<国際アンデルセン賞>上橋さん「多様な価値観知って」

毎日新聞 3月25日(火)22時10分配信



 「児童文学のノーベル賞」といわれる「国際アンデルセン賞」の作家賞に、文化人類学者でファンタジー作家の上橋菜穂子(うえはし・なほこ)さん(51)=川村学園女子大特任教授=が選ばれた。25日に東京都内で記者会見した上橋さんは「物語が世界に良いコミュニケーションをもたらせればうれしい」と喜びを語った。

 記者会見で上原さんは、受賞の理由について「多様な価値観や文化を持つ人々が葛藤しながら生きる姿を描いたことが、多様な世界から集まった審査員の心に響いたのかも」と分析。「この世は決して一つの価値観で成り立っていないし、成り立ってはいけない。多くの立場の人がいる視線を持ってほしい」と、子供たちに呼びかけた。

 上橋さんは幼少時から物語やファンタジーに魅せられ、1989年に「精霊の木」で作家デビュー。「精霊の守(も)り人」で野間児童文芸新人賞を受けた。全12巻からなる「守り人」シリーズは360万部超のベストセラーに。英語やフランス語、スペイン語などに翻訳された。代表作に「獣の奏者」などがある。

 国際アンデルセン賞は、国際児童図書評議会(IBBY)が、世界の児童文学者、画家らを対象に56年から2年に1度表彰する国際賞。作家賞と画家賞がある。日本人の作家賞受賞は、2月に亡くなった詩人のまど・みちおさんが94年に受賞して以来2人目。このほか80年に赤羽末吉(あかば・すえきち)さん、84年に安野光雅(あんの・みつまさ)さんが、それぞれ画家賞を受賞している。【太田圭介、山崎明子】