いたちごっこか、
日本経済が停滞したのは、「無気力人間」が急増しているからだった
9/27(金) 11:01配信
周囲の効率も下げる「無気力人間」
あなたの周囲に「やる気のない人たち」はいるだろうか。そう、いつもため息ばかりついていて、「あーぁ、なんでこんな仕事やらなくちゃいけないんだよ……」と愚痴ばかりこぼしている。そんな無気力な人間たちのことだ。
私たちが「クソどうでもいい仕事」に忙殺されてしまう意外な理由
そんな人間ならいくらでもいる、と思ったら、あなた自身も注意が必要だ。なぜなら、愚痴とため息ばかりのやる気のない人たち=「無気力人間」は、その人みずからの人生をダメにするばかりでなく、その周囲の人たちからも意欲を奪い、無気力化させ、毒を吐きまくることで、メンタルヘルスを悪化させるからだ。
無気力人間たちの吐く見えない毒ガスの影響は、あなた自身にも悪影響を与えずにはいられない。無気力人間は、自分自身をダメにするばかりか、周囲の人間もダメにし、そこで巻かれたネガティブな毒ガスの影響で、さらに無気力人間が増産されていく。無気力人間を作り出すのは、周囲の無気力さに他ならない――そんな無気力の悪循環がここ最近になって、あらためて注目されている。
直近のベストセラー本『Think CIVILITY(シンク シビリティ) 「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』(クリスティーン・ポラス・著、夏目 大・翻訳)では、こうした無気力人間のことを「無礼な人」という表現を使って、こう指摘する。
無礼な職場では、半分の人がわざと手を抜く。
無礼な人は同僚の健康を害する。
無礼さは顧客の体験を壊す。
無礼な人はまわりを攻撃的にする。
ここで言う「無礼な人」とは、単に礼儀をわきまえない人、という意味ではない。いつも不機嫌そうにしていて、人をちっともリスペクトせずに、見下し、悪口ばかり言っている。人の話にきちんと耳を傾けようとしない。そんな「害をまき散らしている人」のことである。
実際、他者をリスペクトしない雰囲気の中では仕事の効率は下がる。同書においては、大学生を対象に行なった実験で、貶める発言を受けたグループはブレインストーミングで思いつく創造的なアイデアの数が39%少なくなった、とか、単語の並べ替え作業の段階で無礼な言葉を見ていた被験者は、順に思い出すテストの成績は86%も悪くなり、数学の問題では43%もミスが増えた、といったデータも紹介している。
一方で、笑顔が絶えず、お互いを尊重しあえ、お互いの話に耳を傾ける職場では生産性は向上するとも指摘している。
日本が世界で“一人負け”の実態
そこで気になるのが、日本の実態だ。総合人材サービス、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームである株式会社パーソル総合研究所は、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)14の国・地域における就業実態・成長意識についてインターネット調査を実施し、国際比較により「日本の就業意識の特徴」を明らかにしている。
そこで明らかになったのは、仕事に対する意欲の低い“無気力人間集団”である日本の姿である。
・日本では積極的な管理職志向がない人は78.6%にものぼる。日本人は出世意欲が最も低い。
・勤務先以外での学習や自己啓発について「特に何も行っていない」が46.3%で、14の国・地域で最も高い。2位のニュージーランドと比べて24.2ポイントも差があり、日本人は断トツで自己研鑽していない。
・今の勤務先で働き続けたい人の割合について、日本は52.4%で最下位。一方で、日本の転職意向は25.1%でこちらも最下位。日本人は、今の会社を勤め続けたいとそれほど思わないが、積極的な転職も考えてない。日本は転職後に年収が上がった人の割合が43.2%と最も低い。日本以外はいずれも6割以上が上がっている。
以上の数字だけを見ても、まさに日本だけ“一人負け”と言ってもいい特異な数字が出た調査結果である、と同報告書は指摘している。
それはそうだろう。転職しても年収が上がらないのなら、転職なんてしたくない人が増えるのは自然の道理である。しかし、同じ職場に留まったからといって、そこで努力すれば出世できるというわけではない。40代にもなれば勝敗はほぼ決まっている。こんな社会で出世意欲を保てるはずもない。
つまり、日本社会は「自分で自分の人生を切り拓くのが難しい社会」になってしまっている。自分の努力によって仕事の能力を磨き、そこで得たスキルによって会社での出世を目指したり、転職によってキャリアップで年収を上げるのが困難な社会である。そんな社会の中では、自己研鑽を何も行っていない人の割合が世界的に見てダントツトップになるのも道理である。
「学習性無力感」の恐怖
この悲惨な日本社会の現状を、心理学的に捉えると、学習性無力感(Learned helplessness)が蔓延した社会、ということになる。
学習性無力感とは、1967年にマーティン・セリグマンらが提唱したもので、長期にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すら行わなくなるという現象である。要するに「どうせ、何をやっても無駄だ」という絶望にも似た感覚に襲われてしまう。
今の日本がまさしくそうだ。スキルアップして転職したからといって年収アップは望めない。かといって、今の職場にいても新たな上昇が望めるわけではない。できるのは、大きな問題を起こさず、摩擦を回避して、ぶうたれながら現状を維持することだけ。
無気力で、自分を磨かず、陰で人の悪口を言いながら、ただ日々のことをこなすだけ。そんな人に周囲を取り囲まれていたら、どんな人だって無気力人間になってしまう。そして無気力人間は、その近くにいる人も無気力化させてしまう。今、あなたも、愚痴や陰口をこぼしながら、あなたの側にいる人を無気力人間と化しているのかもしれない。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190927-00067406-gendaibiz-bus_all&p=3
諸富 祥彦