外国人
(特にガイドブックに影響します欧米白人による、YouTube や、Instagramに、たくさん取り上げられないと、”外国人観光客は、知る由もありません”)
なぜ志摩半島の老舗ホテルにはインバウンドの観光客が少ないのか
2/8(土) 11:00配信
先日、三重県の伊勢志摩にある老舗のホテルに、ひさしぶりに仕事から離れた気ままな女子2人旅で、滞在してきた。
旅の目的は、有名なそのホテルの「あわびのステーキ」と「海の幸カレー」の両コースを味わうこと。翌日は、ゆっくり伊勢神宮にでも参拝しようという考えで、まずはランチを味わうべくホテルに向かった。平日だったこともあり、ホテルは比較的空いており、チェックイン時間よりも早く着いたにもかかわらず、快く部屋へと通してもらった。
さすがに歴代の皇室御用達、2016年のG7伊勢志摩サミットの会場にも選ばれたホテルだけあって、天井が高いマホガニートーンの落ち着いたインテリアの部屋や、押しつけがましくなく、しかしフレンドリーで配慮の行き届いたホテルマンやホテルウーマンの接客など、日本ならではの老舗ホテルの心地よさを心ゆくまで堪能した。
そして、この「心地よさ」とは何なのだろうと考えたとき、まずこのホテルの「静けさ」にあると思った。そして、次に頭をかすめたのは、この老舗ホテルの「日本ならではのおもてなし」だった。よくある日本の旅館で女将が配する慇懃なおもてなしではなく、周囲の景観をも含め、ホテルという日常を離れた空間を静かに提供しようというおもてなしだ。
志摩半島の英虞湾に沈む、言葉にできないほどの美しい夕陽を見つめながら、このホテルのように、日本ならではの「心地よいおもてなし」ができているホテルは、そうそうないのではないかと思った。
G7サミット後の三重県の検証
しかし、そんな日本ならではの「おもてなし」を味わえる素晴らしいホテルであるにもにもかかわらず、驚いたことに、このホテルは日本人の観光客ばかりで、インバウンド旅行者の姿を見かけなかったのだ(実際、私たちが滞在した日には1人も見かけなかった)。
私たちが滞在した期間がたまたま外国人の滞在が少なかっただけなのかと、ホテル関係者に尋ねてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「時折、欧米の個人客の方や、春節などにはアジアの方もみえますが、この地域はまだ観光地として知られていないのか、それほどいらっしゃっていただけていないのです」
そうか、だからこの平穏な静けさが保たれているのかという妙な納得とともに、一方で、日本への外国人旅行客の誘客プロモーションをしている私には、こんな魅力的なステイをアピールしないのは、このホテルにとっては実にもったいないのではないかと考えた
伊勢・志摩の訪日観光客はサミットの年をピークに減少
確かに、私がこの10年間、世界各国で日本の地方のプロモーションを行うなかで、名指しで恐縮だが、三重県や三重県の観光事業者の方を現場で見かけることは少なかったし、伊勢神宮などは、JNTO(日本政府観光局)などももちろんプロモートはしているものの、伊勢・志摩エリアとをつないだ周遊滞在型観光地として、宿泊施設の魅力を伝えるセットとしてのプロモーションにはなっていないように感じていた。
これには、例えば昨年(2019年)の伊勢神宮の参拝者数が、改元の影響もあって過去3番目の多さを記録した972万9616人になるなど、わざわざ海外に向けて頑張らなくても、国内で充分な集客効果があるという地元の伊勢市や三重県の基本的な姿勢もあるかもしれない。
しかし、とくに海外誘客に関しては、適切かつ継続的なプロモーションをしなければ減少するのは自明の理で、実際、伊勢市を訪れる外国人観光客数は、伊勢志摩サミットがあった年をピークに減っている。その数字に比例し、伊勢市と隣り合う、今回のホテルの所在地である志摩市もしかりということだろう。
やり方によっては、伊勢志摩サミットの際に、もっと世界に向けた効果的なプロモートができたはずなのに、その後のフォローを含め、いったいどうなっているのか。疑問が湧いてきて、G7サミット開催の効果検証についても少し調べてみた。
このような検証のためには、まずは、地元自治体の発表を見るのが早い。そこで、三重県のHPを検策したところ、平成29年(2017年)に掲載された検証レポートが見つかった。
検証は、インバウンドも含む県外観光客の増加による経済効果、MICE(国際会議)の開催の増加効果、サミットで使用・発信された各種県産品のブランディングや販売促進効果、外資系企業の投資による事業、外国語案内ボランティアや通訳案内士の増加、グローバル教育の推進……など、多項目で行われていたが、主体はやはり経済効果の観点での検証となっていた。
検証のまとめとしては、県外観光客数の増加による経済効果として、314億6000万円という大きな数字が示され、その数字に対し「県民の皆さんの実感と乖離している部分もあったものと思われるが、日本酒の知名度の向上、県産品の売上量の増、販路拡大、メディアへの露出の増、インバウンドの増、三重テラスでの情報発信というように、定量的、定性的にも認識しやすい形で現れてきている(中略)」と書かれてあった。
「なるほど」と読み込みながらも、往々にして行政のこういった報告書は、数字ばかりが踊り、県民1人1人の実感には届きづらいことがある。その部分を率直に検証で示しているところなどは微笑ましかったが、しかし、やはり数字ばかり見ていても、それが実感の伴い難い大きな数字の場合は、果たしてその分析はどこまで有効だろうか。
魅力的な観光地としての「物語」
確かに、サミットの開催は、三重県にとって大きな経済効果となったであろうが、いかに魅力的な観光地としての「物語」を創造できていたか、それについてのソフト的効果の検証には、かなり疑問が残る。
その場所にある伝統、歴史、文化、そして何ものにも代え難い景観環境という「地域の宝もの」を、国内外に向けて、オーバーツーリズムにならない、サステナブル・ツーリズムとしての観光地をめざすといった視点とともに、現実的で継続的なプロモーションが、果たしてできていたのだろうか?
一方的な観光プロモーションは無意味
将来、どんなに海外セレブが訪れるホテルや観光地となったとしても、本来の日本らしいおもてなし哲学や姿勢を失わないでいられるようにするために、今後、どのようにこの地域やホテルをアピールしていけばよいのだろうか。
そのためには、プロモーション手法の大幅な見直しなど、すべきことは多々ある。そんななかでも、こういった日本の大切な地域の魅力を世界に向けて発信し、観光商品として販売するためには、その魅力の「本物さ」や「変わらなさ」を理解し、丁寧にプロモートしてくれる世界各国のランドオペレーターや旅行会社、メディア、インフルエンサーなどと、直接、繋がる必要があると私は思う。
そして、そういった人たちに、まずは日本国内の現地で、量より質的な、経済効果の大きな数字だけでは語れない「地域の本物の魅力」を実体験してもらうことだ。
要するに、もはや海外に出ていって、こちらの魅力を一方的に観光プロモーションするだけの時代ではないということ。現場は、世界を飛び回るだけでなく、まさに、いま、ここ、日本にもあるのだ。
そんななか、日本と太平洋の島嶼国や地域が環境問題などを話し合う第9回「太平洋・島サミット」(2021年)の開催地に、この地域が選ばれたというニュースが飛び込んできた。
地元の志摩市の竹内市長は「伊勢志摩サミットから5年後の開催で、地域活性化に期待が持てる」と歓迎しているとのことだが、果たして、どのような成果となるか、期待を込めて見つめていきたいと思う。
最後にもうひとつ。今回、この老舗ホテルのレストランで味わった、あわびの概念を一新するような「あわびのポワレ」と「海の幸カレー」は、本当に、本当に美味しかった! レストランの窓越しに広がる眩く光る英虞湾を望むかけがえのない景色とともに、友人ともども存分に堪能したということを付け加えておきたい。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200208-00032181-forbes-bus_all&p=3
古田 菜穂子