淡路島100メートル観音が放置13年 廃虚化し台風で外壁損壊 住民不安募る

11/6(水) 15:01配信

毎日新聞

 

 兵庫県・淡路島で、1980年代初めに建設された高さ約100メートルの巨大観音像が所有者不在のまま放置されている。老朽化で外壁は崩れ、敷地も荒れ放題で廃虚化。現在は弁護士が管理しているが、高額な解体費用や税金がネックとなり、買い手が付かない状況だ。住民は台風などによる倒壊、不審者の侵入などに不安を募らせる。【目野創】

【空から見た観音像】

 島の北東岸、国道28号沿いにある「世界平和大観音像」(同県淡路市釜口)。地元出身の実業家の男性が1982年に建立した。コンクリート造りの観音像(高さ約80メートル)が5階建ての台座ビル(同20メートル)の上に載り、大阪湾に向かってそびえる。そばに高さ約40メートルの「十重の塔」も。日本最大の仏像という触れ込みで、観光施設として造られた。首付近に展望台があり、かつては台座内には美術品やクラシックカーが展示されてにぎわったという。

 地元関係者らによると、男性の死後の88年に妻が運営を引き継いだが、バブルが崩壊。妻も死去して2006年に施設は閉鎖された。遺族は相続を放棄し、現在は裁判所に選任された弁護士が管理する。解体費用は億単位とみられ、神戸地裁による競売も行われたが買い手はなかった。

 閉館から13年を経て、施設の荒廃は著しい。観音像の外壁はひびが目立ち、14年と昨年には台風のため1~2メートル四方の外壁が落下。無断立ち入りも相次ぎ、台座部分は落書きだらけだ。今春には付属施設で野宿者とみられる遺体が発見された。

 淡路市は11年、住民の要望を受けて塔の銅板屋根が飛散しないようネットを設置したが、観音像は板で入り口を閉鎖したのみ。市危機管理課の担当者は「像の内外を目視で調べた。専門家による調査はしていない。民間施設なので積極的に介入できない」と歯切れが悪い。

 実は12年ごろに売却話が持ち上がった。ネックは税金だった。当時交渉に携わった弁護士によると、課税の基準となる観音像の評価額は約6億2000万円(当時)。売買に伴う不動産取得税と登録免許税は関連施設も含めて計約4000万円以上になった。減免について市から一定の譲歩を引き出したが、まとまらなかったという。評価額が実態より高くなるのは建築コストなどから算定されるためで、日本不動産研究所の小田真司・主任専門役は「バブル期の豪華ホテルなど税評価額が高すぎて買い手が付かない例は多い」と指摘する。

 最終的な手段はあるのか。全国で空き家が増加する中、15年に施行された「空き家対策特別措置法」。倒壊の恐れがあったり、景観を著しく損なったりしている空き家について市町村による強制的な解体・撤去(行政代執行)まで定める。淡路市都市計画課は「措置法の対象にはなると思う」とするが、税金支出への反発も想定され、具体的な検討は進んでいない。

 観音像のすぐ下には国道や民家があり、直近の集落まで約200メートル。同じ淡路市内では昨年8月の台風で風力発電用の風車が倒壊し、今年も相次いで台風が来襲した。海風に吹かれるまま朽ちていく観音像を見上げ、60代の住民男性は語気を強めた。「何かが起こってからでは遅い」

 

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