中国人の日本に対するイメージが新型肺炎で好転、抗日ドラマ放送中止も
2/27(木) 6:01配信
感染が拡大する新型コロナウイルスは、今も多くの人命を奪い続けている。こうした中、日本から中国へのさまざまな支援がインターネット上などで大きな話題となっている。筆者が知る限り、最近の中国でこれほど熱い話題となった日本のニュースはない。中国人の日本に対するイメージはどのように変わったのだろうか。(『東方新報』取材班)
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● 日本の官民が送った 多くの義援金や救援物資
中国で新型コロナウイルスの感染が爆発的に広まった後、一部の国は中国人に対して厳格な入国規制を行った。しかし、日本は比較的寛容な措置を取るとともに、政府から民間に至るまで、多くの人々が中国を支援した。
今や日本は中国の次に感染者が多い国となってしまったが(*)、それでも依然として中国に多くの救援物資を送っている。その量はどれぐらいなのか。
中国駐日本大使館が発表した情報では、2月7日時点で、日本政府や地方自治体が中国に送った緊急物資は、医療用マスク113万2000枚、手袋9万4000セット、防護服6万9000セット、防護ゴーグル7万3000セット、体温計100個、消毒液1.15トンなどだ。
さらに2月16日に日本政府が武漢に飛ばした第5陣のチャーター便には、緊急援助物資として防護ゴーグル5220セット、防護服5000セットなどが積み込まれていた。なお、同チャーター便にはこれ以外にも、東京都と大分市、日本企業3社が提供した防護服と手袋などの物資も積んでいた。
また、日本の企業や民間団体が送った物資(在日の中国系企業や華人華僑からの寄贈品を除く)は、マスク158万5000枚、手袋28万5000セット、防護服8万2000セット、防護ゴーグル1700セット、防護帽1000個、靴カバー1000セット、防護靴30セット、大型CT検査設備1台(約300万元相当)、消毒用品など2400件。さらに義援金は2888万9000元(約4億6000万円)に達した。
日本からの支援は物だけではない。大阪の道頓堀商店街は通りの至る所に「武漢ガンバレ」の看板を掲げるなど、物心両面での支援は今も続いているのだ
日中戦争を扱う予定の 人気ドラマが打ち切り
こうした日本からの支援は、多くの中国人から称賛を浴びている。ネット上の書き込みの全てを確認することはできないが、筆者が中国語のSNSで目にした中国人ユーザーのコメントの大部分は、日本からの善意に好意的なものだ。
例えば、ある人は「一部の国は、中国が困難な状況であるにもかかわらず中国を攻撃した。一部の国は口先だけで『中国頑張れ』と言ったが、日本は実際の行動で中国を助けてくれた」と書き込んだ。
また別の人は「今回の日本には本当に心を動かされた」と日本への印象が大きく変わったことをコメントしていた。
筆者が参加するチャットアプリ、微信(ウィーチャット)のグループの中で、1人の中国人ユーザーが、「日本政府は『ダイヤモンドプリンセス号』上の乗客を速やかに救い出さなかった」と責任を追及した。
すると、すぐに他の中国人ユーザーが反応。「この危険な船は日本の船ではない。どの国も引き取ろうとしなかった。船上の日本人を救うという意味合いもあっただろうが、日本政府の対応は全体として人道的なもので、責任ある行動だったと言える」と、日本政府の感染対策について評価する内容を書き込んでいた。
中国の政府やメディアも日本からの援助を高く評価している。
外交部の華春瑩(Hua Chunying)報道官は2月4日に行われた記者会見でメディアの質問に答え、中国の感染症との闘いに対する日本政府と民間が行った善意の行動は「人の心を温めるもの」であり「ウイルスとの厳しい闘いの中で、他国の国民が中国に対して示した同情と理解と支援に心から感謝をし、しっかりと心に刻みます」と語った。
このように日中間の友好感情が高まる中、中国のあるテレビ局の動きは、中国の多くのネットユーザーの間で話題となった。
人気連続ドラマ「紅高梁(紅いコーリャン)」を放送していた「山西衛星テレビ」は2月9日、放送途中の第40回で突然打ち切りとなり、別のドラマを放送することになった。
ネットユーザーがSNSを通して山西テレビ局に放送中止の原因を聞くと、「紅高梁』の後半20回は主として日本との戦争を描く内容となり、中国の感染症に対する最近の日本の友好的な対応に鑑み、後半20回分は暫時放送中止とした、との回答があったとしている。
この回答が山西衛星テレビ局の公式見解か不明ではあるが、中国のネット上でこの情報は広く拡散しており、山西衛星テレビ局も否定はしていない。
● 中国で拡散された 約1300年前の漢詩
中国のネットユーザーの中で好評だったのは、日本からの救援物資だけではない。救援物資とともに送られた漢詩によるさまざまなメッセージは、多くの中国人たちを勇気づけた。
救援物資が入った梱包箱には「武漢加油(武漢頑張れ)」などの励ましの言葉が書かれているものが少なくなかった。
特にインターネット上で大きな感動を呼んだのは、日本のHSK(中国語検定試験)事務局が送った救援物資の箱に書かれた下記の漢詩だった。
「山川異域、風月同天(山川、域を異にすれども、風月、天を同じゅうす)」
これは今から約1300年前、日本の天武天皇の孫である長屋王(ながやのおおきみ)が遣唐使に託して中国に贈ったとされる1000着の袈裟(けさ)に縫い付けられていた漢詩である。
その意味するところは「異なる場所にいても、心は互いに通じている」。
言い伝えによると、この漢詩は唐の高僧だった鑑真和上の胸に響き、来日を決意したとされる。
この漢詩は中国で瞬く間に拡散。それまで一般にはあまり知られていなかった漢詩は、今や中国で知らぬ人はいないものとなった。
● 日本の感染深刻化で 中国から応援の声も
好意的な発言が多い中で、一部には異なる声もある。
あるネットユーザーは、「日本から贈られた多くの救援物資は、在日の華僑や華人が送ったもので、感動的な言葉もほとんどは華僑華人が考え出したもの。日本人はたいしたことをしていないのに、中国人は日本人がたくさんのことをやってくれたと勘違いしている」とコメント。また、別のネットユーザーは「日本企業が中国を援助するのは、自社の商業的利益のためで、今後多くの中国人が日本を訪れるのを期待しているからだ」と冷や水を浴びせる。
しかし、これらの発言は、多数の支持を得られていない。中国の大半のネットユーザーは、「援助してくれた人に率直に感謝すべきだ」という考えのようだ。
今や日本でも新型コロナウイルスの感染が広がり、感染経路不明の患者も増加し始めている。こうした中、中国の世論の注目点も「日本も中国と同じように爆発的流行となるか」に変わりつつある。
それと同時に、中国からの日本を応援する声も増え始めている。
日本駐中国大使館の微博(ウェイボー)公式アカウントが2月17日に発表した日本の第5次チャーター便が中国に救援物資を運んだニュースは、615万のユーザーが読み、4万を超える「いいね」を獲得した。
このニュースに3000以上のコメントが寄せられたが、その中には、日本への感謝コメントに加えて、「日本の感染状況も深刻になりつつあるのだから、中国へはこれ以上の物資を送らず、自国の人たちのために使ってください」といったコメントも目立った。
また、日本でマスク不足が問題化する中、在日華僑華人の微信のグループ内では、マスクの大量買い占めや転売はしないようにという呼び掛けが多く行われている。
新型コロナウイルスは多くの被害者を出した。この苦境をきっかけに日中のさらなる関係改善が進むことを望みたい。
※『東方新報』は、1995年に日本で創刊された日本語と中国語の新聞です。
*記事執筆時点での数値に基づきます。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200227-00229873-diamond-cn&p=3
東方新報