【新型コロナウイルス】なぜイタリアでこれほど感染が広がったのか?──伊メディアが分析
2/27(木) 17:30配信
イタリアではヨーロッパのほかの国に比べて新型コロナウイルスの感染が拡大している。なぜイタリアでだけウイルスが広がっているのか、イタリア・メディアが考察している。
ヨーロッパの中で突出して多い感染者
新型コロナウイルスは、今のところヨーロッパではそれほど猛威を振るっていないように見える。
だが、イタリアはその例外だ。すでに400人以上が感染し、12人が死亡している(2月26日現在)。しかもこの数字は暫定的なもので、事態は刻々と変化し、深刻化している。
それにしても、なぜイタリアでだけこれほど広がってしまったのだろうか? 偶然か、それとも当局が適切な措置を取らかなったためか? イタリアのメディアはそれぞれに分析をおこなっている。
「検査件数が多いために感染者数も増えている」
多くのメディアは2月23日のジュゼッペ・コンテ首相のつぎの発表を取り上げた。
「4000件の検査がすでにおこなわれている」。イタリアは「入念で厳格な検査を実施することを決定した欧州で最初の国だ」「したがって、もし同じくらい厳格な検査をほかの国で実施したら、その国でも数字が増える可能性は排除すべきではない」。コンテ首相はこのように結論し、大きな議論を巻き起こした。
中道左派の日刊紙「ラ・レプッブリカ」は、首相の説明を正当とみなす。なぜなら、「コロナウイルスの感染を確認するためにたとえばフランスでは300件の検査しかおこなわれていないのに対し、イタリアでは3000件の検査がおこなわれているためだ」。「イタリアでの症例が多いのは、イタリアが他国に比べて多くの検査を実施しているからだ」と同紙は断定する。
しかし、この意見に同調するメディアはほとんどない。
イタリアの致命的な間違い
「ラ・レプッブリカ」とは反対の政治的立場をとる右派の日刊紙「イル・ジョルナーレ」は、「フランスのお手本」を称賛している。フランスはイタリアとは逆に、新型コロナウイルスの拡散に歯止めをかけることに成功している。
「フランス政府は、わが国とは反対に、中国からの帰国者全員に検疫を受けさせた。南仏カリー・ル・ルエに武漢から帰国した200人を『隔離した』ことからもわかるように、感染リスクのある地域から入国する人々を受け入れるやり方に計画性があった」と同紙は論じる。
ふだんはフランスに対し批判的な同紙だが、以上のことから「マクロン仏大統領は新型コロナウイルスに完ぺきに対処した」と述べている。
イタリアの多くのメディアによれば、イタリアは致命的な間違いを犯した。それは、中国からのフライトの乗り入れを禁止したことだ。「ラ・レプッブリカ」によれば、この措置は「目を引くものだが、乗り継ぎをしてイタリアに来る乗客がいるので意味がない」。
同紙は続ける。反対に、「フランス、ドイツ、イギリスは世界保健機構(WHO)の指示に従った。航空機の乗り入れは禁止せず、かわりにリスクがあると考えられる人々に検疫を受けさせ、彼らの追跡調査をおこなった」。一方イタリアでは「誰がどうやって中国から来たか、誰にもわからない」。「ラ・レプッブリカ」はイタリア当局の措置は損害が多く「無鉄砲だ」とも述べている。
病院が感染を拡大
コンテ首相は、イタリアで感染拡大の中心地となっているロンバルディア州のコドーニョ市の病院の救急部門の運営を問題視している。
情報サイト「オープン」が説明する通り、「2月20日から21日にかけての夜間に、イタリアで初めての新型コロナウイルス感染者を受け入れたのはこの病院だった」
その場に居合わせた「オープン」の記者によれば、「病院スタッフは最初どのように対処すればいいかわかっていなかった。ほかの外来患者もぞくぞくと来院していて、防護服なしに歩きまわっていた」
ロンバルディア州の地方紙「イル・コリエーレ・デラ・セーラ」はミラノ大学の感染症専門家マッシモ・ガッリにインタビューをおこなった。
ガッリによれば「伝染病が発生すると、病院が感染を大幅に拡大させることがあります。まさにこれが、コドーニョ市で起こったことです。同市では当初、別の病気だと思われていたために、新型コロナウイルスが必要な注意をもって扱われていなかったのです」
イタリアでは感染拡大を防ぐため、ロンバルディア州とベネト州のいくつかの自治体が実質的な封鎖状態となっている。
地続きのヨーロッパでは周辺国も警戒を強めているが、感染拡大が収束する可能性はまったく見えない状況だ。
Beniamino Morante
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200227-00000003-courrier-int&p=2