バンクシーは何位? ストリートアーティストのオークション売上ランキング10。

February 14, 2020 | Art, Culture | casabrutus.com | text_Yoshihiro Hoshina

アーティストの評価と人気を表すバロメーターのひとつがオークションでの落札結果。そこで昨年度(2019年1月1日〜10月20日)のオークションデータから、ストリート系アーティスト限定の売上ランキングで、バンクシーの人気と評価をチェックしてみた。

 
 
 
バンクシーの作品史上、もっとも高値(約13億円)を記録した作品《英国の地方議会》。 ©︎AFLO  最高値を記録した理由の詳細は本誌で。関連記事:最新号『バンクシーとは誰か?』発売中!

世界に数万人はいるストリート・アーティストにとって、オークションで作品を扱ってもらえるかどうか、そのハードルはかなり高い。ある意味、良し悪しは別にして現代アートとして市場に載るかどうか、その境界線がオークションと言えるかもしれない。
以下、ランキングを見ながら分析する。

 1. ジャン=ミッシェル・バスキア (アメリカ) $93,849,000
 2. カウズ (アメリカ) $90,305,600
 3. キース・ヘリング(アメリカ) $26,445,400
 4. バンクシー(イギリス) $24,594,500
 5. インベーダー(フランス) $1,507,800
 6. スティック(イギリス) $1,184,800
 7. ジョンワン(アメリカ) $710,700
 8. シェパード・フェアリー(アメリカ) $623,300
 9. フューチュラ2000(アメリカ) $328,300
 10. MR.ブレインウォッシュ(フランス) $258,800


出典:https://www.prnewswire.com/news-releases/artprice-by-artmarket-presents-the-top-25-street-artists-banksys-success-in-not-a-market-anomaly-300944766.html


そんなわけでこのランキングから分かるのは、まずグラフィティ/ストリート・アートというジャンルは、1970年代中期にニューヨークで生まれた “ワイルドスタイル” が起点になっており、その頃の作品はオークション市場でも高値で取引される傾向が強いということだ。

1位/ジャン・ミッシェル・バスキア 2017年、元ZOZOの前澤友作氏が123億円の最高額で落札したバスキア作品。  photo_Takuya Neda 『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』より。Yusaku Maezawa Collection, Chiba
 Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

その意味でバスキア(1位)とキース・ヘリング(3位)という80年代にニューヨークで活躍し、早世した2人が今、現代アートの世界で確固たる地位を築いているのも当然だろう。

3位/キース・ヘリング 1983年、東京の〈ギャラリー・ワタリ〉で開催された個展のポスター。 photo_Yoshihiro Hoshina
4位/バンクシー 2017年、バスキア展が開催されたロンドンの会場近くにバンクシーが描いたバスキアへのトリビュート作品。左隣のキース・ヘリング風の絵もアクリル板でカバーされているが、バンクシー作かどうかは不明。 photo_Yoshihiro Hoshina

そしてそのトップ10の中に、バスキア、ヘリングと同世代のレジェンド・アーティスト、フューチュラ2000が9位に入って来たのが興味深い。近年彼は再評価の機運にあり、かつ存命のため今後も大きな活躍が期待出来そうだ。

9位/フューチュラ2000 2019年11月、原宿のギャラリー〈The Mass〉での個展の様子。 photo_Yoshihiro Hoshina

そして21世紀のストリートアートシーンをリードして来たのがアメリカのカウズ(2位)とイギリスのバンクシー(4位)。カウズは昨年、ユニクロでTシャツなどを販売した際、中国で奪い合いの大騒動になったニュース映像も記憶に新しい人気アーティスト。バンクシーとカウズの2人は、近い将来、バスキア、ヘリングの順位を上回る可能性がある。

2位/カウズ ©︎AFLO

そしてここ数年、ネクスト・バンクシーと期待されるアーティストの中から一気に頭角を現し、不動のポジションを築いたのが、昨年初めて作品が100万ドルを超えたインベーダー(5位)とスティック(6位)だ。

5位/インベーダー 日本発祥のゲームキャラを作品にした一目で彼と分かる作品は、世界各地で増殖中。 photo_Yoshihiro Hoshina

スティックは、ホームレス支援やLGBTパレードへの作品提供など社会活動も熱心で、クイーンのブライアン・メイやエルトン・ジョン、U2のボノなど、大物アーティストのコレクターが多い。どちらのアーティストもひと目で誰の作品か分かる、シンプルにして特徴的なスタイルが人気があるのも21世紀の傾向かもしれない。

6位/スティック 2013年5月、東京・神田神保町の〈ギャラリーかわまつ〉で。 photo_Yoshihiro Hoshina

とはいえ、昔ながらのワイルドスタイル風のグラフィティがアパレル業界でも人気のジョンワン(7位)は、ニューヨーク出身ながら現在はパリを拠点に活躍中だ。

そして90年代以降、安定した人気のシェパード・フェアリー(Obey Giantとしても知られる)は、バラク・オバマの選挙ポスターに起用されるなど、逮捕歴もあるグラフィティライターとは思えない活躍で、自身のアパレルブランドも人気だ。

8位/シェパード・フェアリー 《NEW YORK WALL》1996年 Silkscreen+Stencil Spray Print  photo_Yoshihiro Hoshina

そして様々なアイコンを引用し、グラフィティのインテリアアート化を目論んでいるようなMr.ブレインウォッシュ(10位)。バンクシー監督の映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』で一夜にしてスター・アーティストになった彼の人気は今も健在だ。

10位/Mr.ブレインウォッシュ 2009年、マドンナがアルバム《セレブレーション》のアートワークに起用したMr.ブレインウォッシュの代表作。

さて、今後のアートマーケットにおけるストリートアートの立ち位置だが、言うまでもなく現代アートの領域にジワジワと侵食していくのは時代の必然だろう。今後、シーン(18位)、コープ2(25位)といった80年代から活動を続けているニューヨークのベテラン勢も改めて再注目されそうな気配もあるので要注目だ。

ランキングは18位ながら、NYグラフィティの伝統を感じさせるシーンの作品。 photo_Yoshihiro Hoshina