ブラックマンデー型の大暴落の可能性がある
3/9(月) 10:01配信
新型コロナウイルスに関連して、前回の記事「『新型コロナ』」は『バブル大崩壊』」の『序曲』なのか」で、ジョンズ・ホプキンス大学エリック・トナー博士のシミュレーションを紹介してから約1カ月が経過した。
拡大のスピードはほぼ記事の予想通りだが、今のところ全体の致命率はそこまでは行っていない。同記事で紹介した、アメリカのウイルス学者の権威であるスティーブン・ハットフィル教授によれば、ウイルスは発生地から移動すると毒性が変化することがあり、アメリカで発生したスペイン風邪は、移動した欧州で致命率が上がった。だが中国発のウイルスは、過去は移動すると致命率が下がるケースが多いという。
ならば今回もそのケースであることを願いたいが、冒頭のシミュレーションの6500万人の死者予想は、経済を含めた2次災害への警告である。現状、アメリカですら、処方箋なしで売られる簡単な薬の約80%を、中国からの輸入に頼っているとされる。ここから先、もし病院が新型コロナ患者で埋め尽くされ、他の医療に支障が出るような事態になれば、新型コロナの致命率に関係なく、2次災害は深刻になるだろう。
■各国の緊急時の優先順位づけが問われる
ではここから先は何を優先させるか、各国の思惑が分かれてくることが予想される。日本には何とか東京五輪を開催してほしいが、アメリカではドナルド・トランプ大統領は、このピンチをチャンスに変えるべく、自分を、第2次世界大戦時に国民を鼓舞しながらドイツのアドルフ・ヒトラーに立ち向かった英国のウインストン・チャーチルに見立てた「チャーチリアン戦略」を始めた。
いずれにしても、平和が前提になっている国家は、医療の概念を超え、人が死にかかった場合と、国家が死にかかる場合、民主主義のシステムの中で、何をどう優先させるかの「異次元のトリアージ(緊急時の優先順位づけ)」も問われるだろう。
個人的には、どこかの段階で、一定の流行とそれに伴うさまざまな不利益を受け入れ、経済活動を平常に戻す政治判断があることを予想する。皮肉にも、今それを強引にやろうしているのが、非民主国家で、新型コロナの発信源の中国だ。中国の経済活動は空気の汚れで判断できるが、衛星写真で、大気汚染復活が確認された中国株を早速ウォール街が格上げしたことは、一つの考え方としては正しいのかもしれない(モルガン・スタンレーの2月末のレポート)。
そんな中、アメリカでは新型コロナが大きく情勢を変えたものが二つある。
もちろん、一つは金融市場だ。もう一つは民主党の大統領予備選挙である。ここでは金融市場ではなく、敢えて先にスーパーチューズデー(3月3日)が終わった政治情勢を解説しよう。強引な弾劾裁判が逆にトランプ大統領の支持率を引き上げてしまい、意気消沈気味だった民主党では、新型コロナによる混乱が、11月に神風になるかもしれないという機運が生まれている。結果、本来ならもう少し先まで乱立状態が続いたはずの予備選挙が、ジョー・バイデン候補とバーニー・サンダース候補の2強に集約された。
今の勢いはバイデン氏である。直近キューバへの親近感を攻撃されたサンダース氏は、最重要州の一つのフロリダ州の予備選挙(3月17日)でバイデン氏に大惨敗をするのは決定的だ。よってまず3月10日のミシガン州で圧勝し、なんとか大統領選本選で最重要州になる4月28日のペンシルバ二ア州まで勝負を持ち越せるかが、鍵になっている。
■バイデン候補有利に働いた2つの理由
そしてスーパーチューズデーが、ここまでバイデン氏に有利に働いた理由は二つある。一つはスーパーチューズデーが、民主党以外の人も参加できるオープンプライマリーの州の予備選だったことだ。
バイデン氏の中道路線を評価するバージニアではそれが最も顕著だったが、テキサス州やマサチューセッツ州でも、これまで共和党候補を支持してきたが、やはりトランプ大統領は嫌いだという「ネバートランプ」の残党勢力が、「ネバーサンダース」として、わざわざ民主党の予備選に来てバイデン氏に投票したことが確認されている。一方、サンダースを支持する若者は、事前のサンダース氏の有利な雰囲気に油断したのか、予備選の投票にはさほど行かなかった、とされる。
こうなると、サンダース氏はミシガン州でサンダース支持の中心にいる映画監督のマイケル・ムーア氏などに期待するしかないが、バイデン氏躍進のもう一つの要因は、バラク・オバマ前大統領の存在である。今の民主党でオバマ氏のレガシー(政治的遺産)に逆らえる人はいない。
オバマ氏本人はまだ明確な支持表明をしていないが、サウスカロライナ州の予備選を前に風前の灯火だったバイデン氏が、オバマ政権の副大統領だった威光に頼ったことは間違いない。その前後で、オバマ元大統領の側近で黒人女性のスーザン・ライス前国家安全保障担当補佐官はバイデン氏支持を表明。続いて同州の黒人有力議員のジェームズ・クライバーン下院議員もバイデン氏支持を表明。結果、サウスカロライナ州は予想以上のバイデン氏の圧勝に終わった。
ここを起点に「オバマの再来」を掲げたピート・ブティジェッジ候補は予備選を撤退。またテキサスではまだ影響力を持つベト・オルーク前下院議員もバイデン氏の応援に駆け付けた。
だが、バイデン氏本人は別人に生まれ変わったわけではない。また、これから共和党上院が始めるとされる息子のハンター・バイデン氏のウクライナ疑惑の証人喚問で、どんな悪材料が飛び出すかわからない。何より、人口動態や人種構造で、20年後のアメリカを映すとされたネバタ州で圧勝したのはサンダース氏である。個人的には、この2人に代表される民主党の若いエリートは、党本部のバイデン氏がトランプ氏に勝つかもしれないという思惑を信じたというより、次のキングメーカーのオバマ氏へ忖度を選んだと考えている。
■実は「非民主的」な民主党、「新しい仕組み」生み出す共和党
しかし「未来の民主党のコア支持層」になるべき若者を見捨てるリスクは大きい。何よりオバマ氏本人の若い時は、今のバイデン氏より今のサンダース氏に近かった。今のオバマ氏の腹の内は見えないが、もし民主党の候補選びが7月の党大会にずれ込んだ場合、1回目の投票で過半数に達しない場合は党エリートのスーパーデリゲート(特別代議員)が候補者を決めることになっている。
万が一、高齢のバイデン氏やサンダース氏が新型コロナウイルスに侵されるような場合、スーパーデリゲートがトランプ大統領に勝てそうな候補者を予備選に関係なく、白紙の状態から選ぶことになる。その時に声がかかる可能性があるとされるのは、オバマ前大統領夫人のミシェル氏と、いまだにヒラリー・クリントン氏である。
このように、民主党では、選挙人獲得は投票率に比例した一見民主的なシステムだが、最後はエリートが決める体質は非民主的である。一方、共和党は、予備選はほとんどの州が勝者総取りである。スーパーデリゲートの存在も小さい。これは一見乱暴な決め方に思えるが、民主党では自分達は常に正しいと信じるエリートが、新しい時代でも決して自分を損切りしないのに対し、共和党は、時代のニーズに合わせ、トランプ大統領のような、それまでの常識とは違う異質なリーダーを生み出す仕組みを持っている。
大統領選の本選挙がほとんどの州で共和党と同じ勝者総取りなのは、共和制を維持するうえで建国の父が残した知恵だが、今この制度を変えようとして民主党は、トランプ大統領はアメリカの歴史上のイレギュラーな汚点だと考えていて、自分たちの政策が生んだ産物だとは絶対に認めない。それが、サンダース氏のもたらす変化を認めず、旧来型のバイデン氏で一本化を図る理由である。
しかし、そのエリートの思惑を若者は受け入れるだろうか。確かにクリントン時代の民主党が中心になって作り上げたグローバリゼーションは、われわれの生活水準を向上させた。だが、過度なグローバリズムは、格差をよび、その反作用として取り残された庶民感情は、政治をナショナリズムへ、経済をソーシャリズムの方向へ向かわせた。
そのトレンドにおののいた既得権益世代は、前出のように「ネバーサンダース」としてサンダース氏阻止に団結しているわけだが、アメリカはリーマンショックで混乱をもたらした張本人の金融を真っ先に救済し、その怒りの延長で生まれたトランプ政権も、米中貿易で影響が出た農家には、すぐに補助金を出す社会主義政策を堂々とやっている。
つまり、今のアメリカには、サンダース氏を社会主義者とののしることができる矜持も信条も実は存在していない。若者は、サンダース氏の掲げる学費ローンの免除や国民皆保険のコストの50兆ドルは、既得権益世代が享受するはずの、まだ担保されていない年金や老人医療のコスト210兆ドルと同等の権利と考えており、そのツールとしてMMT(現代貨幣理論)なる新しいブードゥー教を信じているのである。
■FEDに逆らうことがチャンスになる可能性
さて、ここからはもう一つの新型コロナで情勢が激変したマーケットへ話を移そう。まずは注目すべきはFEDの50BP(0.5%)の緊急利下げが株価には効果がなかったことだ。
これは、これまで市場の「禁じ手」とされたFEDに逆らうことが、もしかしたらチャンスになる可能性を秘める。そして乱高下する実際の値動きの60%は、人間ではなく何らかのシステムの判断によるものだが、さらにその内訳では、人間がコードを書いたトレンドフォローのアルゴリズムが6~7割で、残りの3割前後が、AIが自分で学び自分で判断をしていく自己ラーニング型になっている(FT)という
レポ金利(金融機関が国債などを担保に、短期金融市場で資金を貸し借りする際の金利)が急騰した昨年9月の調整局面では、自己学習するAIが、旧来のシステムトレードをパフォーマンスで上回ったことが判っているが、今後はその傾向は増幅していき、恐らく、人間が自分の願望でバリエーションを変える今の金融ユーフォリアに引導を渡すのは、この「感情のない自己ラーニングのAI」になるだろう。
ではそのような市場でFEDは何ができるのか。前回の記事で「FEDの持つ金利政策の弾丸は残り少ない」とした。50BPの緊急利下げの後、次のFOMC(米公開市場委員会、17~18日)で市場の予想通り追加の50BPの利下げを断行すれば、残された金利は0.5%だ。
■1987年のブラックマンデーには「前兆」があった
そこからは、FEDはバズーカではなくナイフで戦うしかない。ここで言っておきたいのは、1987年のブラックマンデーは、突然起こったわけではないことだ。当時は主役ではなかったナスダック市場は、その1カ月前から下落が始まり、ピークで450をつけた指数は直前に400まで10%を超える下落をしていた。
そしてブラックマンデー当日は、400から320まで一気に20%の大幅下落となったが、個人的には、今回の新型コロナでも、どこかでサーキットブレーカーが発動されるブラックマンデー型の大暴落が起こることを予想している。ただその後いったんは急速に戻るだろう。そのV字のボトムは、FEDの弾が出尽くした絶望感と、その次に起こる非常事態のアクションへの期待感の間になるはずである。
そしてその非常事態のアクションは、FEDがこれまでの枠を超え、日銀のように直接株式(ETF)を買うようにする方法か、政権と歩調を合わせ、財政出動を支えることだろう。
前者はFEDの定款の変更が必要になるはずだが、ベン・バーナンキ氏やジャネット・イエレン氏という歴代のFRB議長は、マイナス金利も考慮した上で、この手法に前向きな発言をしている。
だが個人的には、肝心のジェロームパウエルFRB議長は、マイナス金利や株式購入には消極的で、それよりも財務省の財政拡大をサポートする手法を優先すると考えている。理由は、パウエル氏はアングロサクソンの主導した米英型資本主義に最後までこだわるという単純な思惑である。
そもそも日欧のマイナス金利は、アメリカがいわば「アンカー」(錨)となって金利を維持していることで秩序を保っている。
旧英国連邦であるアングロスフィアの英語圏の中央銀行がマイナス金利を導入していないのは恐らく偶然ではないが、FEDを辞め、アカデミズムの世界に戻ったバーナンキ氏やイエレン氏と比べ、現役のパウエル氏はアメリカを頂点とする秩序への責任がある。もし中央銀行が民間の株を買うようなれば、どうやって社会主義を否定するのか。どうやってサンダース氏のMMTの否定をできるのか。全く整合性がなくなる。
そして、何よりアメリカでマイナス金利を導入すれば、銀行株が低迷するだけでなく、超大国で金利を維持できるのは、恐らく中国だけになる。2008年のリーマンショックでは、原因がアメリカにあったにもかかわらず、結局米ドルは買われた。
だが、今回の新型コロナショックではドルが売られ始めている。だから金が買われているのだが、アメリカが最も警戒すべきは、その先の、「基軸通貨としての特権の維持」だ。国力で米中が逆転するのはまだ先のことだが、ジャブジャブの流動性は残酷に先回りする。アメリカが金利を維持できるかは重要な試金石だろう。
■「長期金利上昇と株の一時的反発」の先に「待つもの」
だからこそ、アメリカは大規模な財政政策を発動するしかない。それはトランプ氏の再選を助ける、中間層向けの大幅減税かもしれない。
いずれにしても、それで長期金利は反発する。長短金利のスプレッドが復活すれば、銀行株を中心に、株は一時的に戻る。だがその先に待っているリスクは、金利が上がることによる、債券市場のバブル崩壊の可能性である。実はそれが「新型コロナショックの本番」の可能性がある。そうなると、今度は別のシナリオが浮かぶ。
第1次世界大戦による欧州の荒廃と、致死率が上がってアメリカ国内に戻ってきたスペイン風邪は、アメリカには約40%の卸売り原材料取引の落ち込みをもたらした。また、賠償金を背負った敗戦国のドイツは、デフレの後、大規模な財政・金融政策でハイパーインフレになった。そしてそれをきっかけに、世界は第2次世界大戦という、人類史上最大の不幸へ突っ込んでいった。
今は当時のような帝国主義の時代ではない。だがそもそも1648年のウエストファリア条約(30年戦争の後に結ばれた国際条約)締結の後、欧州各国で中央銀行が生まれたのは、戦争での財政ファイナンスが誘因となっている。
つまり、もとを正せば中央銀行はナショナリズムの象徴のような存在である。だからこそ、アメリカの単独覇権が完成した1990年代以降は、グローバリズムの体制下で中央銀行は連携してきた。
だが恐らく新型コロナがもたらす混乱は、リーマンショック時のような信用不安よりも先に、現金が不足する事態への対応力だろう。恐らく、そこで普遍的なUBI(最低所得保障)が始まるかもしれない。ならば、どれだけサンダース氏を否定しても、いったんはサンダース氏の時代が始まるということではないのか。次回以降、もし機会があれば、過去の中央銀行の財政ファイナンスと、その結果のバブル崩壊の検証をしたい。
滝澤 伯文 :CBOT会員ストラテジスト
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200309-00335443-toyo-bus_all&p=6
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https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200309-00000174-kyodonews-soci
新型コロナ「長期化の可能性」と専門家会議
3/9(月) 22:27配信
政府の専門家会議のメンバーは、新型コロナウイルスはインフルエンザのように暖かくなると消えるウイルスではなく、対応が「数カ月から半年、年を越えて続くかもしれない」と述べ、長期化するとの見通しを示した。
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新型コロナ 「終息しない」と香港の専門家
3/9(月) 17:41配信
【香港=藤本欣也】
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200309-00000571-san-cn
香港大のウイルス研究の権威、袁国勇(えん・こくゆう)教授は、感染者の総数が10万人を超えた新型コロナウイルスについて「流行が終息することはないだろう」との見方を示した。香港紙が9日報じた。
新型コロナウイルスは感染力が強いとみられている。袁氏によると、北半球では夏になれば同ウイルスの勢力は弱まるが、冬を迎える南半球では活発化する。北半球でも冬になると、南半球から同ウイルスが伝播(でんぱ)するなどして勢力を盛り返す可能性がある。
世界保健機関(WHO)も6日、新型コロナウイルスについて「夏になれば消滅すると考えるのは、誤った期待だ。そのように考える根拠は現時点ではない」と指摘している。
2002年11月に初の症例が報告された重症急性呼吸器症候群(SARS)の場合、感染者数は世界全体で8千人規模にとどまり、WHOが03年7月に終息宣言を出した。