中国の野生動物飼育販売業界の実態、新型コロナウイルス感染拡大で明るみに
3/2(月) 11:39配信
【記者:Michael Standaert】
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は先月、野生動物の取引禁止や食用にする「悪習」の一掃を決めた。中国全土でクジャクやジャコウネコ、ヤマアラシ、ダチョウ、ガン、イノシシなどの野生動物の飼育場2万軒近くが閉鎖されており、これまで不明だったこの業界の規模が明らかになってきている。
新型コロナウイルス感染症「COVID-19」の流行による世界の死者数は3000人、感染者数は8万8400人をそれぞれ超えた。感染源は湖北省武漢の市場で昨年12月上旬に販売された野生動物だと考えられており、当局は1月末、ウイルス拡散を阻止するため、野生動物取引の一時的な禁止を発令。2月上旬には、繁殖用施設の大規模な取り締まりを開始し、現在は野生動物保護法の改正にも動いている。
中国指導部はここ数年、「野生動物の家畜化」が農村開発、エコツーリズム、貧困緩和の鍵であるべきとする考えを推し進めてきた。中国工程院が2017年にまとめた野生動物の飼育販売業の発展に関する報告書は、この事業の規模を5200億元(約8兆円)と見積もっていた。
新型コロナウイルスの感染拡大以前は、野生動物の飼育販売業界の規模はほとんど知られていなかった。認可は主に省や地方自治体レベルの森林管理当局が行っており、これらの機関は、その管理下にある飼育販売業に関する詳しい情報を公開していないからだ。国営の新華社通信は2月17日、中国国家林業・草原局が2005~13年に国レベルで発行した繁殖許可・営業許可はわずか3725件だと報じている。
しかし、新型コロナウイルスの流行以来、中国全土で少なくとも1万9000軒の飼育場が閉鎖されており、これには伝統薬の中心地である吉林省の約4600軒が含まれる。
湖南省瀏陽(りゅうよう)でクジャクの飼育業を営んできたチェン・ホンさんは、1月24日に営業停止処分を受け、補償が受けられるか否かや損失が心配だと話した。
「今はクジャクの販売や輸送が禁止されており、誰もクジャクに近づけてはいけないことになっている。また1日1回、施設を消毒しなくてはいけない」とチェンさんは話す。「今の時期は通常、うちの飼育場は顧客や見学者でにぎわっている」
野生動物の肉や伝統薬に使われる部分のほとんどは、オンラインのプラットフォームで売られるか、新型コロナウイルスの発祥地とされる武漢の生鮮市場のような市場に卸されていた。
「食用の動物やその部位は、食品・健康の検査を受けることになっているが、きちんと実行している売り手はいないと思う」と話すのは、豪グリフス大学の教授で中国における動物保護の専門家でもあるデボラ・ツァオ氏だ。「ほとんどの動物は、こうした健康状態の検査を経ずに売られてきた」
規制の徹底的な見直しや、政府の意識を野生動物の活用から保護へと転換するよう求める声が上がる一方、感染拡大を阻止しようとするあまり、当局が感染症を媒介し得る野生動物の過度な間引きをするのではないかとの懸念もある。
中国生物多様性保護・グリーン発展基金会(CBCGDF)のジンフェン・ゾウ事務局長は「法律を研究する教授の中には、センザンコウやハリネズミ、コウモリ、蛇、一部の昆虫といった、感染症を広める野生動物の『生態系の破壊』を提案する人もいる。法律改正を勧告する前に、立法者は生態系の多様性をもっと学ぶ必要があると我々は考えている。さもないと悲惨なことになる」と注意を促している。 【翻訳編集】AFPBB News
「ガーディアン」とは:
1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。
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