100年、150年計画で、
舛添前都知事やり残し 力入れていた自転車推進 “専用道”整備どうなる?
7月14日、都知事選の告示日を迎えます。舛添要一前都知事の後任を決める都知事選は、各候補者のドタバタぶりばかりが報道されて、政策的な議論は伝わってきません。
新しい都知事には、東京オリンピックや築地市場の移転問題をはじめ、舛添都政がやり残した課題を解決することも求められます。また、約1年半という短命に終わったために、舛添都政では未完のままになっている政策もあります。都知事選を前に、舛添都知事が力を入れていた自転車推進政策をおさらいしてみましょう。
2014年に猪瀬直樹都知事の後任として舛添要一知事は就任しました。舛添前知事が選挙中から言及していた政策に、自転車道の整備があります。今般、東京の道路はいたるところで渋滞を引き起こしています。交通渋滞を緩和するには道路の新設や拡充、鉄道網の整備といった手段が考えられますが、舛添前知事は環境問題なども考慮した自転車の利用推進を掲げていました。
舛添前知事は就任直後、自転車レーンの整備のための調査費として、約2000万円を予算に計上。それほど力を込めていた自転車道の整備は、どのぐらい進んでいるのでしょうか?
自転車道の整備計画を担当している都建設局道路管理部安全施設課によると、「舛添都知事が自転車政策に関心が高く、自転車道の整備に力を入れたいと言及していたことは事実です。しかし、舛添都政になってから自転車道の整備が急速に進んだといったことはありません」と言います。
それでは、東京都内の自転車道の整備は、まったく進んでいないということなのでしょうか?
「東京都では、石原慎太郎都知事時代の2012(平成24)年に『東京都自転車走行空間整備推進計画』を策定しています。同計画は、約150キロメートルの優先整備区間を指定し、そこに自転車道を設置することにしていました。その計画に基づいて、粛々と整備を進めているところです。」(同安全施設課)
2012年に優先整備区間に指定された道路は、すべて都道でした。都道は東京都が管理していることもあって、早急に自転車道が整備されました。しかし、単純に自転車道を整備したというだけでは、長大なサイクリングロードを設置したのと変わりません。道路にも鉄道にも言えることですが、交通政策は点ではなく線、言わばつなぐことで初めてその機能を発揮します。自転車道もネットワーク化することが重要になります。
「各所に点在していた自転車道をネットワーク化させるため、都は2015(平成27)年に約200キロメートルにもおよぶ新たな自転車道の整備計画『自転車推奨ルート』を策定しました。『自転車推奨ルート』では、都道だけではなく国道や区道にも自転車道を整備することが盛り込まれています。『東京都自転車走行空間整備推進計画』と『自転車推奨ルート』の2つの整備計画によって、都内には総延長400キロメートルの自転車道が整備されることになります。これで、都内の自転車道ネットワーク化がいっそう進むことになります。」(同)
ここ10年間で、都は積極的に自転車道を整備しました。最近では、都心部などでも路面が青色に塗られた自転車レーンを目にするようになりました。これら自転車専用レーンの設置が進められた背景には、どんな理由があったのでしょうか?
「従来、自転車は車道を走るように法律でも定められています。ところが、高度経済成長期は違いました。自転車が車道を走るのは危ないといった理由から、自転車は歩道に追いやられたのです。そのため、自転車は歩道を走るという概念が定着してしまいました。それが、現在まで続いています。しかし、2006(平成18)年頃から、歩行者と自転車の事故が目立つようになりました。事故防止の観点から、対策を講じることになり、自転車道を整備することになったのです。」(同)
自転車道と一口に言っても、車道・自転車道・歩道が完全に分離された道路、車道の歩道側を青色に塗った専用レーン設置した自転車道、歩道部分を植木などで自転車道と区切っている構造的分離した自転車道など、さまざまな種類があります。自転車道の整備は、画一的にはできません。道路管理者や所轄の警察と協議し、現地の道路構造や交通量などに応じて整備を進めます。また、コンビニなどの商品配送トラックや路線バスが走る大通りでは、バス停にも配慮しなければなりません。そうした様々な事情を考慮しているので、どうしても時間がかかってしまうのです。
昨今、東京では各自治体がコミュニティサイクル事業を開始しています。特に千代田区・中央区・港区・江東区の4区は、2016(平成28)年2月から4区で共通で貸出・返却が可能な広域実験を始めています。このように行政が自転車利用の旗振り役となったことや、自転車通勤者が増えたことなど、自転車の需要は拡大しています。しかし、自転車がたくさん走るようになれば、歩行者との事故も増えます。歩行者の安全を確保するためにも、自転車道の整備は急務なのです。
舛添都政で未完に終わった自転車政策。次の都知事が、どんな方針を打ち出すのか注目です。