自衛隊災害派遣 訓練重ねて「想定外」を防ごう(3月5日付・読売社説)
大規模災害の被害を極小化するには、災害対処訓練の教訓を対処計画や初動体制に着実に反映させて、様々な事態に備える必要がある。
東日本大震災で被災者救出・支援活動の司令塔となった陸上自衛隊東北方面総監部(仙台市)は先月4~6日、震災対応の総合図上訓練を実施した。
宮城沖でM9・0の地震が発生し、最大10メートルの津波や市街地火災、原子力発電所での電源喪失が起きた――。そんなシナリオの下、陸自と自治体・警察・消防の関係者ら約960人が参加した。
コンピューター上で被害状況は刻々と変化する。電話が不通で被害を把握できず、「霧の中を手探りで進む」ような初動対応を迫られたのは大震災時と同じだ。
正確な被害情報を迅速に入手して、一人でも多くの人命を救う。そのためには、平時から自衛隊と自治体、警察など関係機関が連携し、効果的な情報共有と人員・機材運用の体制を構築すべきだ。
図上訓練では課題が明確になった。状況の変化に応じた柔軟な部隊運用や、自衛隊以外の機関が持つ能力の有効活用だ。例えば、自衛隊と関係機関のヘリコプターが同じ場所で重複したり、逆に、どちらも行かなかったりした。
実際、ある陸自のヘリ操縦士は「情報がないため飛べなかった時のことが今も悔やまれる」と、大震災時の救援活動を振り返る。
自衛隊と関係機関の人員と機材の能力を最大限発揮するには、今回の訓練の教訓を踏まえ、双方の役割分担や調整手続きを議論し、定めておくことが大切である。
無論、実際の災害が事前の想定通りになるとは限らない。「想定外」の展開もあるはずだ。
だが、基本を押さえてこそ、応用問題にも対応できる。図上や実動の訓練を通じて、対処計画を検証し、その結果を基に計画を修正して、また訓練に臨む。そのサイクルを繰り返す地道な努力が「想定外」を最小限に抑えよう。
自衛隊、特に陸自は、軍事的知見に基づく緻密な計画策定と部隊運用を得意とする。自治体も、そのノウハウを共有したい。
防衛省は大震災後、首都直下地震と原子力災害の対処計画を改定し、新たに南海トラフ地震対処計画を策定した。高速道路会社やNTTなど民間企業との災害時の協力協定も大幅に増やしている。
南海トラフ地震などでは、3年前以上の被害が想定される。防衛省は従来以上に、関係機関との連携に力を入れねばならない。
(2014年3月5日01時27分 読売新聞)
大規模災害の被害を極小化するには、災害対処訓練の教訓を対処計画や初動体制に着実に反映させて、様々な事態に備える必要がある。
東日本大震災で被災者救出・支援活動の司令塔となった陸上自衛隊東北方面総監部(仙台市)は先月4~6日、震災対応の総合図上訓練を実施した。
宮城沖でM9・0の地震が発生し、最大10メートルの津波や市街地火災、原子力発電所での電源喪失が起きた――。そんなシナリオの下、陸自と自治体・警察・消防の関係者ら約960人が参加した。
コンピューター上で被害状況は刻々と変化する。電話が不通で被害を把握できず、「霧の中を手探りで進む」ような初動対応を迫られたのは大震災時と同じだ。
正確な被害情報を迅速に入手して、一人でも多くの人命を救う。そのためには、平時から自衛隊と自治体、警察など関係機関が連携し、効果的な情報共有と人員・機材運用の体制を構築すべきだ。
図上訓練では課題が明確になった。状況の変化に応じた柔軟な部隊運用や、自衛隊以外の機関が持つ能力の有効活用だ。例えば、自衛隊と関係機関のヘリコプターが同じ場所で重複したり、逆に、どちらも行かなかったりした。
実際、ある陸自のヘリ操縦士は「情報がないため飛べなかった時のことが今も悔やまれる」と、大震災時の救援活動を振り返る。
自衛隊と関係機関の人員と機材の能力を最大限発揮するには、今回の訓練の教訓を踏まえ、双方の役割分担や調整手続きを議論し、定めておくことが大切である。
無論、実際の災害が事前の想定通りになるとは限らない。「想定外」の展開もあるはずだ。
だが、基本を押さえてこそ、応用問題にも対応できる。図上や実動の訓練を通じて、対処計画を検証し、その結果を基に計画を修正して、また訓練に臨む。そのサイクルを繰り返す地道な努力が「想定外」を最小限に抑えよう。
自衛隊、特に陸自は、軍事的知見に基づく緻密な計画策定と部隊運用を得意とする。自治体も、そのノウハウを共有したい。
防衛省は大震災後、首都直下地震と原子力災害の対処計画を改定し、新たに南海トラフ地震対処計画を策定した。高速道路会社やNTTなど民間企業との災害時の協力協定も大幅に増やしている。
南海トラフ地震などでは、3年前以上の被害が想定される。防衛省は従来以上に、関係機関との連携に力を入れねばならない。
(2014年3月5日01時27分 読売新聞)