新型コロナ直撃の香港で「スシロー」が長蛇の列になっていた…!
2/26(水) 8:01配信
香港特区政府は2月8日、新型コロナウィルス肺炎(COVID―19)の拡散を抑制するため中国本土からの入境者をすべて14日間、強制的に隔離すると発表した。現在も1万3000人近くが強制検疫を受けている(2月24日現在)。
香港の感染者は累計74人、死亡者2人。特区政府の徹底したコロナ対策により感染者数に大きな増加はない。一方でこのような措置が取られたことにより、香港の飲食業界では次々と閉店、休業を強いられている。だがそんな中でも一部の和食チェーンレストランは大健闘している。
在宅隔離は1万2471人
林鄭月娥・行政長官は今月8日から中国本土からの入境者はすべて14日間、強制的に隔離する規定を発表した。規定の失効期限は20年5月7日深夜零時までとなっている。対象者は8日零時以降に中国本土から香港に到着した人で、全員、強制的な検疫対象となる。香港滞在者はその場所(居住地やホテル)から14日間離れてはならず、宿泊施設がない場合は隔離キャンプに入る。発令されて以来、在宅隔離が1万2471人、ホテルでの隔離が461人、検疫センターでの隔離が184人。(2月24日現在)
一方、横浜港に停泊している大型客船「ダイヤモンド・プリンセス号」から特区政府のチャーター機が3回にわたり香港市民とマカオ市民を引き取った。到着後、彼らは隔離施設となっている新界(ニューテリトリー)にある火炭の公共住宅「駿洋邨」へ送られた。隔離施設は民主派デモ隊に襲撃される可能性があるため、周辺にあるショピングセンター「駿洋商場」の前には警察が大型のウォーターセーフティーバリアーが設置され、周辺の工業団地では機動隊が巡回しており、多くの警察車両が待機。火炭路には通行車両に対する検問が行われるなど物々しい状況になっている。
工業団地に勤務する市民は「駿洋邨から100メートルしか離れてないので空気感染が心配」と述べて政府を批判、またある市民は隔離が終わった後も数カ月かけて消毒しなくてはならないので入居予定者への引き渡しがいつになるのかと懸念している。
特区政府は新型コロナウイルス肺炎流行の最新状況に対応し、職員を在宅勤務にさせるなど各部門で実施している特別勤務態勢を3月1日まで延長。学校は4月中旬まで休校となっており、学校では授業などの対応に追われている。以前に比べると賑わいが徐々に戻っているかのように見えるが、今も企業によっては在宅勤務が続く。郵便局の窓口業務は再開されたものの午後3時で終了、銀行は支店によってはまだ休業しており日常生活とビジネス活動はまだ正常化していない
“買い占め”のその後
「物流がストップするかもしれない」「香港に食料が入ってこなくなる」――。こうした噂が広まり、香港市民が食糧や日用品を買い占めをはじめたのは2月上旬のこと。
どのスーパーに行っても一時は食料や日用品が手に入らないという状況が続いていた。主に買い占めされていたのは、白米、水、トイレットペーパー、ウェットティッシュ、アルコールジェル、漂白剤などだ。
こうしたなか、多くの食品サプライヤーの代表は合同記者会見を開き、物資は充足しており、価格も安定していることを強調、市民に冷静になるよう求めた。特区政府はSNSで、政府の規定に基づくと食用米の備蓄は市民が15日間食用できる分の在庫を確保しておくようになっていると発表。さらに業界では突発的な状況に備えて余分に在庫を備えていると説明。買い占めを避けるように何度も呼び掛けていたほどだった。
最近になってようやく“日常的な”スーパーの光景が徐々に戻ってきてはいるものの、未だにトイレットペーパーやウェットティッシュなどは在庫切れのスーパーが多く、「70年代の日本のオイルショックを思い出した」という香港在住日本人の声もあった。
一時はこうした買い占め行為の波で各種の消毒製品も品不足となり値上がり傾向だったが、2月下旬現在、供給が正常化し始めており、消毒液などは値下がりしてきた。多くのドラッグチェーンや薬局では続々と消毒製品が入荷され、手洗い用液体石鹸は2週間で約50%下落した。
レストランは次々と閉店、暫時休業に
香港餐飲連業協会の黄家和・会長は2月21日、新型コロナウイルス肺炎の流行によって最悪の場合は飲食店1000店余りが閉業するとの見通しを示した。黄会長は1月にすでに100店余りの飲食店が暫定休業もしくは閉業したことを明らかにし、2月の飲食業界の失業率は6.5%に達するとみている。
飲食業界は昨年からのデモで打撃を受けていたが、旧正月に集まって火鍋(しゃぶしゃぶ)をした一族が軒並み新型コロナウイルス肺炎に感染したことがさらなる打撃になったと指摘している。
多くのレストランでは主に夕食時間の売り上げが90%減少し、業界全体の売上高は30%減となっているため、持ち帰りの売り上げでは損失を補いきれないという事態に追い込まれている。
「吉野家」など、4大飲食チェーンは火鍋販売停止
火鍋(しゃぶしゃぶ)をした一族が軒並み新型コロナウイルス肺炎に感染したことを受け、「吉野家」など4大ファストフードチェーンでは2月10日から火鍋メニューの提供中止している。火鍋メニューを中止したのは吉野家、大家楽、大快活、美心MX(マキシム)の4大チェーンだ。
「大快活」は、全面的な感染防止措置を講じ、職員は勤務前に体温を計らねばならず、会社側がマスクを提供し全職員にマスク着用を義務付けている。「吉野家」は各店に空気清浄機を設置し、全職員にマスク着用、体温計測、外遊の際の申告を義務付けている。「美心MX」でも、マスク着用のほか、1日2回の体温計測、熱や不調がある場合は速やかに病院に行き自宅で休息するよう指示している。この時期特に人気メニューである「火鍋」メニューは今も中止されたままだ。
「ペニンシュラ香港」などホテルレストランも休業に
新型コロナウイルス肺炎の流行のため九龍半島・尖沙咀(チムサーチョイ)では多くのレストランが営業を休止している。「半島酒店(ペニンシュラ香港)」に入っている高級フランス料理店「Gaddi’s」やスイス料理店「Chesa」や、「W HOTEL」の中華レストラン「星宴」、「九龍香格里拉酒店(カオルーンシャングリラ)」の日本料理「なだ万」なども3月上旬までは休業だ。
また、日本人観光客にも人気の高い香港スタイルのファミリーレストラン「翠華餐庁」や「富臨酒家」なども、チェーン店の一部が暫定休業を決定した。どの店舗もいつから営業を再開するのかは言及していない。旧正月新年会の予約の80-90%がキャンセルされたことを明らかにし、1月には100軒以上の飲食店が閉業に追い込まれている。
日本発のチェーン店レストランが絶好調
こうしたなか、一部の日系飲食チェーン店が大繁盛している。世界展開している回転すし店「スシロー」と牛丼専門店「すき家」だ。ともに19年に香港に初上陸したばかりの日本の人気チェーン店である。世界一位、二位を争う物価の高い香港で、本格的な日本の味を“ホッとする”価格設定をする両店は、オープン時から話題であり、香港でも受けている。昨今のこのような状況下で果たしてどこまで繁盛しているのか。半信半疑で平日のランチタイムが過ぎに行ってみた。
全国530店舗展開する「スシロー」は海外では11年に韓国、18年に台湾に進出し、香港は3番目。19年8月に湾仔に初上陸し、2号店は今年1月に日本人が多く住むエリア・ホンハムにオープンと好調だ。元有名ホテルのシニアシェフ率いる商品開発チームが毎年70種のメニューを商品化しており、海外でも同様の商品開発チームをおき3カ月に一度はメニューを見直す。伝統的なメニューから創作メニュー、デザート、サイドメニューなどあわせて120種類、1皿12~27ドル(約170~390円)の5つの価格で提供している。
ビルの2階にある「スシロー」は、私が行ったときには、すでにグランドフロアから外にまで列が溢れ50組以上待ち状態。予約席は数か月先まで一杯なのだそうだ。待っている人はほとんどが学生たちだった。
一方「すき家 旺角店」は、40席ほどのこじんまりした空間だが、取材した日は外には30人ほどの行列ができていた。世界でおよそ200カ国・地域に2000店舗を展開する「すき家」は、使用する食材を調達から加工、流通、店舗での販売までを一貫して自社で運営する、マス・マーチャンダイジング・システムを導入。
一貫した安全管理体制を構築、高品質のよいものを手軽な価格で実現させている。また食の安全や品質を徹底して管理するため、全店舗を直営で運営している。海外店は中国本土、タイ、マレーシア、台湾、ベトナムなどに続き、香港は初進出。日本同様に、米はコシヒカリ、牛肉は主にアメリカ産使用し、牛丼のタレも日本と同じものを使用。
ファミリー層や女性客にも気軽に来てもらえるよう、丼サイズはS、M、L、LLある。牛丼(S25ドル(約360円)、M29ドル(約415円)、L39ドル(約560円)、LL45ドル(約645円))以外にも、香港オリジナルメニューが多い。オープンしてから状況はほぼ変わらず、特に今年に入ってからこの状況なのだそうだ。
3月上旬まで在宅勤務を強いられており、さらに学校の再開も早くて4月20日に決定しているなか、外で息抜きをする人々が増えているということなのだろう。ゴーストタウン化した深セン市と違って香港では客で溢れている光景は、中国本土とは感染拡大の危機感に温度差もあるようだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200226-00070633-gendaibiz-int&p=3
楢橋 里彩(「香港ポスト」副編集長)