生き物好きが高じて… ヤギのため移住した25歳「鳥取のハイジ」

4/18(土) 13:00配信

産経新聞

 

 

 中国地方最高峰・大山(だいせん)のふもとの鳥取県伯耆(ほうき)町に、ヤギ49頭を飼育する牧場がある。営むのは、大山の美しさに魅了されて2年前に移住してきた女性。ヤギを通じて地域住民と交流を深めている。女性は「将来的にはヤギの乳や肉を販売し、その魅力を多くの人に伝えたい」と話す。

【写真】「鳥取のハイジ」と「ヨーゼフ」も

 ■“ヨーゼフ”もいた

 女性は東京都江戸川区出身の竹川奈緒さん(25)。静岡、京都で働いた後、平成30年に伯耆町添谷にIターンし、牧場「やぎのいえ」を経営する。

 牧場では、体重が50キロを超える巨大な犬が出迎えてくれる。人気アニメ「アルプスの少女ハイジ」に登場する「ヨーゼフ」と同じセント・バーナードだ。飼い主が飼えなくなり、竹川さんが引き取った。

 竹川さんは「『ヨーゼフ』だとハイジを意識していると思われるので名前は『ティート』です」と笑う。

 移住とともにヤギ3頭の飼育を始めた。繁殖などで増え、現在は49頭に。そのほかにも、保護された2匹の犬、トカゲ1匹も飼っている。 

 壊される予定だった木造2階建ての空き家をリフォーム。小屋でヤギを飼育し、イベントで「ヤギのふれあい体験」を行っている。

 ■生き物好きが高じて

 ところで、どうして鳥取に移住したのだろうか。

 竹川さんは子供のころから生き物が好きだった。ポケットモンスターなどのアニメの影響で中学、高校、専門学校時代は自宅でヘビやトカゲを飼育。専門学校で世話をする動物にヤギがいて、その魅力にひかれた。

 「甘えてくる様子や草を食べるしぐさがかわいい。身近な動物のようで身近ではない」

 その後、静岡県の動物園や京都府の牧場で飼育員を経験したが、「自分のヤギを育て、それを仕事にしたい」という思いが頭にあったという。

 鳥取県への移住は、知人に誘われ、大山に通うようになったのがきっかけ。「景色がきれいで水もおいしい。この環境で育てればヤギもおいしい乳を出してくれるのではないか」

 大山周辺の雪解けを待って移住した。

 ■ヤギの世話が中心

 午前6時ごろ起床。朝と夕方にエサと水を与えるほか、小屋の清掃も小まめに行う。スキンシップを兼ねてブラッシングしたり、爪を切ったりもする。

 大変なのは、ヤギのエサの確保。1日30~40キロが必要で、当初は耕作放棄地の草を与えていたが、足りなくなり、専門店から乾牧草を購入している。 

 現在は、自宅に整備した加工場でヤギの乳やヤギ肉の販売を準備している。ヤギ乳は人の母乳に近いといわれ、試飲した人からは「懐かしい味がする」と評判だという。

 ■地域住民と交流

 移住した伯耆町添谷は高齢化率が50%を超え、小学校の分校も廃校した。危機感を抱いた集落は「添谷を元気にしょう会」を立ち上げ、地域おこしに取り組む。

 「集落の人たちが温かく受け入れてくれた」と竹川さん。集落の祭りや草刈りにも参加し、住民と交流を深めてきた。

 竹川さんはヤギの飼育相談やヤギの命名などのイベントを2カ月に1回、開催。牧場には、親しくなった小学生らが訪れ、ヤギと触れ合っている。

 添谷を元気にしょう会の本庄純一会長(62)は「若い人の発想が地域の刺激になっている」と感謝する。

 4月18、19の両日に旧分校でヤギとふれあうイベント「GOATフェスティバル」を計画していたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため中止となった。竹川さんは「残念だが、終息したらもう一度企画したい」と誓う。

 「将来的にはキッチンカーでヤギ乳やヤギ肉のカレーを販売したい。ヤギの魅力を伝え、地域おこしに役立つことができれば」と話している

 

 

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