米国で進む「アマゾン離れ」、過半数がウォルマート選ぶ
11/12(火) 16:30配信
米国の消費者の間で、アマゾン・ドット・コムへの熱狂的な支持に陰りが見え始めている。調査会社の調べによると、顧客に占める有料の「プライム」会員の比率が下がってきているほか、サイトでの購入頻度も落ちてきている。代わって選ばれているのが、ネット通販の強化を急いできたウォルマート。
アマゾンと遜色のない、無料の翌々日配送サービスなどが引き寄せる一因になっているとみられる。消費者の動向の変化に合わせ、業者の間でもウォルマートのマーケットプレイスに新たに出店する動きが出ている。
「ウォルマート限定の商品を発売する準備もしている」。家庭・台所用品を手がけるエクイノックス・インターナショナル・ブランズの販売・マーケティング担当マネジャー、ハムザ・ラムザンが明かす。
同社は最近、ウォルマートのマーケットプレイスに出店した。現時点ではアマゾンでの売上高の5%ほどにとどまっているものの、今後、ウォルマートでも品ぞろえを拡充していき、2020年末までにはその比率が8~10%に高まる見通しだという。
業者側のこうした変化の背景にあるのが、米消費者の間でじわりと進む“アマゾン離れ”だ。
小売業界を専門とする調査会社ファースト・インサイトの調査によれば、アマゾンのプライム会員と答えた人の割合は52%と、18年の59%から低下。アマゾンで月に6回以上買い物をすると答えた人は19年9月時点で全体の40%と、前年同月の49%からやはり縮小した。逆にアマゾンでほとんど、あるいは全く買い物しない人は増えており、購入が月2回以下と答えた人は39%と18年の33%から上昇した。
アマゾンを苦境に追い込んでいるのは、長年、激しい火花を散らしてきたライバル、ウォルマートのようだ。この調査によると、ウォルマート(ネット通販か実店舗、あるいはその両方)よりもアマゾンでの買い物を好むと答えた人は全体の45%にとどまり、18年の53%から下がった。つまり、今では米消費者の過半数が、買い物の場所としてアマゾンよりもウォルマートを選ぶようになっているということだ。
妊娠検査キットなどを製造するプリグメートも、少し前にウォルマートのマーケットプレイスに出店した。同社はアマゾンでは14年から商品を販売しているが、ウォルマートでの売上高は出店から1年以内に、アマゾンでの売上高の10%程度まで伸びてきたという。
業者向けのサービスはアマゾンに軍配
もっとも、マーケットプレイス分野では、アマゾンに一日の長があるのも確かだ。
同社はマーケットプレイスを始めて20年になるが、ウォルマートがこの分野で攻勢を強めてきたのは比較的最近のことだ。そのため、ウォルマートが出店する業者のために用意しているマーケティングツールは、アマゾンに比べるとまだ少ない。一方のアマゾンは、業者向けの出品管理プラットフォーム「セラーセントラル」に、自社開発の強力なマーケティングツールをずらりと取りそろえている。
鍵を握るのは無料の翌々日配送
アマゾンはまた、業者をサポートするために、サードパーティーによるソフトウエアツールのエコシステムも充実させている。アマゾンの「売れ筋ランキング」を利用したものもその一つだ。
このランキングは長年、どの商品カテゴリのページにも表示されており、ジャングル・スカウトのようなソフトウエア開発業者がそれを活用して、大半のカテゴリーで販売高に関する詳しい情報を提供している。各業者はそれを参考に、どんな商品が人気なのかを知ることができるというわけだ。
これに対して、ウォルマートが売れ筋ランキングを発表し始めたのは、ようやく今月に入ってからのことだ。
アマゾンはさらに、サードパーティーによるアプリ開発なども促進している。ウォルマートは、業者による機械的な作業の自動化や売り上げアップなどを支援するサードパーティーのアプリ数でも、アマゾンに水をあけられている。
もちろん、ウォルマートのマーケットプレイスに出店する業者にも、最低限のマーケティングツールは用意されている。前述のエクイノックス社は、商品レビューの奨励やクリック課金型(PCC)広告、商品詳細ページのコンテンツ最適化に関するものなど、ウォルマートのいくつかのツールを駆使することで、マーケットプレイス上で認知度を高め、短期間に成長を遂げることができたと述べている。
鍵を握るのは無料の翌々日配送
ウォルマートのマーケットプレイスで成功する上で重要な点として、エクイノックス社が挙げるのが、アマゾンが“業界標準”とした無料の翌々日配送だ。販売担当マネジャーのラムザンの話では、ウォルマートのサイトで翌々日配送が選べるようにすると、売上高が一気に900%も伸びたという。
アマゾンの場合、マーケットプレイスに出店する業者は「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」というサービスを通じて、信頼できる物流や、プライム会員向けの翌々日配送を簡単に利用できる。これに対して、ウォルマートでは業者が自ら配送を手配しなくてはならない。
エクイノックス社とプリグメート社はいずれも、デリバーという物流会社のサービスを利用している。同社は米国内に複数ある倉庫から商品を出荷しており、ウォルマートのマーケットプレイスで買い物した客の95%は注文から翌々日までに商品を受け取れるという。1か所から出荷する業者の場合、翌々日配送が可能なのは客の30%にとどまるとされる。
デリバー社の創業者マイケル・クラカリスは、ウォルマートのマーケットプレイスに出店している業者について、アマゾンで購入した場合と同じスピードで商品が配送されるようにする必要があると言う。「買い物客にとって決め手の一つは、商品の値段に配送料を加えた料金だ。そして、注文した商品には早く届いてほしい。だから無料の翌々日配送を提供することが極めて重要になる」
プリグメート社のオーナー、ビクター・マロザウも同様の見解を示す。実際、デリバーと提携して翌々日配送が可能になると、売り上げは40%増えたという。マロザウも、客が購入を決断する上では、無料の翌々日配送サービスが利用できるかどうかが重要な判断基準になるとみている。
米国の消費者はようやくアマゾン以外の通販サイトも試すようになってきたわけだが、多くのブランドはかねてアマゾンに十分対抗できる競合が現れるのを待ち焦がれていた。小売業界専門のメディア、モダーン・リテールの調査によれば、ブランドや小売業者の41%はアマゾンを信頼できるパートナーと考えていない。
Kiri Masters
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191112-00030678-forbes-bus_all&p=2