恐怖の「アフリカ豚熱」が、新型コロナの陰で日本に上陸する可能性

3/14(土) 6:01配信

現代ビジネス

 

 

「豚熱」は国境を超える

 「殺処分をして、ウイルスをここで食い止めなければなりません。本当に申し訳ない……」

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 '19年2月、愛知県田原市にある瓜生陽一氏(53歳)の養豚場を訪れた県職員は、涙声でこう告げた。瓜生氏が振り返る。

 「殺処分は、県職員と獣医、自衛隊の数百人態勢で、8時間3交代制で行われました。3700頭を処分する作業に追われ、悲しいという感情すら失ってしまいました」

 瓜生氏が養豚場を再開したのは7ヵ月が経った昨年9月のことだった。36頭の雌豚を搬入、順調にいけば今年9月には初出荷ができるという。

 '18年に日本で26年ぶりに確認された豚熱(豚コレラ)は、岐阜県から愛知県、三重県などに広がり、埼玉県にまで拡大した。その後、殺処分とワクチンの接種によって勢いは弱まり、恐怖は去ったかに見えた。

 だが、養豚農家は警戒を解いてはいない。今回の豚熱よりも強力な「アフリカ豚熱」が、国境を超えて日本にやって来る可能性があるからだ。

 「アフリカ豚熱の致死率はほぼ100%で、有効なワクチンもありません。しかもベトナムや中国で作られた違法ワクチンも出回っており、より発見や制圧が困難な新型ウイルスに変異する可能性もあります」(宮崎大学農学部獣医学科教授・末吉益雄氏)

 アフリカ豚熱は現在、中国、韓国、ベトナム、インドネシアなどで発生している。中国では、'18年8月の発見からわずか1年で全土に感染が拡大し、計90万頭の豚が殺処分された。もし日本国内で感染が確認されれば、最大で半径3キロ以内の豚を殺処分すると決められている。

 では、海を隔てた外国のアフリカ豚熱が、いったいどうやって日本にやってくるのか。

 「人間が、ウイルスがついたソーセージや餃子などを、空路や船で持ち込んでしまうのです」(北海道大学大学院獣医学研究院教授・迫田義博氏)

 21世紀になり、人やモノの移動は爆発的に増加した。行き来が激しくなればなるほど、病気が国境を超えて広がる危険性も高くなっていく。実は、アフリカ豚熱がすでに国内に入ってきている可能性は高い。

 「日本の動物検疫所の検査では、旅行者の手荷物のソーセージなど豚肉加工品から、アフリカ豚熱ウイルスの陽性反応が出た事例がここ1年半で87件あります。アフリカ豚熱ウイルスが、運よくまだ日本の豚やイノシシの口に入っていないだけだと考えたほうがいい」(前出・末吉氏)

 東京五輪で日本を訪れる人が増えれば、強力なウイルスが国境を超えてくる可能性もますます高まる。豚が全滅する危機は、すぐそこまで迫っている。

 

 

10年後の日本に起きること

 〈早ければ2030年には、平均気温が1.5℃上昇し、自然災害のリスクが高まる〉

 一昨年、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表した特別報告書は、世界に衝撃を与えた。

 21世紀に入ってから「公害」の定義は変わった。いまや異常気象とパンデミックは、規模も被害も桁違いだ。ではこのまま何もせずに10年経ったとき、地球と日本に何が起きるのか。具体的に見ていこう。

 東京大学名誉教授の山本良一氏は、IPCCの予測が的中したら「世界は『温暖化地獄』に突入する」と断言する。

 「気温の上昇とともに、海水面は20cm近く上がります。そうなると、海抜が低い国の国民は住む場所を失い、かつてない規模で移住が行われます。大部分が海抜9m以下のバングラデシュやモルディブでは、2000万人以上が故郷を追われることとなります」

 地球温暖化によって引き起こされる被害はそれだけではない。山本氏が続けて警告する。

 「干ばつや降雨量の増大による洪水が、同時多発的に世界で発生します。これらは食糧不足や飢餓をもたらし、移民の大量発生と武力紛争の原因となるでしょう」

 人類が地球の環境を顧みずに続けてきた活動は、戦争という最悪の「公害」を生み出すこととなる。

 パンデミックについても、新たなフェーズに突入する。一年を通してインフルエンザが流行してしまうのだ。

 「インフルエンザは、寒い時期に感染が広がることで知られています。そのため北半球では10月から3月に、南半球では4月から9月に猛威を振るっています。

 グローバル化がさらに進行すれば、移民や旅行者が世界規模で行き来することになる。そうなれば、季節に関係なくインフルエンザにかかる人が続出するでしょう」(医師で医療ガバナンス研究所理事長上昌広氏)

 では、10年後の日本では何が起こるのか。海水面の上昇は、この島国に甚大な影響を及ぼす。危惧されているのは、日本最南端の島・沖ノ鳥島の水没だ。

 「沖ノ鳥島が水没することは、領土や領海が消失してしまうことを意味する。様々な問題が起きるでしょう」(前出・山本氏)

 同じような事態に陥った中国が、強硬に小島開発や周辺海域において覇権的な活動をする可能性もある。その場合、武力衝突さえ起こりうる。

 温暖化によって、すでに冬がなくなりつつある日本では、これまで確認されていなかった感染症が多発することになる。中部大学教授の佐藤純氏はこう語る。

 「気温が上がり、温帯より亜熱帯に近い気候になった日本では、東南アジアに生息するようなウイルスが上陸します。免疫のない日本人のあいだで大流行するはずです」

 たとえば、国立感染症研究所の研究では、温暖化の影響でデング熱を媒介するヤブ蚊の分布が年々北上していることがわかっている。

 実際、'14年には約70年ぶりにデング熱の国内感染が確認された。決してありえない話ではない。10年後を待たずして、パンデミックが国内を席巻する。これが未来の日本の姿だ。

 最後に、哲学が専門の京都大学特定准教授・篠原雅武氏がこう警告する。

 「『人間は万物の尺度である』というギリシャ哲学の考え方に従って、これまで人間は自然を管理下に置いていました。しかし、こうした見方は改めなければいけません。人間と一緒に共存する存在として、地球を見る必要がある。哲学の世界では、すでに思考の転換が行われています」

 限りある資源はやがて枯渇する。人類は地球という資源を使い果たしてしまったのかもしれない。

 「週刊現代」2020年2月22・29日号より

週刊現代(講談社)

 

 

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