65年前廃止の皇室「御用達」制度 今も宣伝に使う業者、一方ひっそり老舗の矜持

11/11(月) 10:00配信

京都新聞

 

 権威とのつながりを示し店の信用を表す「宮内庁御用達(ごようたし)」。皇室ブランドにあやかろうと、インターネット上には「皇室御用達」や「宮内庁御用達」を掲げる業者が幾つもある。ハンドバッグ、塗り箸、ボールペン、中には「宮内庁御用達 iphone8ケース」を売る業者も。御用達は権威とのつながりを示し、店の信用や高品質の代名詞となってきた。実は宮内庁御用達制度自体は65年前に廃止されている。東京に比べると、今も皇室に納入する京都の業者は、宮内庁との関係には口が重く「御用達」を看板に掲げない傾向がある。揺らぐ「御用達」事情を追った。
 天皇陛下の即位関連儀式に合わせて、1847年創業の金平糖専門店「緑寿庵清水」(京都市左京区)は記念の金平糖を発売した。同社の金平糖は一子相伝の技法で作られ、代々皇室などの特別な慶事を祝う引き出物とされてきた。ボンボニエールという銀製などの小さな菓子器に入れられ記念品として重宝されているという。
 江戸時代まで、西陣織の業者や和菓子の「虎屋」など多くの京都の業者が「禁裏御用」として御所に出入りしていた。東京に天皇が移ってからは、宮内省が1891(明治24)年に、皇室への出入り業者のために「宮内省(宮内庁)御用達」の制度を定めた。皇室の「御用」は大きなブランドとなり、店の信用を高めた。

 

薄れゆく皇室との距離 寂しげな京都の老舗

 江戸中期創業の料亭「萬亀楼」(京都市上京区)は有栖川宮家などに仕えた料理人の家系で、公家の食文化を伝える「有職料理」の老舗として名高い。食材に手を触れず、まなばしと包丁だけでさばく御所ゆかりの「生間(いかま)流式包丁」の家元としても知られる。
 西陣に店舗を構える萬亀楼に古びた巻物が残っている。広げると、1928(昭和3)年の昭和天皇の即位の礼で参列者に提供された大饗(だいきょう)1日目の「御献立」が大きな文字で記されていた。キジやタイ、昆布、白飯に白酒、黒酒…。平安時代の貴族の宴席「大饗」にのっとったメニューが並ぶ。
 料理は9代目(先代)の小西重義さんの祖父と父が務めた。小西さんは「店として名誉やったようですが、ほとんど採算度外視やったそうで。店の裏庭でタイを3千匹も焼いて持っていくなど、大変な作業だったようです。今ではようできませんな」と話す。
「今は大正と昭和に京都で即位の礼があったことを知らない人もいる。東京の人たちも京都のことなど気にかけてないんやろう。これからも京都と皇室とのつきあいは薄れていく一方でしょうな」と少し寂しげな表情を見せた

 

 

揺らぐ神通力 伝統産業の不況

 京都の西陣織も、江戸時代には御寮織物司として六家が選任され、戦後も西陣の織物業者が皇室の注文を受けるなど縁が深い。一方で和装業界の不況を受けて、代々の「御用達」だったのに廃業した業者もある。「御用達」の神通力は微妙に揺らぐ。
 古くから御用達だった業者の一方、1954年に御用達制度が廃止された後に宮内庁と取引関係ができた業者や、「一度、献上した」「天皇が地方訪問の際に買った」などの理由で「宮内庁御用達」を掲げる業者もかなりある。
 宮内庁は「宮内省御用達だった業者が歴史的事実として広告している場合などは別として、虚偽の『御用達』を宣伝し金品を集めるなど目に余るケースがあれば、なんらかの対処をする可能性はある」とする。

 

皇室便乗商法、戦前も今も

 「御用達のにせ看板 片端から撤去を命ぜらる」との見だしが踊る新聞記事がある。時は1928年、昭和天皇即位を祝う東京・上野の博覧会場。「宮内省御用達」の看板を掲げるものが非常に多く、警視庁が調べたところ、かつて宮内省に納入したことはあるが御用達とはなっていないことが分かり<いづれも始末書を取ると共に右看板を撤去させた>(昭和3年4月13日付、東京朝日)。戦前から皇室便乗商法はあった。
 内務省警務局資料(1936年)に宮内省御用達を掲げる許可の内規が記載されている。宮内省に物品納入実績5年以上、大臣宛に許可申請し、有効期間5年。御用達の広告濫用も禁じられている。この厳しさゆえか、昭和11年時点の御用達許可業者リストをみると、製氷、花屋、馬具、装身具など57業者に過ぎない。
 日本広告審査機構(JARO)によると、「宮内庁御用達」という文言は制度が廃止されているため、歴史的事実として表示するような場合を除いて使えない。それでも、皇室や御用達をうたうあいまいな広告は後を絶たない。
 京都府警が2011年、皇后さまが飼育されている品種として知られる蚕「小石丸」の絹糸を使った西陣織の袋帯と偽ったなどとして、商標法違反の疑いで京都市上京区の産地問屋の社長を書類送検した例もある。府警によると、袋帯に小石丸の糸が使われていないのに、ラベルには「皇后御養蚕にも用いられる大変貴重な品種」と記されていたという。

この記事は京都新聞社とYahoo!ニュースによる連携企画記事です。14日から行われる「大嘗祭」を前に、皇室を巡るこれまでを4本の連載で伝えます。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191111-00010000-kytg-soci&p=2

 

京都新聞社

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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まずはじめに、宮内庁御用達について解説します。

かつては国が認めた制度があった!

宮内庁御用達というのは、実はかつては制度として存在していたことで知られています。

1954年までは、宮内省(現在の宮内庁)に定期的な納入実績があるものやあったものについて、御用達制度によって名乗ることができました。

もう一つ広い意味で使用されていたものとして、皇室御用達というものがありました。

皇室御用達というのは、皇族の方々にも愛用されている品々のことを指していて、宮内庁御用達よりは広い意味で使用されてきました。

ただ、その中でより厳選されたものをお使いいただきたいという意味でも、宮内庁が選んだものが宮内庁御用達となっていました。

今は制度としては廃止されている

先に紹介したとおり、御用達制度は1954年に廃止されています。

理由については諸説があってどれが正しいかは不明ですが、戦後の節目である説やアメリカによる統治説、神格化から象徴天皇へという天皇という存在の在り方の変化などを鑑みられて廃止されたと見られています。

宮内庁御用達と名乗っている商品は今でもある

制度が廃止された現在においても、宮内庁御用達と名乗っている商品を見かけるのが事実です。

確かに、宮内庁が御用達にしているものもありますが、中には全くの虚偽というケースもあります。

また、かつては宮内庁御用達であったものが、過去の名残でそのまま名乗っていることもあります。

宮内庁御用達の名称使用について、宮内庁では社会通念上不当な表示や広告でなければ黙認しているのが現状です。

一方で、かねてから宮内庁御用達であって、今でもそれを継続しているところでは、あえて宮内庁御用達の看板を下げているケースも見られます。

これは、ネームバリューに問われることなく、商品の魅力だけで勝負しようという意志の表れとも言えます。

一方的な表示のみを信じるのではなく、いくつかの紹介されているページを確認したり、実際に手にとって商品を確かめることをおすすめします。

宮内庁御用達の商品を知りたい方はこちらの記事も参考にしてみてください。

>【保存版】宮内庁御用達の品物・ブランド58選

英国王室御用達とは?

では、もう一つの英国王室御用達とは一体どのようなものを指すのでしょうか?

王室が正式に認めたものに付けられる

英国王室御用達とは、ロイヤルワラントとも呼ばれていて、イギリス王室が認めたものだけが名乗ることができるものとなっています。

 

正確には、エリザベス女王、エジンバラ公、チャールズ皇太子の3名のみが、英国王室御用達を認定することができます。

よって、仮にイギリス王室に収めているものであっても、認定を受けることができなければ英国王室御用達は名乗れません。

認定においては、私感などではなく、クオリティの高さを基準として選ばれるので、英国王室御用達というだけでも高いステイタスを得ることができます。

認定には、王室側からの推薦による方法と、ブランド側からの申請の2パターンがあります。

その後、一定期間王室に対して商品を納めて実績を積んだ上でロイヤル・ワラント・ホルダーズ・アソシエーションに申請して、審査を通過することで晴れて名乗ることができます。

かなりハードルが高いのですが、先に紹介したとおりステイタスになるので、誰もが憧れるものとして有名です。

 

 

 

 

認定を受けても、5年毎に再審査を受けて、クオリティを維持していないと剥奪されるケースもあります。

どんなものに付けられているの?

英国王室御用達としては、様々なものに付けられています。

例えば、車であったりファッションブランドが有名で、御用達となっているのは世界に名だたるメーカーばかりです。

また、意外なところでは食品系のメーカーもあり、ネッスルやハインツ、ケロッグなども登録されています。

ケロッグといえば、日本ではコーンフレークが有名ですが、王室でも御用達の食品として取り扱われています。

認定者によってマークが異なる!

英国御用達は、ただ名乗れるだけでなく商品に紋章を付けることができます。

実は、この紋章は3種類あるのですが、これはエリザベス女王、エジンバラ公、チャールズ皇太子が個別の紋章を持っているのです。

非常に稀ですが、エリザベス女王、エジンバラ公、チャールズ皇太子の3名が認定した商品があり、それには3つの紋章が付けています。

専門機関が認定するのではなく、各個人の使用により認定されるという点が宮内庁御用達とは大きく違いますよね。

どちらが格として高くなるの?

では、宮内庁御用達と英国王室御用達では、どちらが格として上なのでしょうか?

英国王室御用達は制度化されている

 
 
 
 

 

 

 

 

 

宮内庁御用達の場合は、残念ながら制度としては廃止されているので、正確なルールはありません。

一方で、英国王室御用達は制度化されており、王族自身が選ぶものだけに名乗れるので、やはり格としては上になります。

先に紹介したとおり、英国王室御用達には世界的なブランドが数多く並んでいる事実もあります。

世界中の多くでロイヤルワラントを採用している

英国王室御用達を筆頭として、世界の多くの国でロイヤルワラントを採用しています。

その中でも、英国王室御用達は最も格が高く、ブランド力があります。

日本では、かつての御用達制度が該当していたのですが、それも廃止されています。

また、逆にあえて宮内庁御用達であってもそれを名乗らないというメーカーもあるのも事実です。

まとめ

宮内庁御用達と英国王室御用達は、似ているようで格が全く異なるのが実情です。

中には、宮内庁御用達を悪用しているメーカーが有るのも事実でありますが、良いものは誰からも評価されるのもあり、自分自身で見抜くし力も養うのも良いでしょう。

 

 

 

https://www.thebecos.com/journal/royalwarrant/

 

 

Written by 赤津 陽一

竹細工職人の祖父を持ち、幼少より伝統工芸やものづくりの現場を見て育つ。日本のものづくりの現状を変えたいとの思いから、BECOS(ベコス)の立ち上げに参画。全国の職人やメーカーに対して取材や撮影、インタビューを行い自分の足で情報を集め、読者へ届けることにこだわっている。