエリアの店舗でも短縮営業を行い、座席の間隔を離すなどして、安全に店内利用できる環境を整えているという。

 39県において緊急事態宣言が解除されたことで、スターバックスに限らず、外食チェーンは俄かに営業再開へ向かいつつある。しかし一方で、自粛ムードは継続し、専門家会議では「新しい生活様式」が提言され、従来の飲食店自体の見直しも迫られているのも事実だ。

 コロナショック以前、カフェチェーンに訪れることが生活の一部になっていた人も多かったはずだ。ここ最近こそ、コンビニのコーヒーが勢力を伸ばしていたものの、それでも依然としてカフェチェーンには根強いファンたちがいた。

 居酒屋やバーなど「夜」に勝負をかける業態の厳しさは容易に想像できる。では、「朝」や「昼」に勝負をかけるカフェ業態はアフターコロナの世界でどうなっていくのだろうか。

 筆者の予測では、コロナの影響は大きいものの、おそらく「スターバックス一人勝ち」の状態になると考えている。なぜそうなるのか。まず、注目したいのが、コロナ対応の初動が他社と比べて非常に早かったことだ。

 

 

 

 

 

「初動の早さ」で勝負はついていた

 スターバックスは、3月上旬の時点ですでに「初期コロナ対策」を発表。マイマグの利用停止、カトラリーを使い捨てのものに変更、マスク着用徹底、手洗いの頻度など衛生の徹底を打ち出した。

 それに倣う形で他社も遅れながら対応を始めた頃、緊急事態宣言に突入。ここではスターバックスが4月9日から臨時休業を決定したことを始め、各社共すぐに対応策を発表しているが、いずれにしてもコロナ対応のスピード感は他社を圧倒していたと言える。

 他社の初動が遅れた背景には様々な考えを読み取ることができる。生活インフラとしてのカフェとして営業を続けたい、雇用の維持に努めたい、長期戦を覚悟した中で、少しでも売り上げを確保したい、といったところだろう。

 しかし、スターバックスはコロナ感染拡大防止、来店客と従業員の安全確保を優先したことになる。今回のコロナ対応の早さは、間違いなくスターバックスの従業員満足度、社会的なブランドロイヤリティーの更なる向上に繋がったはずだ。

 こうした迅速な経営判断を実現できたのは、ひとえにスターバックスの直営店比率の高さも要因だろう。「コメダ珈琲」や「プロント」といったFC主体のカフェは言うに及ばず、直営店主体の「タリーズコーヒー」も比率はおよそ70%に対し、スターバックスの直営店比率は90%以上だ。

 もちろんFC主体の場合、本体のダメージを直営店までで抑えられるメリットはある。しかし、今回のような想定外の事態が起きた場合はどうか。スターバックスのような直営店主体の場合、経営方針・営業方針を一貫して実践できたが、FC主体のチェーンは、臨時休業にするか営業短縮にするかなどの経営判断に差が生まれ、結果として、対応に時間を要してしまったというわけだ

 

 

 

 

 

 

 

テイクアウトでは敵なしか

 今回のコロナで改めて従業員満足度・ブランドロイヤリティを向上させたスターバックスだが、業態に目を向けても、カフェ業界で「一人勝ち」になる要因は数多くある。

 まず第一に、テイクアウトに強いという点だ。

 ご存知の通り、スターバックスでは店舗が用意する使い捨てカップではなく、マイボトルやタンブラーにドリンクを入れてもらうことができる(現在、持参したタンブラーでのドリンク提供を一時休止)。その際、ドリンクも割引となることから、元々テイクアウト比率は非常に高かった。

 加えてスターバックス自身も、「コミューターマグクーポン」と呼ばれるドリンク券の付いたオリジナルのタンブラーを販売。季節限定や海外限定など新作を次々と発表し、消費を喚起するなど、他社以上にテイクアウトに注力していた。飲食業界全体の主流がテイクアウトへ移行しても十分、対応できるだろう。

 また、スターバックスの店内レイアウトも強みの一つだ。家でも職場でもない「サードプレイス」を提案する同社だけあって、店舗の多くはゆったりとした広い空間で、座席間隔もすでにある程度余裕を持たせていたことから、ソーシャルディスタンスの確保はけっして難しくない。

 ちなみに、コロナから話は若干逸れるが、改正健康増進法に伴って、これまで喫煙・分煙としていたカフェや喫茶店が禁煙などの対応に追われたが、その点、スターバックスは元より店内禁煙を貫いていた。喫煙客離れのリスクも持たないことは、少なからず有利に働くだろう。

 

 

 

 

 

 

マックやケンタッキーとの共通点

 そして、カフェ業態では珍しく、スターバックスがロードサイド立地でのドライブスルー対応店舗を有する点も注目したい。

 外出自粛宣言の間、宅配やデリバリーサービスに並び、「3密」を避けられるドライブスルーは再評価され、利用客の急増につながった。中でもドライブスルーの恩恵を受けたのは、業態は違うが、マクドナルドやケンタッキーなどのファストフードチェーンだろう。

 国内外問わず、両社のドライブスルー店舗では車の行列ができるほどだ。実際、4月の全店売上高は前年同月比で、マクドナルドが6.7%増、ケンタッキーが20.6%増と驚きの数字を達成している。スターバックスも、これに続く形で更に勢いづくことは容易に想像できる。

 やはり、スターバックスはこの苦難からナチュラルに営業に戻れることが予測される。また、事前注文から店舗受け取りできる「アプリ注文」など、次なる準備も進んでいるという。前述の通り、直営主流のため、休業ダメージは大きいものの、これを乗り切った後は強いはずだ。

 今のところ、今回のコロナショックによる「倒産」「身売り」などは大手カフェチェーンには起きる様子はない。その部分ではこれからの時代への変化・順応できる業態へのトライアンドエラーを恐れず、実行に移すことがスターバックス含め各社に期待されるところだ。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200521-00072712-gendaibiz-bus_all&p=2

 

 

永田 雅乙(フードビジネスコンサルタント)